珍しいオペラを観てきました。ラヴェルの「子供と魔法」です。
- 場所:上野の東京文化会館にて
- 前半:ラヴェルの子供と魔法
- 後半:プッチーニのジャンニ・スキッキ
子供と魔法は短いオペラで、
今回はプッチーニのジャンニ・スキッキと合わせての上演でした。
ジャンニ・スキッキはプッチーニの三部作という三つの短いオペラの中の一つです。
ジャンニ・スキッキは、三部作の中の他の演目と組み合わせることが多いと思うのですが、
今回はラヴェルとの組み合わせでした。ちょっと珍しいですね。
短いオペラはこんな風に、二つ合わせて上演することもあります。
今回のオペラは、小澤征爾音楽塾オペラプロジェクトの一環で、これも実は初めてです。
確か数年前にも子供と魔法は上演していたかと、その時は行きそびれましたが‥。
(いつもながら写真がへた‥)
ジャンニ・スキッキと子供と魔法の組み合わせ
公演当日、東京文化会館がある上野は桜が満開、お天気も良かったので
JRの公園口改札から出るだけでも長蛇の列。
駅を出てもすごい人だったので、東京文化会館が駅からすぐで良かったと思いました。
そんな中のオペラ鑑賞でした。
ジャンニ・スキッキのアリア「私のお父さん」はとても有名で単独でもしばしば歌われますが、
ジャンニ・スキッキも子供と魔法も、生で観るのは初めてです。
とくにラヴェルのオペラは映像でも観たことがなかったので、全くの初めて。
プログラムを読んでわかりましたが、子供と魔法は小澤征爾さんの思い入れのあるオペラなんですね。
さて、日本でオペラが盛んになってきた歴史はまだまだ浅くて、せいぜい60〜70年程度だと思うのですが、
最近特にじわじわとオペラファンが増えてきているんじゃないかという気がします。
その理由の一つが最近の劇場の混み具合です。
今日も上の方から見ていましたが、ほぼ満席。
安いチケットではないし、どちらかというとマニアックなオペラが満席になるんだなあ、と思いました。
ちょっとしたオペラバブルなんでしょうか。
たぶん小澤征爾さんの魅力もあるのでしょう。
小澤征爾音楽塾はオーケストラも歌手の人たちも皆ほとんど若い人ばかりでした。
私の周りにはオペラファンが全くいないのですが、こうやって劇場にくると結構オペラを見る人っているんだなといつも思います。
もっとオペラが盛んになって
上演されていないオペラを見られるようになってほしい、というのが目下の願いです。
そうそう、パンフレットは、通常欲しい人だけ買うのですがも今回は全員に配られました。
しかも分厚いパンフレットです。
内容も普通とはちょっと違っていて、
オーケストラも合唱も全ての人たちの顔写真が載っているパンフレットです。
珍しいですよね。
そういうところに、全員で取り組んでいる意気込みのようなものを感じました。
「子供と魔法」の上演があるからか、会場には子供さんと一緒に来ている方も何人か見かけましたね。
子供と魔法は、題は子供向けですが、中身は難しいんじゃないかなあ、とちょっと感じましたが‥。
さて、パンフレットではジャンニ・スキッキが先でしたが、実際の上演は
子供と魔法が先でした。
この順番については最初からなのか、途中で変えたのかはわかりませんが、
上演直前に順番についてのアナウンスがあったので、
子供と魔法のあらすじは休憩時間に読もうと思っていた私は
結局、あらすじを全く知らない状態で公演を観ることになりました。
(先入観が入るので、何も知らないのもありだとは思いますけど)
結果として、あらすじを知らなくても内容はよくわかりましたし、
二つを聴いてみて、やっぱり子供と魔法は先の方が良いと思いました。
子供と魔法は椅子やポットがしゃべり出すファンタジーの世界ですが、
全体には軽くおとなしいオペラなので、後半にもってくると、ちょっと薄れてしまうような気がしたのです。
今回、ラヴェルとプッチーニという変わった組み合わせでしたが、
プッチーニという人の作品は、私の場合、長く見ていると結構疲れるオペラなので、
今回のような子供と魔法との組み合わせは、ちょうどいいかもと、思いました。
子供と魔法・鑑賞レビュー
通常初めてのオペラを観ると、舞台にのみ目が行きがちなのですが、
子供と魔法に関しては、オーケストラがすごく気になった、というのがまず印象です。
それくらい、めまぐるしく変わる多彩な音楽なんですね。
楽器も次々といろんな音が出てきて、えっなに、この音?
という感じです。
それこそ魔法のような音楽の連続でした。
これが、ラヴェルがオーケストラの魔術師と言われる所以なんだなと思いました。
とにかく多彩でそれがおもしろかったです。
子供役のエミリー・フォンズはふくよかな声のメゾソプラノ。
ソプラノが主役のオペラが圧倒的に多いので、たまにメゾソプラノが主役のオペラを聞くと
メゾっていいなあと思っちゃいます。
メゾってなんとなく、安心して聴けるんですよね。
そして母親役のマリアンヌ・コルネッティが何と言っても抜群の歌唱力でした。
経歴を見てもすごい人のようですが、
ぜひこの人の他のオペラも見てみたいです。
特に、ヴェルディとか。
トロヴァトーレのアズチェーナなんかはぜひ聴いてみたいところですねー。
さて子供と魔法は、話は子供向けの絵本のようなストーリーなのですが、
必ずしも音楽がわかりやすいかというとそういうわけではないと思うんですよね。
子供が聴いて楽しいのかな、とちょっと感じましたが、
でもまあ、幼いうちにオペラ音楽に触れる良い機会にはなりそうですね。
時間も短いから退屈したとしてもなんとかなるし。
子供と最初に行くならやっぱりヘンゼルとグレーテルがいいとは思いましたけど。
子供と魔法はもともとはバレエとオペラが組み合わさった作品、となっているようですが、
今回はバレエっぽいところはなかったです。
小澤征爾さんが最初にパリのオペラ座で指揮をされた時はどんな演出だったのかなと
ちょっと気になりました。
ジャンニ・スキッキ鑑賞レビュー
プッチーニのオペラはやっぱりメロディアスでとてもドラマティック。
ドラマティックすぎて、時に疲れてしまうのですが
ジャンニ・スキッキは喜劇で時間も短いので、すごく楽しかったです。
プッチーニの三部作の中でも人気があるのがわかります。
歌手はほとんどの人が、両方のオペラに出ていましたが、
こちらでもやはりツィータ役のマリアンヌ・コルネッティが圧巻でした。
ものすごい音量の声。
これならメトロポリタン歌劇場の端っこまでじゅうぶん届くでしょうね。
プッチーニは管弦楽がかなり鳴りますけど、全く埋もれないで声が通っていてすごいです。
タイトルロールを歌ったロベルト・ディ・カンディアも良かったですね。
雰囲気がぴったり。
ただ、ブオーゾの身代わりになるのですが、ブオーゾがすごく痩せているのに
ジャンに・スキッキがでっぷりしているので、
体型でどう見てもばれるでしょ、と思ってしまいました(笑)
私のお父さんを歌ったラウレッタ役のサラ・タッカーという人は
写真で見るより、とても愛らしく、独特のオーラがある人でした。
舞台で立っているだけで雰囲気のある人でしたね。
ラウレッタ役にとても合っている、と思いました。
とにかく短いけど見応えのあるオペラでした。
舞台の窓の向こうのフィレンツェの街並みらしきものが最初から素敵だなと思っていましたが、
最後に舞台が変わっていって、窓が全面的に大きくなり、景色が広がった演出がすごく素晴らしかったです。
喜劇なのになんだか感動するラストでした。
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