ウクライナからの引っ越し公演
2023年1月7日。ウクライナ国立歌劇場のオペラ「カルメン」を見てきました。
今年最初のオペラ鑑賞は戦時下のウクライナからの引っ越し公演となりました。
よくきてくれましたという感じがします。
こちらの歌劇場は本来ならロシアもの演目が得意なのだと思うのですが、さすがにそれは避けたのか今回の演目はビゼーのカルメンでした。
セリフありのオリジナルではなくレチタティーヴォ版の方です。
ロシアがフランス語のオペラをやるのかあと思いましたが、よく考えてみたら、ロシアってかつては上流社会の人は基本的にフランス語を使っていた時もあったらしいです。
だから別に不思議でもなんでもないかと思ったり‥。
カルメンは世界中に人気演目ですしね。
3連休の初日ということもあってか会場はなかなかの入りで、1回席はほぼ埋まっているようにみえました。
ウクライナのカルメンはオーソドックスな演出
今回は3、4幕を続けての公演で休憩は2回。4幕は短いのでこれはよくあるかなと思います。
幕が上がると思ったより重厚なセット。
最近は映像を駆使した公演が多くて、それもなるほどこうな風にねえと感心するのですけど、こういうオーソドックスなセットがあるのはいかにもオペラだなあっていう感じで好きです。
先日ウィーンで見た魔笛も同じく映像などはなくて、オーソドックス感のある舞台だったとちょっと思い出しました。
衣装も各自個性的でありながら情熱の国スペインを思わせる明るい色彩でした。
1幕ではホセ役のアシストの人の声だったのかな、ボソボソという声がなぜか聞こえてきてました。
2幕からはそれがなくなったので、なんか操作の手違いなのかわかりませんが、逆にああやってセリフをアシストしているのねというのがわかってちょっとおもしろかったかも(笑)。
カルメンっていうオペラは女性合唱、男声合唱、子供の合唱、それにバレエもありといろいろあってそれも楽しみのひとつだと私は思うのですけど、今回は残念ながら子供たちの合唱はなしでした。
さすがにウクライナから連れてくるわけにいかないし、日本の子供たちをっていうのもなかったのかなと、まあ引っ越し公演の割りにお値段がそれほど高くなかったし、贅沢はいえません。
そのかわりというか2幕のバレエはプロの人がウクライナからきていました。
ウクライナ国立バレエの人たちです。
私はバレエも楽しみな方なので、多くはなかったけどみられてよかった。なんせあそこの音楽は盛り上がるので‥ワクワクします。
4幕でも踊りあるかなあと思いましたがそちらはなしでした。
それにしてもウクライナの男性バレエダンサーの人は足が長い。同じ人間とはおもえない(笑)
バレエの時になにげに隊長さん役の人もちょっと踊っていたのがちょっとおもしろかった。
衣装についてはエスカミーリョの最初の登場の時は「洋服が地味?」と思いましたけど
4幕の時は白のピカピカ衣装でばっちり派手派手でした(笑)
余談ですが、つい最近闘牛は最後は必ず牛は突き刺されて殺されるときいたばかりだったので、それを思い出してしまってちょっとだけ複雑な気持ちになったのでした‥かわいそう。と言いつつお肉は食べているのだけど‥。
現在もスペインで闘牛は開催されているようですが、ちょっと残酷なので昔のようには放映などはあまりされなくなっているのだそうです。
話を戻して‥3幕では舞台はすっかり変わって山の洞窟っぽい雰囲気がしっかりでていました。こちらもカルメンらしい感じ。
それにしても第3幕始めのフルートの間奏曲はやっぱり何度聞いても美しくて聴きほれちゃいますねえ。
歌手について
ロシア系の人たちは声量があって声がよく伸びるっていうイメージがあります。
今回も特に女性にそれを感じました。のびやかな声。
今回タイトルのカルメンを歌ったのはアンジェリーナ・シヴァチカさん、メゾソプラノ。
カルメンは基本メゾで時々ソプラノの人が歌うイメージがありますが、今回は低音がふくよかないかにもメゾという感じの人でした。
ウクライナの人で、きつめの容姿はカルメンにピッタリ。
今51歳らしいですけど、若く見えました。
ホセを歌った音はドミトロ・クジミンさんというテノール。
見た目がちょっと神経質そうな感じがホセっぽい雰囲気。
青い兵隊衣装がよく似合う人で美しい声。
花のうたのアリアを少しねっとり歌い上げる感じもホセっぽいなと。
終盤の演技を見ているうちにホセ・カレーラスをちょっと思い出しました。
最後にナイフをいつ出すのかなと思って見ていましたけど、持っていたのかいなかったのかよく見えなかったです。
闘牛士エスカミーリョを歌ったのはオレクサンドル・メルニチュクさん多分バス。
エスカミーリョって登場したらいきなり超有名なアリアを歌わなきゃいけないから実は大変だなって思います。
今回のエスカミーリョはいかにもという風格。そして闘牛士の歌はやっぱり何度聞いてもかっこいいですよねえ。
きたー!っていう感じ。
ただ、若干小説ごとに途切れる感があったかなと。
3幕以降ではそういう感じもなかったです。そしてなぜかわかりませんが、レチタティーヴォがうまい人だなと珍しい感覚をもちました。
セリフが聞こえやすいのかメロディーが聞こえやすかったのか、なんなのかな。
そして今回個人的にとてもよかったのがミカエラで歌ったのはテチアナ・ハニナさんというソプラノ。
とてものびやかで美しい声、さらに声量もたっぷりの安定度と演技。
長い三つ編みの髪がよく似合う美しい女性で、ミカエラにぴったり。
ミカエラって舞台でたった一人で歌うシーンもありますが、落ち着いていて素晴らしかったです。
最近私の中では、ハバネラや闘牛士のアリアもよいのだけど、ミカエラが故郷のお母さんのことを伝える美しい旋律が一番好きかもしれないです。心に染み入る‥。
ミカエラはどちらかというと3幕のアリアが有名かもしれないけど2幕の方の音楽が個人的には好きかな。
彼女の情報をみるとプッチーニのラ・ボエームもレパートリーのようで、彼女のミミも良いだろうなあと思ったのでした。
あと余談ですが、テチアナ・ハニナさんの情報を見ていたついでに気づいたのですが、多分ウクライナ、ではラフマニノフの「アレコ」っていうオペラも上演しているようでした。
日本では見たことないけどラフマニノフが若い時の作品、さぞ美しい音楽なんだろうなあ。原作もロシア・プーシキンの作品なのでやっぱり取り上げる作品もお国柄があります。
海外は日本では見ない珍しいオペラをやっています、見たいよー!と思ったのでした(笑)。
それにしてもカルメンってほんとによくできたお話だっって思います。
そして何度聞いても音楽が最高。そして最終的にはいつも3幕の盗賊たちの場面の旋律がなぜか耳に残ります。
「私は自由よ」と叫ぶカルメンの言葉とウクライナの情勢がなぜかかぶるような気がしました。
最後は長いカーテンコール。とってもすばらしい公演でした。
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