グルックの改革オペラがさらに新しくなった
新国立劇場のオペラパレスに「オルフェオとエウリディーチェ」を観に行ってきました。
グルックのオペラです。
今回公演を見終わった感想を一言で言うなら
新国立劇場のオペラはやはりレベルがすごい!
そしてバロックオペラがこんな風になるのねという驚きでした。
新国立劇場の公演っていつもはずれがないっていうか、満足度が高いです。
今回はダンスとのコラボオペラでした。しかも最初から最後までほぼずっとダンスありです。
こういうバロックオペラもあるのねと思いました。
これってかなりチャレンジじゃないのかな。
オペラの現代解釈とかそういうのはしばしばありますけど、それともちょっと違っていて‥。
とにもかくにも日本のオペラ会はますますおもしろくなってきた気がします。
そもそもグルックってバロックオペラの改革者って言われているのに、それをまた改革しちゃったとでもいうか。
先日オルフのカルミナ・ブラーナを見た時もバレエと合唱にかなり衝撃を受けましたけど、今回もまたまた印象に残る公演になりました。
チェンバロもあるけど音があまり目立ってないのはやはりグルックの特徴なのか、
また、はいここでアリア!っていうような繰り返しも無く、すでに音楽は融合しています。それはレチタティーヴォのようだけどそうでもないし‥。
丸い舞台と巨大な花
今回のオルフェオとエウリディーチェはイタリア語でした。
今回のが何版なのかはわかりませんが精霊の踊りはあるのかなと思ったら後半(前半だっけ)の部分だけ。私の好きなところがなかったのはちょっと残念。
でもやはりあそこはきれいな曲ですね。
序曲が終わると斜めになった円形の舞台が現れました。
以前見たカルメン(ブルガリア国立歌劇場公演)の舞台でも丸くて斜めの舞台があったなとちょっと思い出しました。(東京文化会館だったので場所は違います。)
あの時は合唱の人たちが千と千尋のカオナシみたいな格好をしていましたけど、
今回の合唱の人たちはちょっとダースベーダーのような黒い被り物。(あれって目の部分はどうなっていたんだろ?と最後に気になりました笑)
そして印象的だったのはやはり巨大な花。
パンフレットに載っていたのはこれだったのねと。それにしてもこんなに大きいとは!。
その花が黒から白に変わるのも印象的。黒い方は黄泉の国っていうことでしょうか。
他にセットが少ないだけにすごく思い切った演出だなと思いました。
かと言って無機質な現代風っていうのでも無いところが洗練されてるというか、そんな気がしました。
そして今回はダンサーの人たちがほぼずっと舞台にいるのでバロックオペラだということをすっかり忘れてしまうような上演。
バロックオペラって私の感覚ですが、1、2幕が比較的退屈で3幕で盛り上がるっていう印象があって、それについては今回のオルフェオとエウリディーチェも若干そうかなって思っていました。
でもダンスに見惚れ、演出の花に驚き、そんな退屈さを全く感じない舞台。
あと一つにはバロックにしては全体の時間が短めっていうこともあるのかなと思います。
それもグルックの改革の一つだったんだろうか‥。
今回ダンスは佐東利穂子さん他計4名。ダンスのことはよくわかりませんが、その世界では有名な方のようです。
白い衣装の佐東さん以外は青いワンピースのような衣装だったので最初は全員女性だと思っていたら男性が2人でしたね。
そうそう嵐のようなシーン鳴る雷のような音(ドラ?)、あれってバロックオペラでよく出てくる気がします、そんなことも気になっちゃいました。
歌手の人たちについて
序曲が終わるとまず合唱。この合唱が心が洗われるような曲で美しい音楽と声でした。
合唱ってやっぱり好きです。
今回の公演で一番よかったのはやはりオルフェオを歌ったローレンス・ザッゾさん。
オルフェオを歌うのはどんな声の人かな?というのがまず楽しみだったんですけど冒頭の合唱の後「エウリディーチェ!」という声が聞こえてきて「あ!カウンターテナーだ」とちょっと嬉しくなりました。
カウンターテナーってやはり同じ高音でも女性の高音とはまったく違いますね。
声に厚みがあるっていうのかぶれない感じというか。あの体でああいう声が出るって本当に不思議です。
強い声を出す時は本当にググッと心を打たれました。カストラートの声がどんなのだったかは知ることができませんが、人気があった理由が少しわかる気がします。
それにしてもオルフェオ役はほぼ歌い続けなので大変そうでした。
たしかモンテヴェルディのオルフェオも歌い続けだなって思った記憶があるのですが‥。まあお話的に仕方ないのかも。
で、今回のローレンス・ザッソさんですが、エウリディーチェを振り返ってはならない第3幕の葛藤のシーンがめちゃくちゃ切なくてよかった。
この役この人の当たり役なのか、もしそうでなくてもきっとそうなりそうな気がしました。
かつてのヨッヘン・コヴァルスキーを思い出してしまった。
エウリディーチェが再び死んでしまった後のアリアも切なく美しくよかったです。
そしてエウリディーチェ役はヴァルダ・ウィルソンさん。
出番はオルフェオに比べてかなり少ないものの、オルフェオと同じくらいこの人も良かったです。
なんて言うのかな、女性にしては厚みのある声。一瞬オルフェオと間違えそうになるような声質とでもいうか。
また、最初のうちは比較的動作が少なめで突っ立って歌うところが亡霊感がでていて、その後徐々に高揚していく微妙な演技の変化もよかったです。
でもやはり個人的には彼女の声がよかったです。うまいなあって。
そしてアモーレ役が三宅理恵さん。この人は新国立劇場の夜鳴きうぐいすでうぐいす役をやっていたかと思います。
歌もいいのですが、個人的には今回見た目がすごくよかったです。
銀色の髪と衣装がとっても似合っていて愛の天使の雰囲気がすごく出ていました。
オルフェオたちとあきらかに見た目で違うのもよかったです。
あの姿で出てきてくれると幸せを運んでくれるっていう感じがしてほんわか‥。
グルックのオルフェオとエウリディーチェはハッピーエンドなのでそれもいいですよねえ。
このお話のパロディ版がオッフェンバックの天国と地獄ですけどあちらは倦怠期の夫婦。ずいぶん違うのねと改めて思っちゃいました(笑)。
帰途につきながら昔は新国立劇場ってなかったことを思い出していました。
平成9年にできたみたいですけどちょっと調べたら昭和40年代から構想はあって何十年もかかってようやくできたんですね。
それまではオペラを見るなら東京文化会館かNHKホールくらいしかなくて‥。
水が流れるオペラパレスを外から眺めながら、よくこれを作ってくれたなあと思いました。感謝です。
オペラパレスにいくといつも幸せな気持ちになれる気がしますね。
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