日本の人気オペラ

ヨーロッパと違って日本ではオペラ上演があまり多いとは言えないのですが、

それでも年々、数も種類も増えてきていると思います。

イタリアではイタリアのオペラの上演が多く

ドイツではドイツオペラの上演が多い傾向がありますが、

では日本ではどんなオペラが人気なのかについてです。

 

不動の人気はモーツァルト

日本でよく上演されるオペラは何かと聞かれると

が浮かびます。

モーツァルトは他にも「ドン・ジョバンニ」「コシ・ファン・トゥッテ」の上演もありますから

日本では人気の作曲家と言えるのではないでしょうか。

実は私の場合は、モーツァルトのオペラから入ったわけではありません。

むしろモーツァルトがなぜ人気があるのかわからず、あえて見ようとは思わなかったオペラでした。

というのも私が最初に見たのはドニゼッティの愛の妙薬

で、その後イタリアオペラにはまって行ったから、ということもあったからです。

特にヴェルディのオペラの重厚な音楽とストーリーに触れると

軽いモーツァルトのオペラが物足りなく思えて、あえて見ようとは思わなかったのです。

 

昔からフィガロの結婚はよく上演されていましたが、

なぜそんなに人気があるのか、よくわからなかったんですね。

 

さて、オペラの世界ではジュゼッペ・ヴェルディを知らない人はいないというほど、大作曲家なのですが、

日本でヴェルディを知っている人は、オペラファンくらいではないかと思います。

ヴェルディといえばサッカーの方が浮かぶ人の方が多いと思います。

というのもヴェルディはオペラ以外の作品がほとんどないんですよね。

学校の音楽でも習わなかったと思います。

 

それに対してモーツァルトは知らない人はいないんじゃないかと思います。

クラシック好きではなくてもモーツァルトなら知っているという人がほとんど。

学校でも習いますよね。

それに、モーツァルトはオペラ以外の曲がずいぶんたくさんあります。

小さい曲から、オーケストラの交響曲までいろいろ。

つまりモーツァルトの音楽というのは日本人に馴染みのあるメロディーなんですよね。

あまり聞いたことがないヴェルディという人が作ったオペラより、

モーツァルトが作ったオペラの方が、すんなり入っていける、行ってみようか

そう考える人は多いはずです。

特に日本では戦後、モーツァルト人気がとても高くなったようです。

日本はとりわけモーツァルトが人気のある国ともいえるのではないでしょうか。

私も、モーツァルトといえば交響曲40番のいわゆる涙のシンフォニー

トルコ行進曲がまず浮かんでいました。

少なくともオペラの人というイメージはなかったです。

 

日本でモーツァルトが人気があるのは、モーツァルトは人も曲も有名で、誰でも知っているのでオペラも見やすくて聴きやすい、そんな理由があると思います。

モーツァルトの中でも特に人気があるのは魔笛フィガロの結婚

二つのオペラにはとりわけ有名なアリアが多いので、選ばれるのでしょう。

 

私の中でモーツァルトのオペラは、かつては「まあ時間が合えば見に行こうかな」というくらいのものでしたが、

最近はちょっと違っています。

いろんなオペラを見た後に改めてモーツァルトのオペラを見たら、音楽がやはり素晴らしいと再認識したのです。

特にそれを感じたのは、「劇場支配人」というオペラ。

短いオペラで、シェーンブルン宮殿でサリエリのオペラと競演したと言われるオペラです。

短いオペラなのですが、アリアが多彩で生き生きしており、目からウロコ状態で衝撃を受けたんですよね。

こんなに良かったのかと。

そしてオペラを見始めてずいぶん経った今、モーツァルトのファンになりつつある状態です。

日本で人気だった理由がずいぶんたってやっとわかりました。

 

椿姫と蝶々夫人の人気

ジュゼッペ・ヴェルディと言う名前は知らないけど「椿姫」なら知っていると言う人もいるのではないでしょうか。

モーツァルトとともに日本で人気のオペラに「椿姫」がありますが、

オペラとして知っているというより、原作のデュマの小説や、舞台の椿姫として知っている人が多いと思います。

日本で椿姫が有名なのはヴェルディが作ったからというよりも、椿姫と言う言葉にある程度認知度があるからではないでしょうか。

バブルが弾けた後は、しばらく海外からのオペラも減りましたし、オペラの新しい演目も少なくなっていました。

そんな時もひたすら椿姫は上演され続けていました。

危機にも強い椿姫というところでしょう。

景気が悪い時はなおさらのこと、チケットが売れないと困るので、あえての冒険はせずに安全な演目で行くと思いますが、それが椿姫だったのだと思います。

そして今も藤原歌劇団は、毎年のように椿姫を上演していますが、そんなにやっていても椿姫は人が入るのだから、すごいものです。

ヴェルディの中では個人的には椿姫よりトロヴァトーレリゴレットが好きなのですが‥。

 

オペラを知らない人がオペラというと決まって口にするのが

あ〜る晴れた日〜」のアリア

これは蝶々夫人のアリアで、蝶々夫人は日本が舞台となっているオペラです。

ジャコモ・プッチーニという作曲家は知らなくても蝶々夫人という言葉は知っている人が多いところは

椿姫とちょっと似ていると言って良いでしょう。

日本が舞台なので日本でも人気があるオペラで、

実際上演回数もなかなか多いのですが、実は決して見やすいオペラと言うわけでもなく

プッチーニのオペラであれば、トスカの方が良いんじゃないかとしばしば思います。

海外の人が日本髪に着物で歌うのは、ちょっと違和感がありますし、

だからと言って日本人が歌うにはかなり重い声が求められるオペラで、なかなか歌える人がそんなにいないという現状があったでしょう。

 

また、椿姫や蝶々夫人、魔笛はどれも漢字のタイトルです。

日本人にわかりやすいタイトルというのも人気には重要なのではないかと思います。

カヴァレリア・ルスチカーナというオペラがありますが、これなどは知らない人にとってはどんなオペラなのか全くイメージがわかないですよね。

ヴェリズモオペラの代表のような作品ですが、ヴェリズモって何?となりますし。

人気にはタイトルも重要なのかなと感じます。

 

日本と海外の人気の違い

 

日本でばかりオペラを見ていると、日本の人気がそのまま世界中のオペラの人気と等しいような錯覚をしてしまうのですが

実際は国によってかなり違うんですよね。

ドイツ圏ではドイツオペラが中心

イタリアではイタリアオペラがやはり強い、

考えてみると当然です。

ところが日本の場合はもともとオペラの国ではないので、

ドイツだ、イタリアだ、フランスだという縛りが無い分、比較的いろんな国のオペラが分け隔てなく上演されている方だと思います。

この点についてはアメリカと似ています。

アメリカもオペラの歴史は日本同様新しいことと、

ヨーロッパから離れていることから、イタリア、ドイツ、フランスのオペラを分け隔てなく上演していると思います。

とはいえ、日本と同じかというとそうでもないです。

アメリカのメトロポリタン歌劇場の演目を見ると、

サッカーの影響で日本でも最近はアイーダがかつてより人気になっていますが、

日本ではやはり椿姫が強いのですが、

アメリカでは椿姫と同じくらいアイーダが人気があります。

ヴェルディの中では豪華絢爛な舞台が可能なオペラなので、多くの資本家や、企業が支えるアメリカのオペラ界ではアイーダが人気なのかもしれません。

ラ・ボエームが人気があるのは、不思議で

若者たちを描いたメランコリックなオペラがなぜアメリカでそんなに人気なのか聞いてみたいものです。

アイーダとは全く違うオペラなので。

ただ言えるのはアメリカは比較的プッチーニが多く

情熱的なメロディがアメリカの国民性に合っているのだろうかと感じます。

 

そして日本もアメリカも同様に不動の人気があるのはカルメンです。

カルメンは世界中でおそらく上位に入っているオペラだと思いますが、

良い音楽とおもしろいストーリーは万国共通で人気があるわけですね。

 

日本ではドイツオペラやイタリアオペラは比較的積極的に上演し人気もあり、新しい演目にもチャレンジしていると思うのですが、

フランスものについてはカルメン以外はやはり少ない感があります。

オッフェンバックの天国と地獄ですらそれほど多くなく、かつて浅草オペラであんなに盛んだったはずなのにと思いますが時代に合わないんでしょうかね。

とはいえ日本で人気のオペラも時代とともに変わっていくわけですから、今後はどうなっていくか楽しみでもあります。

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