フィデリオ新国立劇場レビュー2018.5.20

新国立劇場で、ベートーベンのフィデリオを観てきました。

新国立劇場のシーズンオペラのうち9番目のオペラです。

20周年記念特別公演ということもあってか、かなり気合の入ったものを感じました。

凝った舞台に迫力ある演奏でしたが、斬新な演出で、

日本において、こんな物議を醸し出すような上演をするようになったことに対して、おもしろいなあと感じてしまいました。

多くのブラボーとともに、主に4階席の住人からブーイングがかなりあったのも事実。

そんな今回の公演でした。

 

舞台と演出

演出はカタリーナ・ワーグナー。

バイロイト祝祭劇場の総監督を務める彼女はワーグナーのひ孫にあたります。

今回のフィデリオは、バイロイトに出ている歌手をよんでいるので、日本のオペラのレベルもすごいことになってきました。

さて、ヴェルディのアイーダには、上と地下牢の上下二段に別れた舞台がありますが、

今回のフィデリオは3段に分かれた舞台。

  • 一段目は、看守のロッコやマルツェリーネが過ごす世界
  • 二段目は、フロレスタンが入れられている地下牢
  • 三段目は多くの囚人が入れられている牢屋

最初は上2段のみが見えているのですが、

舞台がとてもゆっくりと上がって3段目が出てくるので

ずっと舞台に集中していたにもかかわらず、いつの間にか3段目が見えていて驚きました。

イメージ的には最下段がフロレスタンの地下牢という感じですが、

そうなると大勢の囚人たちが常に二段目にいることになるので、やはり二段目がフロレスタんにならざるをえなかったのかなと思いました。

 

序曲とほぼ同時に幕があがり、序曲の間に部屋に緑の絨毯らしきものを敷き詰めて

その上に花を刺していく二人。

せっかく刺した花は、箱を持ったマルツェリーナがなぎ倒していくし(笑)、

敷いた緑の絨毯も割とすぐにしまってしまいます。

あれはなんだったのかなと、若干不思議?でしたが、マルツェリーネの恋する気持ちを現していたのか‥。

序曲を飽きさせない工夫でしょうか。

 

1幕ではフロレスタンの歌はありませんが、地下牢にいるのは見えていて、

壁に絵を書いては消し、妻レオノーレの絵も描いていました、絵が上手。

もっとも物議をかもし出しそうなのは、レオノーレとフロレスタンがドン・ピツァロにナイフで刺されて死んでしまったかのような演出。

原作では二人は死なないのですが、今回は死んだ設定なのか、ちょっと不思議な演出。

 

大臣が到着したので、ピツァロは一旦は地下牢を離れるのですが、

離れる前にフロレスタンを刺したのであれ?とまず思い、

ただ、その後も動いてアリアを歌っていたのでかすり傷かなと。

 

そして、レオノーレ序曲3番が流れている間に、ピツァロは戻ってきて、レオノーレに口づけをして横腹を刺し、レオノーレは倒れます。(フロレスタンもすでに倒れている)

そして、ピツァロは地下牢をブロックで封鎖してしまいます。

 

その後の大合唱の際は、二人の服を着た別のフロレスタンとレオノーレが出てきて(この二人は台詞なし)

本物の二人は別のところにいるという、斬新な演出。

 

レオノーレの勇気ある行動は、すでに二人だけのものではなく神話になったという解釈なのか

そこは、よくわかりません。

 

一生懸命理解しようとしてみたのですが、ハテナ?マークが浮かんでしまったのは確か。

終わった後の多くのブラボーに混じって珍しくブーイングが聞こえてきたのはそのせいかと思います。

スカラ座のブーイング

ただ、日本において、新演出で思い切ったことをやったこと、またそれに対して賛否両論があるというのは

それだけオペラが浸透してきたということじゃないかと、なんとなくおもしろく感じたのは確かですね。

 

音楽と歌手について

 

音楽は全体に迫力と緊迫感があり、とても満足するものでした。

救出の後に、レオノーレ序曲3番が入れられたのは予想通りでしたが、

上にも書いたような、演出があったので、この長めの序曲があっという間でした。

 

二つの序曲はかなり色合いが異なるので、二つを聴けることはやはり楽しいです。

個人的には3番の方も好きです。ただ、序曲としてはやはり長いかも。

 

ベートーベンという人の曲は、フィデリオのような重いテーマでも、心底暗い音楽ではないので、

そこが良いというか、いいですね。

ベートーベンらしいというか。

 

特に第二幕はハラハラしますが、感動的で、迫力満点

大合唱は、まさに第九のようです。

 

個人的には第一幕の4重唱がしっとりとしていて、好きなのですが、

全体としてはやはり2幕が引き込まれます。

  • レオノーレ(フィデリオ)役はリカルダ・メルベートというソプラノ歌手。この人はブリュンヒルデの印象がまだ新しく、やはりうまいですねー。

圧倒的な歌唱力で、素晴らしいです。

 

  • フロレスタン役はステファン・グールドというヘルデンテノール歌手。

こちらもリングのジークフリートの印象がまだ新しいのですが、今回第2幕の最初で歌う獄中のアリアはハッとするような感動的なアリアでした。

グールドはさらに歌に脂がのった印象。

体の方は食事を減らされたにしては巨体ですが、それでもこの役にとても合っていると思いました。

この人の声が聞けてよかったです。

 

  • 今回新たに注目したのは、マルツェリーナを歌った石橋栄実さんというソプラノ歌手。この人もメリハリのあるとても素晴らしい声の持ち主。

よく通る声でかなり重い役を含め、いろんな役ができそうですね。

 

ロッコの妻屋秀和さん。、ロッコはこのオペラで出番が多い役ですが、今日はいつもほど元気がないかなという印象。でもさすがの演技と歌でした。前にレクイエムで急に具合が悪くなられましたが、体調も大丈夫みたいでよかったです。

大臣役は黒田博さんというバス歌手。二人とも大御所ですよね、素晴らしかったです。

妻屋さんは日本人としてはかなり体も大きい方だと思うのですが、グールドが巨体すぎて半分くらいにしか見えなかったですね。

今回の演出に賛否はあると思いますが、ベートーベンのフィデリオはやはり元気をくれるオペラだと思います。

フィデリオ・ベートーベンのオペラ

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