今回はイギリスはブリテンのオペラ「夏の夜の夢」についてです。
かなり新しい部類のオペラで、モーツァルトとかヴェルディのオペラとはずいぶん違います。
そんなオペラをどうやって楽しむとおもしろいのか、私なりの楽しみ方を書いてみたいと思います。
ブリテンの夏の夜の夢
- 作曲:ベンジャミン・ブリテン
- 初演:1960年
- 場所:オールドバラのジュビリーホールにて
「夏の夜の夢」というとちょっと音楽好きな人はメンデルスゾーンの方が浮かぶんじゃないかと思います。
結婚式の時によく使われる結婚行進曲が有名ですよね。
今回の「夏の夜の夢」はメンデルスゾーンではなくブリテンの方です。
といってもブリテンと聞いて、音楽家じゃない普通の人の中でどれくらいの人が「ああ、あれね」と浮かぶのかなあと思います。
少なくとも私は最初ぜんぜんイメージが浮かびませんでした。
私が知っているオペラの中ではこの初演時期はとても新しい方で、つまりかなり最近の作品だということです。
モーツァルトは今から200年以上前の人だし、ヴェルディだって100年以上前の人なので、それに比較するとブリテンは20世紀に生まれている人で今から50年前はまだ生きていました。
オペラの初演は戦後のことなのです。
ブリテンっていう人について読んでいると必ず出てくるのがピーター・ピアーズっていう人です。
テノール歌手で私生活でもパートナーだったらしいんですけど、夏の夜の夢ではピーター・ピアーズが台本も書いているんですよね。
ブリテンのオペラってどんなイメージ?
ブリテンのオペラというと、どんなイメージなのか。
私の場合ははっきり言ってほとんど知らない、わからないという作曲家でした。
ピータ・グライムズというオペラは見たことがありましたけどずいぶん前のことだし‥。
なので「夏の夜の夢」があるとわかると
「ブリテンのオペラかあ、どうしよう見ようかなあ、ピーター・グライムズは暗かったけど…」
と迷うわけです。
そもそも新しい時代の音楽ってよくわからない音楽で聞きにくいのが多いじゃないですか(と私は思ってしまう‥)。
音楽のプロの人たちって、現代音楽とか新しいものもなんでもスルっと受け入れていけるものなんでしょうか?正直音楽家ではない私には不思議なんですけど‥。
一方でブリテンにはまる人もいるっていう話も聞いたことがあるので、なんかその域に行ってる人ってちょっとかっこいいというか通な感じがしてうらやましい気もするわけです。
そんなわけで私がブリテンのような新し目の作品を見る場合は、ちょっとした「挑戦」の感覚になるんですね。
わけわかんないかもしれないけど見てみようかなっていう感じです。
というのも、同じ演目を何度か見て
「今日は良かったー」とか「今回はテノールの声が出てなかったなあ」とか「演出最高!」って比較しながら見るのも確かに楽しいのだけど
やっぱり見たことが無いオペラっていうのも、すごく見たくなるものなんですよね。
私にとってブリテンはそんな時にのぞいてみたくなる類の作曲家です。
もしかしたらブリテンにはまっちゃうかもしれないっていう不思議な期待もあったり…。
ブリテンってイギリスの人ですけど、そもそもイギリスってちょっと意外でオペラがすごく少ないんですよね。
パーセルっていう人が17世紀ですごく古いのですが、そのあとはペープシュの乞食オペラとかサリヴァンのオペレッタっぽいのとかがあるけど、
18世紀、19世紀のオペラ黄金時代には、イギリスって重めのオペラがガラーンと空洞で抜けてる感じなんですよね。
そんな中20世紀になるとブリテンが出てきて有名作品がズラズラーっと並んでるわけです。
これだけ有名なオペラが多いということは世界中で認められている作曲家なのだということはわかるんですけど
いやあ、決して聞きやすいわけじゃないのに、なんでなのかなと。
果たして私に理解できるんだろうかと若干卑屈になりつつ見に行くっていうのが本音です(笑)。
シェークスピアのオペラ
「夏の夜の夢」って元はシェークスピアの作品です。
シェークスピアっていうと「ハムレット」とか「リア王」の四大悲劇とか、
「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」とか、
これハムレットの中の言葉ですよね。
いずれにしてもシェークスピアっていうのは戯曲、文学の世界ではなんとなく神みたいな存在っていうイメージがあります。
そもそもシェークスピアって16世紀の人で今から400年以上も前の人なのです。
イギリスのルネッサンス演劇っていうことらしいですけど。
時代が古いっていうだけでなんとなくすごいし、古今東西の学者達が研究を重ねているわけですよね。
だからオペラ、シェークスピア
ときたら高尚?絶対難しいでしょ!と普通思っちゃいますよね。
私もシェークスピアって有名だけど正直なところちゃんと読んだことはほとんどないし‥。
というわけで、読んでみました、夏の夜の夢を。もちろん日本語版ですけど。
シェークスピアって悲劇のイメージが強いけどこれは違って喜劇。
読んでみてわかったのは韻が多いのだということ。
時代は違うけどプーシキンも韻文小説っていうのがありますよね、文学の世界、特に古い物って韻がやはり多いっていうことですかね。
漢詩も韻を踏んでいるし、古い文学っていうのは何かと韻なんだなあと思いました。
そこら辺は文学者にお任せするとして、とにかく「夏の夜の夢」を読んでみたらこれがなかなかおもしろいのです。
戯曲形式だから短いし読みやすい。セリフですからね。
高尚で読みにくいんじゃないかっていうのは全然なくて(おそらく訳にもよるのでしょうが)小気味好いセリフもパンパン出てくるんです。
特にかなりマヌケそうな職人達による稚拙な劇中芝居が私にはじわじわときて、最終的にはこの劇の本番がかなり楽しみにすらなって一気に読み終えました。
メインはそっちじゃなくて、惚れ薬を別の人に使っちゃったっていうあべこべの話がメインだと思うのですが‥。
シェークスピアって「生きるべきか死ぬべきか‥」の名セリフがあるように、夏の夜の夢にもちょっとオヤっと思う良いセリフがちょいちょい出てくるのです。
この小気味の良いセリフがやっぱりシェークスピアの醍醐味なんじゃないだろうかって思うと
じゃあこれがオペラではどんな風になるのかなと。
そう思うと俄然このオペラを見るのが楽しみになったんですよね。
しかもでオペラ「夏の夜の夢」はかなり原文にあるセリフを使っているっていうから、いったいどの辺が使われているのか気になるわけです。
オペラの楽しみ方ってそれぞれだし自由でいいと思うんですよね。
そこでシェークスピアの「夏の夜の夢」の中で私が気にいったセリフを集めてみました。
そちらについてはこのページが長くなるので「夏の夜の夢」私が選んだ名言集に集めました。
よければどーぞ。
「夏の夜の夢」簡単あらすじと見どころ
夏の夜の夢のオーケストラの音楽って、私には情景を表す効果音的な感じがしたんですよね。
それまでのオペラと違って不思議なお芝居を見ているような感覚です。
オペレッタは芝居色が強いと思うんですけど、それとも違うので新しい世界という感じかな。
夏の夜の夢は、オペラを見る前に本を読んでみるのが一番おすすめですけど、簡単あらすじを載せておきます。
「夏の夜の夢」大まかに言うと
妖精パックが、惚れ薬を間違えて別の人にかけてしまったために起きる恋人たちのドタバタがメイン。また物語には
- 妖精たち
- アテネの貴族たち
- 結婚祝いの余興芝居をする職人たち
大きく分けて3種類の人たちが出てきます。
最初読んでいるとなんで職人たちの芝居があるの?と思うのですが、最終的にはこの芝居がいい味を出すというか、不思議に3つの世界がマッチしていきます。
夏の夜の夢・主な登場人物
<妖精たち>
- オベロン:妖精の王様(妻の小姓を欲しがっている)
- タイターニア:オーベロンの妻(小姓を夫に渡したくない)
- パック:オーベロンの手下(媚薬を間違えてかけてしまう)
<アテネの貴族たち>
- シーシアス:アセンズの君主(もうすぐ結婚)
- ヒポリタ:シーシアスの婚約者
- ライサンダー:アテネの若者ハーミアが好き
- ハーミア:アテネの若者ライサンダーが好き
- デメトリアス:ハーミアが好き
- ヘレナ:デメトリアスが好き
<アセンズの職人たち>
- ボトム:機屋、劇ではピラマス、惚れ薬のせいでオベロンの妻タイターニアに好かれる
- クインス:劇の制作者
- フルート:オルガン修理屋、劇ではシスピー
- スナッグ:指物師、劇ではライオン
- スナウト:鋳掛屋、劇では壁の役
- スターブリング:仕立て屋、劇では月
夏の夜の夢あらすじ
- 第一幕
最初は森の中、妖精たちが踊っていて妖精のいたずらパックもでてきます(パックは歌は無しでセリフのみ)
妖精のオベロン夫婦が出てきて、インド人の小姓の取り合いでもめています。
オベロンはパックに惚れ薬を見つけてくるよう命じます。それを妻に塗って誰かに熱をあげている間に小姓を取り上げようという魂胆。
そこへライサンダーとハーミアが駆け落ちしてきます。
疲れ切って眠る二人。
ハーミアを追ってデメトリアスも来て、
さらにそのデメトリアスを追ってヘレナもやってきます。
オベロンはデメトリアス→ヘレナを好きになるよう、パックにデメトリアスに惚れ薬をかけるよう言うのですが、パックは間違えてライサンダーの方にかけてしまったから大変。
ライサンダーはヘレナに夢中に。
一方オベロンは寝ている妻にも惚れ薬をかけます。 - 第二幕
職人たちは結婚の余興の芝居を練習しています。
そこへいたずらパックがきてボトムの頭をロバに変えてしまいます。
皆が驚いて逃げた後、オベロンの妻(タイターニア)が目を覚ましてボトムを見たので、即夢中になります。(惚れ薬は眠りから冷めて最初に見た人に夢中になる)
オベロンはそれを見て満足するのですが、人間の方についてはパックが間違えて惚れ薬をかけたことを知り、本来惚れ薬をかけるはずだったデメトリアスにかけるように言います。
その結果ヘレナは二人の男性から愛されてしまい、何が何だかわからず‥。
二人の若者はヘレナをめぐって決闘することになってしまったので、オベロンはパックに命じて森で二人が出会わないようにし、疲れた若者が眠った横にそれぞれの恋人を寝かせて起きた時に最初に見えるようにします。 - 第三幕
オベロンはタイターニアがロバ男に夢中になっている間に小姓をとりあげたものの、妻が不憫になり元に戻してやります。
そして二組の若者たちも目を覚まして元のさやに収まります。
シーシアスの宮殿では3組の結婚式が行われることになり
ボトムたち職人たちによりなんとも稚拙な余興芝居が行われます。
宴が終わって人間たちがいなくなると今度はオベロンと妖精たちと宴になっておしまい。
妖精パックはセリフだけですが、重要な役でこれをどんな人が演じるかは公演によって様々。
どんなパックかは見どころの一つだと思います。
また原作ではヘレナは背が高く、ハーミアは背が低いということになっているので、
オペラの中でもそうなっているのかどうかは一応注目しちゃおうかなと。
そしてやはりなんといっても、このオペラではシェークスピアの小粋なセリフを楽しみたいですね。
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