新国立劇場でタンホイザーを観てきました。
新国立劇場の今シーズンの4作目のオペラです。
タンホイザーのプルミエで日曜日ということもあってかほぼ満席。
男性の方が少し多い感じでしたね。
新国立劇場のシーズンオペラとして
新国立劇場ができてから、日本でもシーズンオペラとして秋以降オペラが観られるようになったのは
つくづく嬉しいなと思います。
そして入り口でもらったパンフレットには次期シーズンの予定も入っていて
ドン・パスクワーレとジュリオ・チェーザレ、それにマイスタージンガーがあったのでまたまた楽しみです。
一演目の上演回数は4〜5回なので多くないとはいえ、プルミエと呼ばれる初日があるっていうことだけでも
私などはワクワクしてしまいます。
ということで今回の上演はプルミエ。
バイロイトでも活躍している歌手が出るということで楽しみにしていました。
パンフレットは買っていないので詳しいことはわかりませんが、今回はドイツ語による上演で
序曲に続いてバレエが入っていましたからパリ版とドレスデン版の折衷版ということかなと思います。
演出とバレエ
幕が上がると何もない舞台に、煙がモクモク。
煙と共に白い塔がいくつも下から現れて神殿のようになる演出。
この塔がかなりの高さなので、舞台の奈落はかなりの深さがあるのだなと思いました。
ニョキニョキ延びるガラスのような塔はほぼ天井に届くほどの高さまで伸び、かなり目を奪われました。
この塔は1幕のヴェーヌスの洞窟から2幕以降の普通の世界でも、ずっと使われます。
最初の現れ方こそ斬新でしたが、基本的にはそれほど形を変えることもなく、色の変化と置き方で雰囲気を変えていたかなと思います。
氷のような塔なので、一幕では熱くムンムンとする官能の世界というよりは、冷たい雪の女王の城をイメージしてしまいましたが、一幕は色を赤くしていたのでそれで表していたのか、
それとも一度でもヴェーヌスブルクの洞窟に行ったものは決して許されないから
氷のように冷たい世界だという解釈もありかもしれません。
ヴェーヌス自身も氷の女王のような衣装を着ていましたね。
さて、今回はバレエが入っていましたが、タンホイザーのバレエは官能の洞窟のバレエとあってかなり刺激的な衣装と踊りになることが多いと思います。
今回も一瞬半裸?と思うような衣装で登場。
私はオペラのバレエシーンがかなり好きで今回も踊りは楽しく、素晴らしかったです。
ただ、ほぼ皆が同じ動きをする理路整然とした感じがあって
官能の踊りというよりはとてもまじめな踊りという感じが拭えなくてこのシーンとしてはどうなんだろうと若干思ってしまいました。
とはいえ、オペラってバレエも見られるしほんといいなあと思いますけどね。
小柄でほっそりしたバレリーナの後にワーグナー歌手達が出てくると、同じ人種と思えないくらい体の大きさが違いますよね。
このコントラストも楽しいところかも。
タンホイザーの合唱
今回タンホイザーを見て改めて思ったのは
タンホイザーの良さってやっぱり合唱じゃないかということ。
かなり合唱のシーンが多いのですが、
合唱に素晴らしい曲が付いているのでいいんですよね。
これほど合唱シーンでゾクゾクするオペラはないんじゃないかと思うくらい
このオペラは合唱シーンが楽しみになります。
特に第二幕と第三幕。
かなりの大人数の合唱で、第二幕の勇壮感と厳かな感じがすばらしい!
また三幕の合唱も有名な曲ですが、特に終盤の合唱は感動的でした。
人の声って一人でも素晴らしいのだから、プロの合唱になればさらに素晴らしいのはやはり当然なんでしょう。
タンホイザーを見るなら合唱シーンが見どころ、聞きどころだと思います。
歌手について
今回のタンホイザーで最も光っていたのはエリーザベト役のリエネ・キンチャという人。
ラトヴィアの人らしいですが、2幕の出だしからいきなり声がビンビンに出ていて
「おや!これはすごい」と。
見た目も清純なエリーザベトにぴったり(ローエングリンのエルザも合いそう)
これぞワーグナーのソプラノという感じの人です。
この人の声は音楽はなんでもいいから聞き続けていたいと思ってしまう声質。
神々しい感じがする声なんですよね。
すごい人が出てきたって思いました。
まだそれほど年齢も行ってなさそうだし、ブリュンヒルデなんかもやるのかなと(すでにやっていたらすみません)。
第二幕でタンホイザーを全員が剣をかざして攻めるシーンで
「あなた達は彼のさばき手ではない!」とかばうシーンは、そうだよねとなかなか感動ものでした。
タイトルロールのタンホイザーを歌ったのはトルステン・ケールという人。
この人はバイロイトでも活躍しているようですが、この日は調子が悪かったのかなと。
声質としては確かにヘルデンテノールっていう感じがするのですが、
あまり声が出ていない感じで、ところどころ割れたりしていたので多分調子が悪かったんじゃないのかなあと思っちゃいました。
今風邪が大流行していますし‥。
低音が強めだったのでバリトンよりの人なのかなと感じました。
もう一度別のオペラで聞いてみたいですね。
ヴォルフォラムを歌ったのはローマン・トレーケルという人。
この人もバイロイトに出ているようで魅力的な声でした。
ヴォルフォラムはバリトンの役ですが、この人の声はバスバリトンかなという感じの
低めの声でその分安定感がありましたが、
ただ、見た目と雰囲気がどうしてもヴォルフォラムという感じがしなかったのは私だけ?
悪役の方が合っていそうだなと。
ヴォルフォラムが歌う第三幕「夕星のうた」は有名なのですが、
今回は第二幕の歌合戦でヴォルフォラム歌う
愛の本質の歌の良さを再認識しました。あれもいい曲ですね。
その他では領主ヘルマン役の妻屋秀和さんが素晴らしかったです。
いろんなオペラでなんども見ていますが、今回はかなり歌も多かったのでたくさん聞くことができました。
ほんと役柄にまさにぴったり、すごい人です。
あと第一幕の最後の方に出てくる牧童役の吉原圭子さんという人。
とても小柄なのにとてもよく通る声で印象的でした。
オケも出演者もほぼ日本人という中にはいって海外の人が主要な役を歌うというのは、
世界で活躍する歌手は皆やっていることではありますが、
言葉の壁もある中でやはり大変なんだろうなと思うんですよね。
今回なぜかそんなことが頭をよぎったのは、海外の歌手の人が若干浮いている感じがしたからかもしれません。
初日だったということもあるのかも。
今回のオケは東京交響楽団、特に第一幕ではバイオリンの美しい音色が聞こえてきていましたがあれはコンサートマスターの矢部達也さんだったのかな。
ちょうど見えませんでしたけど。
何はともあれやっぱりワーグナーは最高ですね。
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