天国と地獄オッフェンバック・フレンチカンカンのオペレッタ

今回は、オッフェンバック作曲のオペレッタ「天国と地獄」の見どころと解説を少し書いてみます。

日本では初演以来、「天国と地獄」という題で親しまれているのですが、

このオペレッタの本当の題は「地獄のオルフェ」といいます。

オルフェはギリシャ神話に出てくる人物。

そして、日本での初演は今から約100年ほど前のことです。

100年前の日本といえば、まだオペラやオペレッタが、ほとんど入ってきていない時代です。

そもそもギリシャ神話自体日本にはなじみがないのでオルフェと言う名前を出しても

ピンとこなかったことでしょう。

そんな理由だったのかどうか、本当のところはわかりませんが、

「天国と地獄」という題名にしたのはわかりやすくなるほどと思う題だと思います。

 

神話のパロディ

 

本来の神話のストーリーはというと、

オルフェウスは妻のエウリディーチェが死んでしまったので嘆き悲しみ、

妻を地獄に連れ戻しに行きます。そして地獄から戻る途中、

決して振り返ってはならないという約束を守れず、振り返ってしまったため

再びエウリディーチェは地獄に戻り、嘆き悲しむという悲しいストーリーです。

 

ところが天国と地獄のオペレッタでは、これをパロディ化しています。

夫婦間の愛はすでに冷めていて、お互いに恋人がいるような状態。

エウリディーチェが死んでも、オルフェウスは悲しむどころかせいせいするし

一方妻の方も恋人だと思っていた羊飼いが実は地獄の大魔王だったので、一緒に地獄へ行けるわと喜ぶ始末。

でも世論はそれを許しません

この世論というのがやたら夫婦はこうあるべきとか世間体が悪いとか、世間一般論をかざしてくるのです。

「夫は妻を取り戻しに行くべきだ」と世論にいわれ、しぶしぶ連れ戻しに行くわけです。

さらに、帰り際神話では妻を愛するがゆえに振り向いてしまうのですが、

愛していないので何を言われても振り向かないオルフェウス

業を煮やして大きな音を立てて振り向かせて、妻は再び地獄へ戻り夫もそれを喜び、みんながハッピーだね、

というとっても大まかに言うと神話をちゃかしたパロディなのです。

単純に楽しいオペレッタとして見て良いと思うのですが、

なぜこのようなパロディを作ったかというのは、実は当時の時代背景があったのです。

 

第二帝政という時代背景

 

地獄のオルフェの初演は1858年のこと。

当時のパリはナポレオン三世が統治する第二帝政の時代です。

第二帝政時代は、言論や書物の自由がかなり規制されていた時代です。

一方で世の中的には世論も強かった時代。

天国と地獄というオペレッタには「世論」という役が出てくるのはおそらくその時代背景。

言いたいことが言えないけど、もっともなことを言う世論もいるという

そんな時代背景を風刺しているように見えたのです。

そのため当時、天国と地獄は批判・酷評も多かったんですね。

しかしながら結果として有名になりみんなが観に行ってたちまち人気になっていきました。

そうでなくても、音楽といいストーリーと言い、鬼才と呼ばれたオッフェンバックが作った作品ですから、人気が出たのもうなづけます。

テレビやインターネットがある現代では、一つの芝居が物議を醸しだすというようなことは、あまり無いと思うのですが

当時は、劇場の演目が物議を醸しだすほど注目される存在だったんだなと思います。

 

フレンチカンカン

 

日本においてこのオペレッタが初めて入ってきたのは1914年で、場所は帝劇でした。

1914年と言えば大正3年のこと。

そして大正と言えば浅草オペラが流行した時代でもあります。

浅草オペラがの流行は、関東大震災までの大正時代の約10年間でした。

何度となく上演された天国と地獄は、カンカン踊りを代名詞として当時の人々はさぞかし楽しんだんだろうと思います。

カンカン踊りというのは、フレンチカンカンのことで、

天国と地獄では最後にみんなで騒ぐシーンで出てきます。

別名「地獄のギャロップ」とも呼ばれ、前奏曲にも出てきます。(日本では運動会でも有名な曲です)

このフレンチカンカンは、もともとはフランスのモンマルトル、モンパルナスといった、労働者階級や若者たちが集う街の踊り場から発達したものなんですね。

特徴としては、ギャザーが多く入った派手なロングドレスフリフリのペチコート黒いストッキングを履き

足をあげて踊るダンスです。

またそれは徐々に熟練度が増していき、ロングドレスのまま側転をしたり前方転回、またはペタンと開脚、ダンサーたちの奇声や叫び声などダンサー達の見せ場が大胆になっていったのです。

パリにその後誕生した、ムーランルージュでもフレンチカンカンは必ず出てくるショーの一つでした。

ちなみにムーランルージュができたのは1889年なので、天国と地獄から約30年後です。

フレンチカンカンはずっと人気の踊りだったということでしょう。

また、ムーランルージュは今もありますから実に130年以上も続いているわけです。

すごいですよね。

パリ旅行などで、行かれた人も多いのではないでしょうか。

上演時間とあらすじ

上演時間

  • 序曲:約10分
  • 第一幕:約60分
  • 第二幕:約30分

上演時間は、正味1時間40分程度です。

ただ、最後に地獄のギャロップの部分だけなんどもアンコールしてくれることが多く、

これがこのオペラの最高に楽しいところだと私は思います。

最後は観客も楽しく手拍子をして、盛り上がります。

そのため実際の上演時間はもう少し伸びるでしょうね。(楽しいので気にならないと思います)

あらすじ

第一幕では場所は現世のシーン。

オルフェウスとエウリディーチェは、今ではすっかり愛も冷めた状態。

エウリディーチェは羊飼いと浮気をしているので、

オルフェウスは毒蛇で羊飼いを殺そうとしますが、エウリディーチェの方が噛まれてしんでしまいます。

ところが羊飼いの本性は地獄の王だったため、二人そろって地獄にいけると喜ぶ始末。

一方オルフェウスも妻が死んでせいせいしていますが、世論が出てきて、

妻を地獄に連れ戻しに行くべきだというのでしぶしぶ行いくことになります。

一幕第二場ではオリンポスの世界。ここではジュピターやヴィーナスをはじめよく聞く神々たちがでてきますが、

誰も彼も神とはとても言い難いしょうもない性格で、ここまで神話の神をけなして良いものかと思うほどですが、ストーリーにはさほど関係なく楽しんで見れば良いところじゃないかと思います。

 

第二幕は地獄のシーン

エウリディーチェは、毎日退屈、というのも、天国のジュピテルが言い寄らないためにと、地獄の王に部屋に閉じ込められているからです。

ところがジュピテルは、ハエに変身して部屋に入り込み、エウリディーチェに一緒に天国に行こうよと誘惑します。

そこにオルフェウスが現れて、神話通り、エウリディーチェを連れ帰ることに。

神話では妻を愛するあまり振り向いてしまうのですが、愛してないのでまったくオルフェウスは全く振り向きません。

ジュピテルが雷を落とし、びっくりして振り向くオルフェウス。

約束を破ったので、エウリディーチェはオルフェウスとの現世に戻れないことになりますが、

そもそもそれを望んでいたので、全員がよかったよかったと喜び地獄のギャロップへ。

 

見どころ

 

最大の見どころは最後の地獄のギャロップのところですが、

地獄でジュピテルがハエになって言い寄るところも見どころ。

どんなハエになるか、またハエが歌う変な歌も見どころ聴きどころです。

ふざけたようなお話ですが、一流のオペラ歌手やオペレッタの歌手が歌います。

堅苦しいことは抜きで、オペレッタって楽しい!と思って見たいですね。

 

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