ブリテンのオペラ「夏の夜の夢」の原作はシェークスピアです。
悲劇で有名なシェークスピアですが、夏の夜の夢は喜劇。
でもブリテンのオペラってそんなに馴染みが無いんじゃないかと思うんですよね。
そんな人は先にシェークスピアの「夏の夜の夢」を読んでみると良いと思うのですが
それも面倒という人のためにシェークスピア「夏の夜の夢」名言集を私なりに集めてみました。
ブリテンの「夏の夜の夢」は原作の言葉がたくさん入っています。
シェークスピアのセリフがどんな風にオペラに反映されているのか、字幕に注目しながら見てみるのもおもしろいんじゃないかと思います。(あくまで私の楽しみ方ですが‥笑)
おまえにとって父親は神様も同然、おまえは父親の刻んだ蝋人形のようなもの
娘は蝋人形で父は神かあ。今ならかなりの暴言!
これはハーミアが、父が決めた結婚を嫌がるので、テーセウスがさとす場面での言葉。
かつては日本の父親も威厳があったというか、怖い存在でしたよね、確か‥。
今では外で頑張って働き、家では邪魔にされるパパも多いとか、ちょっと違いすぎる。
それにしても蝋人形はちょっとひどい‥。
これに続くハーミアのたちのセリフもなかなかよくて
ハーミア:「父が私の目で見てくれたらいいのですが」
テーセウス:「いやおまえの目が父親の分別を持って見るべきだ」
娘はわしの物であるがゆえに‥娘に関する権利の一切を‥譲る
これはハーミアの父イージアスの言葉。
父の存在が怖すぎる。貴族の世界ってこうだったんですね。
もっとも日本も昔は政略結婚とか普通にありましたもんね。
これに対する娘ハーミアの言葉:「あんまりよ、他人の目で選ばなきゃならないなんて」
娘の意思は全く認めらなかったんですね。
のろのろ欠ける月は我が欲望をじらし続ける。まるで継母かヤモメさながら、長生きして若者に譲るべき財産をすり減らす。
これは公爵テーセウスの言葉。
テーセウスはアマゾン国の女王と数日後に結婚を控えています。
そんなテーセウスの、婚礼が待ち遠しくてうずうずした気持ちを表したもの。
でもこの後半の言葉って裕福な高齢者が多いと言われる今の日本にぴったりじゃないのかな。
政府も若い人に財産が行くような法令を色々考えてはいるようですけど高齢者にはちょっとドキッとする言葉ではないかと。
どんな物語でも決まってそうだが、誠の愛の道は決して平坦ではない
これは結婚を反対されているライサンダーの言葉。
いつの時代も愛の道のりは険しいのですね。
続く言葉もなかなか良くて
「‥恋は終わってしまう、音のように一瞬で、
影のように素早く、夢のように儚く。
‥輝くものはそのようにいつもたちまち滅びるのだ」
という感じ。恋ははかないものということでしょうか。
恋には妨げがつきもの。想いや・夢や・願いや・涙が哀れな恋のお供であるように
これはライサンダーとの恋を認めてもらえないハーミアの辛い一言。
涙がお供とは沁みる名言。
また恋人に顔色が悪いよと言われて、ハーミアは泣きたい状況をこんな風にいいます。
「雨が降らないからよ、この目から、今にも嵐のように降りそうだけど」
なんか言い方がうまいですよねー。
惚れた目で見ると、たとえ卑しくても下劣であっても立派で堂々としたものに見えるのよ、恋は目で見ず、心で見るんだわ
これは片思いをしているヘレナの言葉。なかなかの名言。
恋をしてるとあばたもえくぼっていうことですよね。わかる‥。
後から思うとなんであの時はあんなに輝いて見えたんだろう、っていうのはありますよね(笑)特に初恋とか。
「待て!浮気者、俺はお前の夫ではないか」「となると、私はあなたの妻ね」
これはオーベロンとティターニア夫婦のやりとり。
短いけど夫婦の険悪な雰囲気がよくわかるやりとり(笑)
風が奏でる音に合わせて踊ろうとするといつだってあなたは邪魔をする。だから無駄に笛を吹いた風が、仕返しに毒気のこもった海の霧を吸い上げて陸に雨を降らせるのよ‥
これはティターニアが夫(オーベロン)に対していうセリフ。
言い回しが美しい!こうして洪水って起こっていたのねという神話になぜか納得。
さらにこの後も
「そのため潮の満ち干きを司る月は、怒りに青ざめ、空気をすっかり湿らせ、おかげでどこもかしこも風邪ひきばかり‥」
と続く。そうやって風邪がはやっていたのねとこちらも不思議に納得。
風にも月にも息吹が吹き込まれて、姿が見えるような気がしてしまいます。
あなたが私を引き付けるのよ、つれない磁石さん。でもあなたが引き付けるのは鉄ではなくこの心。鋼(はがね)入りのまごころよ
これはディミトリアスに片思いをするヘレナの一言。
粋な言い方で感心しちゃいます。
こんな言葉なかなか浮かぶものじゃないですよね。
「君を見てると気分が悪くなるよ」「私はあなたを見ないと気分が悪くなる」
これもヘレナの片思いのセリフ、ああいえばこう言う感じがなんだかおもしろい。
「お前のせいで、浮気な恋が正されるどころか、誠の恋がひっくり返りどこもかしこも浮気な心か」「一人が操を守ってもねえ、百万人が守らなきゃ誓いもへったくれもありゃしねえ」
媚薬を間違えて塗ってしまい、怒られたパックが、オーベロンに言い返す一言がおもしろい。
400年前の言葉なのに今もそのまま使えます(笑)。
不倫は一人じゃできませんし。
どんな男も女房は持てる。真実知る時夢は果てる。どんな男にも似合いの女、うまくいくのさ、結局みんな
なぜか割れ鍋に綴じ蓋と言う諺が浮かんでしまった言葉。男女の仲って不思議。
あの人でも結婚するんだ‥っていう人いるし、やっぱり男女の仲はわかりません。
ヘレナとは‥婚約しておりましたが、病気にかかったかのように、このご馳走がきらいになってしまいました。健康になってもとの味覚をとりもどし‥
これはヘレナという婚約者がいながら、ハーミアを追いかけていたディミトリアスがヘレナの元に戻る時の言葉。
ご馳走とはヘレナのこと。
恋を味覚にたとえるのがお上手!。
恋するものは‥頭が煮えたぎり‥ありもしないものを想像する。狂人、恋人、そして詩人は皆想像力の塊だ。色黒ジプシー女に絶世の美女の美しさを見る。
これはアテネの公爵テーセウスの言葉。二組の恋人たちのドタバタの後のセリフ。
まさに恋は盲目、あばたもえくぼっていうやつですね。
さらにテーセウスはこうも言っています。
強い想像力には不思議な力がある。
喜びを感じたいと思うとたちどころに‥浮かぶのだ、
あるいは恐ろしいものを想像すると、一気に
茂みが熊に思えて‥疑心暗鬼に。
なんかわかる気がしません?400年前の言葉とは思えないくらい、恋って昔から変わらないんですね。
どこもかしこもぴったり収まる台詞はなく、どの役者もずれている。そして確かに悲劇的。
これはテーセウスの婚礼のお祝い係が、職人たちのトンチンカンな芝居のことを説明しているセリフ。
実際職人たちの芝居はこの言葉がぴったりなのでおもしろい。
さらにお祝い係は加えてこうも言っています。
(彼らは)アテネで働く手の皮の厚い連中です。これまで頭を働かしたことのないという手合いで、使ったことのない記憶力を酷使して‥用意した芝居です。
現代で考えるなら、ひどい言い方ですよね。
このお祝い係はやたらと職人たちの芝居はつまらない、くだらないを連呼するのですが
それに対するテーセウスが物分かりがいいんですよね。
それが次の言葉です。
できなくても喜んで見てやるのが我らの人徳だ。しくじってもくじけず楽しんでやろうではないか。出来栄えではなく心意気を買おうではないか。
婚約者のヒュポリテはできない人たちが無理をするのは見たくないというのですが、テーセウスはこんな風にたしなめるわけです。
さらにこうも。
かつて歓迎してくれた学者たちが(緊張のあまり)ぷっつり声が出なくなって述べられなかった。
いいかね、この沈黙から私は歓迎の意を汲み取ったのだ。
テーセウスの言葉です。いいですよねえ。
やっぱり上に立つ者はこうでなくちゃと思います。
さらにテーセウスは
最高級の芝居だって影に過ぎぬ。最悪の芝居でも想像力で補えば見どころはある。
とも。悪いところを見ててもキリがない、いいところを見ないといけないですよね。
というわけでほんの一部ですが、私が気に入った(気になった?)言葉をあげてみました。
物語の最初は父と娘のやりとりのあたりから始まりますが
ブリテンのオペラ「夏の夜の夢」では、森の妖精たちのシーンから入ります。
英語がわからなくても、字幕でシェークスピアらしいセリフが感じ取れると、きっとブリテンのオペラ「夏の夜の夢」も楽しく見られると思いますよ。
※新訳 夏の夜の夢(河合祥一郎/訳)角川文庫を参考にさせていただきました。
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