三部作プッチーニ2018.9月鑑賞レビュー(新国立劇場)

新国立劇場でプッチーニの三部作を見てきました。

まずは、日本で、この作品を順番通りに、上演することにちょっと驚きというか、

日本のオペラも最近はいろいろやってくれるなあ、というちょっと感動と、喜びを感じてしまいました。

少なくとも私がオペラを見はじめてからの数十年は、今回のような三部作の、管弦楽もフルでの上演は、なかったような気がしますから。

  

 

プッチーニ三部作の上演

 

三部作の中で、最後のジャンニスキッキは、比較的ポピュラーで、

特に、ラウレッタが歌う「私のお父さん」は単独で何かと歌われる曲で、有名ですが、

外套と修道女アンジェリカは見たことがなかったので、とりわけ楽しみでした。

そもそも三部作という題も地味すぎて、何だろうと思う人も多いのではないかと思います。

今回は、4回の公演で、ダブルキャストでしたが、このあまり有名ではないオペラにどれだけ人が来るんだろうと、思っていました。

今回見に行ったのは、最終日で、日曜日だったこともあったからか、思ったより人がたくさん入っていました。

オペラ人口はやっぱり増えているのでしょうかね。

3つの全く異なるストーリーなので、3時間半は覚悟して行ったのですが、

結果は休憩を入れても3時間。思ったより早く帰れるのは、はっきり言ってありがたいです。

短くなった理由は、外套と修道女アンジェリカを続けてやったこと。

今回は、修道女アンジェリカが、外套の続編である、という解釈のようです。

 

三部作すべての作品で、大きなコンテナを、いくつも使っていましたが、演出も、舞台の変化に時間をかけない工夫なのかな、と思いました。

大きなコンテナを使って、こんなにいろいろできるとは、という感じで舞台演出はおもしろかったです。

 

外套

 

まずは三部作の一つ目、外套です。

外套を見た感想を一言で言うと、やはり道化師を思い出すストーリーだなということでした。

一ヶ所に定住しない主人公たちの生活や、同じ仲間の一人と愛人関係になってしまい、夫が嫉妬で殺してしまうところなど、ちょっと似ていますね。

オペラには愛や恋のストーリーがとても多いけれど、外套は愛というより嫉妬のオペラ

殺人まで行ってしまうと、果たしてそれが愛なの?と思ってしまいます。

音楽の方は、最初のうちは、水を思わせるような、音楽がしばらくつづきますが、徐々に様相が変わっていく感じでした。

外套では最後に、殺したルイージの顔に、妻の顔をおしつけるのかと思っていたのですが、

今回はそれはなかったですね。あまりに凄惨だからでしょうか。

それでも迫力ある内容でした。

ミケーレ役は、今井俊輔さんというバリトン歌手。

とてもいい声で、後のジャンニスキッキでも登場しますが、演技がとても上手な方でした。

外套のミケーレは、嫉妬深く、妻の愛人を殺してしまう、役どころですが、なんとなくあったかい感じがする人で、あまり悪い人には見えなかった気がします。

それにしてもコンテナを使うことで、海のそばの雰囲気が出るものなんですね。

ミケーレの今井俊輔さんもそうですが、外套では、

ルイージの芹澤佳通さんとジョルジェッタ役の文屋小百合さんが、迫真の演技で良かったです。

それと、ルイージとジョルジェッタが故郷を思って歌う部分は、美しかったですね。

 

修道女アンジェリカ

 

今回の三部作で最も見たかったのが、この修道女アンジェリカです。

なかなか上演されないオペラだと思いますから、

今回を逃したら、次は無いんじゃないかと思いましたしね。

とても美しい音楽で、見ることができて良かったです。

ただ、修道女アンジェリカは、演出が難しいのかな、ということを感じました。

刑務所のような修道院は、皆冷たい雰囲気

囚人という設定なのかなと思うくらいでした。

最後にアンジェリカは死んでしまうけど、救いのあるオペラだと思っていたので、

今回はちょっとアンジェリカに救いが無さすぎて、周りの人が冷たすぎて、悲しい残念感が残りました。

かといって、聖母マリアが出てきて、死んだ息子を連れて出てきたら、安っぽい感じになってしまいそうですし、

演出って難しいものですね。

ただ、三部作の中ではこの修道女アンジェリカが、最も美しい音楽ではないかと、思いました。

それだけに、死んでしまうけどそこに救いが見られたら、もっとさらに感動したんじゃないかと感じました。

アンジェリカ役の文屋小百合さんは、外套から出続けで、とても大変だったと思いますが、

外套と同じ人?と思うくらい、雰囲気が変わっていて、透き通った声が素晴らしかったです。

ただ、とても丁寧な歌唱で、美しい声はとても好感が持てるのですが、修道女アンジェリカの後半は、子供の死で、心がめちゃくちゃになる部分なので、

音程が外れても間違ってもいいから、もっと思い切り歌でぶつかってもいいんじゃないかと、ちょっと思うところもありました。

修道女アンジェリカは女性だけのオペラですが、バロックオペラには、女性がほとんど、という演目が結構あるので、それについては気になりませんでしたね。

このオペラの美しい音楽はもう一度聞いてみたいです。

 

ジャンニ・スキッキ

三部作の中では、ジャンニ・スキッキが最も人気があるということは、今回三部作を通して見てみて、

そうだよね、とわかった気がしました。

というか、プッチーニも、それはわかっていて作ったのかなと。終わりよければすべてよし、という感じですね。

やはり明るいオペラは楽しいので、人気が出るのもわかります。

ジャンニ・スキッキは、タイトルロール役の演技が光るオペラだと思いますが、今回も今井俊輔さんが、ぴったりとはまってとても素晴らしかったです。

日本も芸達者なオペラ歌手の方がたくさんいるんですね。

ブオーゾになりすまして遺言をいうシーンでは声音を変えていて、面白さ満点

演出面では、遺言を探すところで、部屋中が散らかされて汚くなるところは、おそらくどれを見ても同じような演出になるのかなと思いました。

今回の演出は、大きなコンテナを、その後どう動かすのかも楽しみでした。

コンテナが、修道院に変化するのもおもしろかったですが、豪華なブオーゾの家にもなってしまうのは、さらに見応えがありました。

特に3つ目ジャンニ・スキッキのラストの、コンテナの変化が圧巻でしたね。

歌手では、今井俊輔さんほか、

リヌッチオ役の前川建生さんがとてもスコーンと通る美しいテノールでした。

こうもりのアルフレード役で聞いたことがあるような気もしますが、定かではないです。

何れにしてもアルフレードが合いそうでした。

ラウレッタ役の船橋千尋さんという人は、見た目もぴったりですが、高音が、独特の素晴らしい声。

高音をもっと聞いてみたかったです。

 

二期会のオペラなのに、どうして藤原歌劇団の名前があるのか、不思議に思いましたが、

今回は、それにさらに新国立劇場の合唱団も加わっての、初めての合同の試みだったんですね。

そのつながりはよくわかりませんが、観る方としては、ただ良いオペラが見たいし、

これからも、珍しいオペラを楽しみにしたいですね。

 

そうそう、今回座った席は、舞台が見にくいため、あらかじめ、座布団が置かれていました。

新国立劇場の、というか日本人の心遣いはすごいですね。

新国立劇場・休憩の取り方

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