オペラがチームラボと共演
今回は東京二期会のオペラ「トゥーランドット」を見てきました。
- 2023年2月25日
- 東京文化会館(大ホール)
- プッチーニ作曲
- トゥーランドット
プッチーニのご当地三部作と呼ばれる異国ものオペラの一つで舞台は中国です。
最近は何も情報を持たないまま舞台を見るんですけど、1、2幕見終わってびっくりの演出で、特に光がすごかったので「え!これどこがやってるの?」と思ってちゃんと見たら
「チームラボ協賛」と書いてあったので驚いたのでした。
ついにオペラの世界にもチームラボが‥そうなんだ‥だから‥
今回のオペラを見るにあたっては、「トゥーランドットがあるけどどうしようかなあ」から始まり
プッチーニだから時間も短いし、田崎尚美さんの声は聞きたいし、
ピンポンパンのところもちゃんと見てみようかな、
リューの後の音楽に違いがあるのかもう一度ちゃんと聞こうなど、そんなことを思いながらじゃあ行こう!で買ったのでした。
まさかこんなに演出がすごいとは思っていなかったので、終わってみればオペラ好きじゃない友達にも声をかければよかった!という残念な気持ちが‥。
それくらいとっても衝撃的で素晴らしい舞台でした。
トゥーランドット素晴らしい演出
音楽が始まると舞台には怪しいダンサーたちが踊っている。
そして舞台上部には巨大な白い箱が浮き、中には大勢の白い人影。
謎解きに失敗した王子の処刑の様子はおどろおどろしさを醸し出す衝撃の出だし。
今回のトゥーランドットの感想を一言で言うなら、光とオペラの共演とでもいうのでしょうか
光の造形に引き込まれる楽しさが半分、そしてプッチーニのオペラと歌の素晴らしさが半分、その二つが相乗効果により、これまでになく驚くようなオペラの楽しさを作り出してくれたような気がします。
二期会のオペラはこれまでも映像を駆使したものが目立っていたような気がしますが
これまではこれまでは映像を際立たせるためか舞台上は比較的簡素にしていたように思います。
ところが今回はセットもかなり豪華。
前述した空中の箱のほか舞台がまわると長く急な階段が現れるし、トゥーランドットは降臨するがのごとく黄金の球体に乗って派手に登場したのです。
これらの豪華なセットにチームラボの織りなす光の世界が加わるのだからもうワクワクするのは当然というか。
かつてバイロイトでハリークプファーと言う演出家がワーグナーの「リング」の上演で斬新で近未来的な演出を繰り出し話題になったことがありましたが、
今回の演出はそんなクプファーの変化が小さく見えてしまう気がしたほどでした。
しかもトゥーランドットのように舞台が中国のご当地ものでこういった演出が可能なことが不思議な気がする一方でおとぎ話感もあるこのオペラだからこそ可能だったのかもしれないと思ったりもしました。
例えばカヴァレリア・ルスチカーナやトスカのような愛憎劇の場合は無理なのかしれない‥。
そういえばワーグナーの「リング」もヨーロッパのおとぎ話も元になっているし。
いずれにしてもこれからのオペラは昔ながらの演出も残りつつ今回のような新しい演出もありと言う両方なのかなとちょっと思いました。
どちらにしてもオペラに新しい風が吹くことは楽しいことに違いないと思います。
音楽と歌手について
基本的にプッチーニのオペラはストーリーがおもしろく音楽が劇的で時間も短いので「はずれはない」って個人的には思っていますけど
トゥーランドットは主役が個性的なのでピタッとはまる歌手はなかなかいないのではないかと思っていました、特に日本では。
ところが今回タイトルを歌った田崎直美さんはそんな懸念を根底から払拭してくれてその迫力の声は文化会館の会場全体に鳴り響きわたっていました。
とにかく素晴らしい声。
初めて田崎さんを見たのはドヴォルザークのルサルカの時でした。その時「日本にすごい人がいる」と一人で嬉しくなっていましたが、その後見るたびに感動をもらっています。
声の魅力ってやっぱりすばらしい!
このオペラはトゥーランドットがなかなか登場しないのでみていると「いったいどんな姫なんだろう」と思います。
そのためトゥーランドット姫の衣装や登場の仕方も見どころの一つだと思っているのですが、
今回の登場はこれでもか!って言うくらいインパクトのあるもの。いやーおもしろかったです。
そして氷のようなトゥーランドット姫の心が溶けていく様子、それがチームラボの光の効果とともに感じられました。
最後の「彼の名前は愛です」にはゾクゾクっと感動。
王子カラフを歌ったのは樋口達也さん。どんな役も全力投球と言う感じで、それがファンが多い理由の一つかなあと思ったりしています。
今回は不思議な髪型でダッタン人と言う設定だからかもしれませんが、見方によっては武士のさかやきのようにもみえて、気質的にはカラフは武士的かも‥と。
誰も寝てはならぬはやはりいい曲ですねえ。でも残念なことに短いので2回、3回と聞きたい!と思うのは私だけ?
以前持っていたDVDではアンコールも収録されていたりしたけど最近はアンコールって聞いたことないですよね。あったら嬉しいのだけど。
そして今回個人的には主役二人と同じくらいよかったのがリュー役の竹多倫子さん。
トゥーランドットも歌えるのでは?と思う歌唱力。
トゥーランドットでリューはとても大事な役だと思うので、とてもすばらしかったです。
小さなリューというには小柄という感じではなかったものの、ひたむきなリューの姿は清楚で涙を誘いました。
箱の中で息絶えた後の姿もかわいそうで何度も見てしまいました。
皇帝アルトゥムを歌ったのは牧川修一さん。
今回のトゥーランドットは全般に衣装もとても個性的でしたが、この皇帝アルトゥムはとりわけ目立っていて真っ白のいでたち。
顔まで白塗りで彫刻のよう。最後のカーテンコールの時はお顔がカピカピになっていたので、うわ、大変そう‥と思っちゃいました。でもこういうインパクトある衣装は楽しいから好きです。
衣装といえば最初に出てくる役人役かな、増原英也の衣装も独特。
そして声も朗々と響いていたのでこれはおもしろい公演になるぞー!って思いました。
最初に歌う人の声ってやっぱり大事なんだなとも思ったのでした。
カラフの父ティムールを歌ったのはジョン・ハオさん。
父親というには実は若そうですが、かつての国王という落ちぶれ感がでていて、吊り下げられた箱の中で死んでいく様は哀愁たっぷりでした。
大臣ピンポンパンを歌ったのは小林啓倫さん、児玉和弘さん、新海康仁さんの3人。
今回のトゥーランドットでは2幕最初のこの3人だけのシーンをちゃんと見てみようというのが自分なりにはありました。
ここだけ不思議というか幕間劇っぽく独立している感じなのでしっかりみようって思ったんですよね。(エラソウ笑)
結果としては音楽的なことはよくわからず‥笑
3人ともうまいなあと思って、ここをちゃんと聞くと話がよくわかるようになってるのねと思いました。
ちなみに以前見た時はこのシーンが退屈だったんですけど今回はそれがなかったです。
あとプッチーニが亡くなってしまったので弟子が作曲したという、リューの死以降の音楽って違いがあるのかなと思ってここも耳をすませていたんですけど、
うーん、まあ際立った特徴はないかなあ。ここで個性を出しすぎるのも弟子さんとしてはできなかったと思うし、
そりゃそうなるか‥などと思いながら聞いていました。
というよりそんな細かいところよりもやっぱり見る方としては全体で良ければいいし、楽しければいいって感じです。
チームラボの光の世界は音楽が終わってもなおしばらく続きました。
会場もまるでそれを予め知らされていたかのように光が消えて暗くなるまでシーンと待ち‥
それから大きな大きな拍手となったのでした。
オペラってずっと好きですけど正直友達を誘いにくいって言うのがありました。
でも今回のトゥーランドットをみて「オペラって楽しいから一緒にいきましょう!」ととても言いたくなりました。
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