びわ湖ホール指揮者セミナー最終日・いよいよ成果発表!

3日間にわたる指揮者セミナーもついに最終日になりました。

最終日は時間が最も長く11時〜17時。前半は練習で、後半は5人の受講者が順番に成果発表です。

私としては毎日長丁場でしたが、長さは全く苦にならず、終わってしまうのが残念なほど。

最終日の模様をお伝えします。

最終日は5人とも個性が出て別人のようだった

成果発表はどこからどこまでが誰担当っていうかんじでオペラを区切って順番に演奏していくんですけど

前半は順番に練習で最後に成果発表と言う流れでした。

全体の感想としては、最終日が一番みなさん積極的でした。

すでに指揮者として活動している方が多かったのですが、普段はこんな感じでやっているんだろうなという感じ。

そういう意味では、あれ?昨日までと違う、こういう人だったのねという驚きもありました。

3日目は歌手のマイクの音量が上がってたような気もしました。ソーシャルディスタンスで歌手はかなり遠くに立ってましたからマイクなしではきついんでしょうね。

歌が聞こえないとつまらないし。

指揮:原田太郎さん

最初は原田太郎さんという方で、かなりベテランなのかなと。

3日目は最初からすごく積極的にいろいろ指示してました。特に歌手さんたちに対して。

見ていてそんなに歌手にばかり注文つけちゃっていいの?ってちょっと思ったんですけど

歌手の方からも「指揮の意志がわかりにくい」とはっきり言われていて(それは私もちょっと思った)あれれ指揮者と歌手がバチバチかなあとちょっと思いました。

もっとメリハリを!と歌手の方に言ってて、それ言っちゃって大丈夫?イラっとされないかなと思ったり‥。

でもそのあと歌手の方もよりいい感じに変わっていたので、

「やってやるぜ!」的な感じで逆に頑張ったのかなとも思い、それはそれでちょっとバチバチしてもうまくいったりするんだなと、見ていて思いました。

いずれにしても歌手さんたちとの信頼関係を築くのは難しそうです。

ただ歌手にばかり注意してるなあと思って、

一方なんとなくオーケストラが単調‥って感じていたら、

オケからも「淡々となの?緩やかなの?どっち」と声が上がってました。

歌手にばかり注文つけてるとオケの方もこっちは?ってなりますよね。と見ていて思った。

早くしたい時にはわかるように振って、大丈夫になったら大丈夫だよっていう振り方にしないとねと、講師の沼尻さんからも。

そういう微妙な振り方もあるわけですね。

あと全体に追い立てている感じは私も感じていて、早くしたいのかなと思うけど圧にも感じちゃいました。

沼尻さん曰く、オケを早く引っ張ろうとしすぎると、歌を聴いて演奏しようとしているオケの人もいるから困っちゃうよと、すごくなるほどねと。

あと最初のシーンは貧しいヘンゼルとグレーテルの家庭の事なのに、やけに軽快すぎて、貧しい感じがないなあというのは私も感じました。

早くすることとは時に大事かもしれないけど、急かされる感じだと反発されると、いや難しいですね。

指揮:粟辻聡さん

この方は初日とのギャップが一番大きかった人です。

初日は様子見だったのかなと思うくらい、2日目以降は自分の意志をはっきりと伝えていたし、だからと言って威圧的でもなく、声もよく通るしオケも歌手もよくみているのかなという印象。

実は経験も豊富なのねと感じました。

オケとのやり取りで魅力が出る人なのかなと、なんとなく信頼できそうで品のいい音楽に聞こえたのはなぜかな。それとも私だけ?

何よりこうしたいという意気込みが3日目は最も感じられました。

任されると本領発揮するタイプなのかも。

講師の沼尻さんに右手でテンポ、左手でディミニエンドの指示を、と言われたあとにガラッとオケが変わったのがわかっておもしろかったですね。

また、このフォルテはどんな風にするのかな?とオケが疑問に思っているからそれを指揮者がこれくらいだよとわかるように指示を出すのが良いらしく、そういう微妙なやりとりも必要なのだとか。難しいんですねえ。

粟辻さんの担当の所はヘンゼルのお父さんとお母さんの掛け合いが多いんですけど

お父さん役の五島真澄さん、お母さん役の山際きみ佳さんともすごく役に合ってる声でした。

このお母さん役って結構難しいんじゃないかと思うんですよね。

ただ両親のやり取りの途中でなぜかつまんなく感じたんですよね。

煽られる感じで。

そしたら沼尻さん曰く、急激すぎるって。

急いだから緊張感がでるわけじゃないと。

確かに後半どんどん速くなっていっちゃって見ていても息切れしそうだった。

前半よかったのになあって。

オケの注意を歌に持っていくように先導した方がいいっていう時もあるみたいで、これにはなるほどと思いました。

歌ですよ!というアピールをオケに示すと、オケも気づくという事みたいです。

沼尻さんがちょっと指揮をするとメリハリがやっぱり全然違うんですよね。さすがです。

指揮:松川創さん

この方もかなり経験がありそうで、やはり最終日はそれまでに比べてはっきりとオケに指示出ししてる感じがしました。

眠りの精の部分が多いんですけど、ここってすごく美しい曲ですよね、

でもどうかするともったり聞こえてしまう時もあって。

それは遅すぎるからとかそういう単純なことではないらしく、

眠りの精さんは、指揮者の意志を汲み取ろうとしていたようで、いわゆるお見合いに近い感じだったのかなと。どちらも譲ろうとしていたというか。

眠りの精ってキラキラした声質の人が担当しますよね。今回眠りの精を担当したのは平尾悠さんというソプラノ。

とてもぴったりの声質でキラキラ声。

この方はどちらかというと指揮者に引っ張ってもらいたいタイプだったみたいで、(譲ってくれそうなソリストっていう言い方をされてましたけど)

そういう人にはその人が求める指揮をしてあげるっていうのがいいみたいです。

指揮者にとっては本当に難しそうなことだけど、歌手ってめちゃくちゃ目立つから指揮者がこうだよ、それでいいよって引っ張ってくれたらやっぱり歌いやすいんだろうなと思いました。

あとフルートが出る時にはちゃんと合図をしてあげてとも。

中には老齢著名な指揮者の場合、フルートが出てから「あ、そうだったダンケ!」(笑)っていう場合もあるって、沼尻さんがおっしゃっていました。

それは70過ぎてからできることだと(笑える)。

それにしても眠りの精からのお祈りのシーンは何度聞いても美しくて、この部分を聞くためだけでもこのオペラを見たい!と私は思うほどです。

指揮:大森大輝さん

今回5人の受講者のうちもっとも最年少とのこと。

この人も初日と2日目以降でかなり印象が変わった人です。

初日は本当に若くて子供っぽく見えたんですけど、2日目の指揮からなんかパワーを感じる人になって‥。

大森さんは歌がない部分を担当されたんですけど、前日に鳴らし対決をした部分でもあります。

盛り上がりの部分って単純に盛り上がって行くわけじゃなくてうねりながら盛り上がっていく(私のイメージ)んですけど、実は大森さんっていう人はすごーく考えて指揮してるんだなあと感じましたし、

オーケストラとも歯車が合っているように私には聞こえました。

だからすごいなと。

微妙に弱くする指示とかもちゃんと伝わっていたし。

そういうのもスクリーンの大画面で指揮が見えるからわかるんですよね、そういう意味でも今回のセミナーはおもしろかったです。

この大森さんの森のシーンの音楽はなんか一瞬ゾクッとするくらいよかったと私は感じました。

講師の先生は林家三平とか植木等とか(笑)相変わらずそういうのを言っては、世代が違うから知らないかあと言っていてその度に私は笑ってましたが‥。

ティンパニーが主の時はそこにオケの意識を向けさせると合うという技もあるようでそれにはすごく感心しちゃいました。

あとバレエが入る場合はバレエのことも考えなきゃいけないとか。

指揮者ってそんなにいろいろ求められちゃうのかと。やっぱり常人には無理なきがする。特にオペラは。

指揮:石﨑真弥奈さん

今回の受講生の中で唯一女性の指揮者です。

小柄で雰囲気が三ツ橋敬子さんを思い出しました。

沼尻さんの手を使わないで指揮をして!という無茶振りで一番すごいなと思ったのはこの石崎さんでした。

顔の表情とか雰囲気とかでやりたいことがちゃんと出ていたというか。

ただ、指揮棒の振り方ではクイックイッ!と振る特徴があるので、あれはオーケストラはやりにくいのかなと感じたりもしました。

癖についてはいろいろ講師に注意もされていましたけど、それでも独特のパワーを感じる方です。

アリアをオケ全員がちゃんと把握しているかはわからないよと言われていましたが

これについては確かにそうなのかもと。

指揮者はそういうことも頭に入れてフォローしなきゃいけないわけですね。

あと歌詞が韻を踏んでいる時はちゃんとそれも意識して指揮をするように言われていました。

そこまでやるんだと思うとともに、確かに言われた箇所は明らかに韻を踏んでるんですよね、ドイツ語を知らない私でもわかるくらい。

だからすごく説得力があるというか。

音楽は、若干なぜか全体のバラバラ感を感じた部分もあったんですけど、

やっぱり顔だけで指揮をできちゃったのがすごかった。

今後がさらに楽しみな気がしました。

いよいよ成果発表!

最終的に成果発表になったのは3:50分頃から。

その時にはオーケストラの皆さんはちゃんと黒服に着替えて、歌手の方もちゃんとした服装に着替えていました。

セミナーなので服装は普段着だと思っていたのですが、

ちゃんと敬意をもってというか、皆さんがきちんとした姿で成果発表に望むのはなんだか気持ちが引き締まってよかったです。

ヘンゼルを演じたのは森季子さん、グレーテルを演じたのは中嶋康子さんでしたが、冒頭の数え歌の時は振りもつけて歌ってくれました。

魔女役は今回男性で島影聖人さんでしたが、魔女のシーンではほうきにまたがって舞台の端から端まで飛んで(歩いて)くれました笑。

本番は、緩急がなくなっちゃったかなという人や、あれ?練習の時の方がよかったかもとか、

なんか早くなってる、歌いにくそう‥とか

強引でもだめなんだなあとか、

緩急が無いかもとか

癖があまりでなくなっている人とか、

必ずしも最後の成果発表が一番よかった!というわけには行かなかったけど、

でもそれだけ本番は一回だけだから反省がいっぱい残るものなんだろうなと思いました。

全体にはあおっちゃって速くなっちゃった人が多かった気がします。見てて大丈夫?って思ったので。

あとオペラはあまり指揮者自身が情熱的に振らなくても良いのかも、とも思いました。

何れにしても成果発表の時に一番思ったのは、これでしばらくヘンゼルとグレーテルを生では聞けないのねという寂しさ。

うまくいく時や行かない時があってもやっぱり生の音楽ってすばらしいんですよね。

今回ヘンゼルとグレーテルを何度も聞けたのは本当に楽しかったの一言。

それから講師の沼尻さんという方、私は知らなかったんですけど竹取物語を作曲された方なんですね。どんな音楽なんだろう‥。

竹取物語はまだ見たことがないんですが、機会があればぜひ見てみたいです。

そして今回の受講生の方達もいつか何かのオペラでお会いできたら嬉しいですね。

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