ローマ歌劇場 マノン・レスコー鑑賞レビュー

2018年9月22日(土)

ローマ歌劇場の引っ越し公演

プッチーニの「マノン・レスコー」を見てきました。

場所は東京文化会館です。

ローマ歌劇場の引っ越し公演

 

ローマ歌劇場がやってくるのは、2014年から4年ぶりのようです。

今回の公演は、S席が54,000円と、かなり高額なオペラですが、引っ越し公演だから仕方ないですよね。

二人で来ている人は、二人で108,000円かあ、なんて考えちゃいました。

安い席は少ないし、すぐに売り切れるので、いつも見えないオペラファン達との奪い合いの気がしています(笑)。

さて、今回買えたのはE席の19000円

 

東京文化会館の会場は、かなりの人の入りでした。

実はローマ歌劇場の椿姫も観に行ったのですが、そちらよりもマノン・レスコーの方が、人の入りが多かったかも。

ちょっと意外でした。

椿姫の方が有名ですもんね。

22日は、三連休の最初の日だったことや、ローマ歌劇場の引っ越し公演の千秋楽だった、

ということもあったのかもしれません。

 

会場にきている人は半分は、男性かなという割合で、椿姫よりは男性が多め

椿姫は圧倒的に女性が多かったですね。

そのせいか、来ている人の装いも全体に椿姫より地味かなという印象。

 

マノン・レスコーを観た感想は、一言で言うと、とても素晴らしかったです。

楽しかったですねー。

マノン・レスコーは、そもそも日本ではあまり上演されないので、それを見ることができたことも嬉しかったです。

 

マノン・レスコーは、全体のストーリーとしては、話がまとまっているかというと、

必ずしもそういうわけではないと思います。

でも、34歳の時にプッチーニが作曲しただけあって、なんていうか、若々しさがあふれたとてもというか、勢いを感じる音楽でした。

そして、歌手の人たちも力演で、素晴らしかったです。

音楽

 

マノン・レスコーは4幕ですが、各幕ごとの色の違いがはっきりと出た音楽だと思います。

前奏は、かなり明るい雰囲気。

それは、第一幕の希望あふれる、若者たちの雰囲気そのもの。

躍動的な音楽が続く第一幕は、力強い合唱も多く、こういう楽しいラストってあるよね、

と思うような、若々しく明るい音楽。

 

そして、フルートの独奏で始まる第二幕は、一幕とは違う雰囲気。

この第二幕の、音楽は、音楽自体が語っているんですよね。

オーケストラの音楽だけで、ストーリーがわかってしまうんじゃないかと思える幕なのです。

退屈な生活から、抑えられない情熱的な恋の気持ち、そして逮捕されてしまう緊迫感までが、

非常に生き生きとした、または劇的な音楽で表現されていて、

セリフが無くても音楽の抑揚だけでわかりそうなくらいです。

 

それくらいプッチーニの音楽表現がすごい、そしてオケもよかったからなんでしょうね。

そういえばプッチーニってバレエ音楽は作ってないのですが、プッチーニの音楽にバレエをつけたら、

セリフが無くても、すごく筋書きがわかるんじゃないかな、なんて、今回思ってしまいました。

とにかく盛り上がった第二幕でした。

 

そして第三幕の前の間奏曲

今度は悲しげなバイオリンの独奏から。

これがまたうっとりするような、美しい曲。

そしてその悲しいイメージのまま、第三幕は、マノンが国外へ追放される船着場のシーンへ。

第三幕はとにかく全体的に美しい曲の幕。

 

プッチーニはハープをとても効果的に使うなあと、今回感じました。

ここぞという美しいところにハープがよく登場するんですよね。

 

そして、最終幕は、アメリカの荒野のシーン。

いきなりアメリカの荒野に行ってしまうのはやはり、話が走りすぎかな、とちょっと感じたのと、

4幕の約20分は、登場人物は、マノンとデ・グリュー二人だけ

舞台は何もない荒野だけ、

プッチーニの音楽なので、飽きることは無いのですが、でもやっぱりちょっと長いかなあと

思ってしまうのは私だけ?。

 

とはいえ、それぞれの幕が、幕ごとに音楽、シーンにメリハリがあって、

とりわけプッチーニファンというわけでは無いのですが

プッチーニは、やっぱりすごい!と改めて思いました。

そして、これがプッチーニの出世作になったというのもすごく頷けます。

観ていてとても引き込まれる音楽とストーリーでした。

 

演出

 

今回は、服装も舞台も、なんとなく想像通り、というような感じだったかなと思います。

衣装なども、時代に合っていると思いますし、現代風解釈ということもなく、

情景や、場所がよくわかる舞台でした。

 

第二幕のジェロンテの家は、椿姫の第二幕パリの郊外の家と同じセットかと。

第三幕のル・アーブルの港をどんな感じにするのか、と思っていましたが、

比較的簡単なセットで、船荷っぽい荷物がいくつか転がっていました。

そして、バックでは帆船がゆっくりと移動。

船着場の雰囲気が出ていました。

そして第四幕は荒野そのもの

砂漠のような舞台は、なんだか見ていて辛くなるほどでした。

 

原作では、アメリカでもいろいろあった末、死んでしまうのだけど、

オペラではいきなり荒野なので、島流しにあったんだと、そんな風に思えます。

今回のマノン・レスコーのマノンは、

男を破滅させる奔放な女性というより、ひたすらかわいそうな女性として描かれている、と感じました。

その分、最後に荒野で死んでしまうシーンは、涙を誘われました。

そもそもマノンはたったの18歳と言う設定なんですよね。

たった18歳で‥。

ところで、マノンを演じた、クリスティーネ・オポライスは40歳くらいのようですが、

若々しくて美しかったですね。

実年齢よりかなり若い役を演じても違和感を、覚えないのがオペラのいいところですね。

 

歌手について

 

今回は素晴らしい声がたくさん聞けました。

まず、タイトルロールのマノン役はクリスティーネ・オポライス。

プッチーニにぴったりの強い声は、鳴り響く管弦楽にも負けない声量。

マノン・レスコーのオーケストラは、すごく鳴るんですよね。

だから歌手の人達はワーグナー並みに、大変だと思います。

劇的な音楽シーンが多いので、それを飛び越えてホールに声を届かせるのは、並大抵の事ではないと思います。

そんな中、特に高音がよく通っていました。

第二幕のレースの歌は、強い中音も聞けて、よかったですね。

 

デ・グリュー役はグレゴリー・クンデというひと。

経歴を見ると、ロッシーニやドニゼッティ、ヴェルディなどイタリアオペラ中心なんですね。

なんとなくルネ・コロの声を思わせる歌唱で、ワーグナーもいけるんじゃない?と思わせるようなドラマティックな声でした。

個人的に、かなり好きな声質です。

すでに60歳を超えているようですが

見た目は若々しかったですね。

主役二人とも大きな拍手をもらっていました。

 

そして、ジェロンテ役はマウリツィオ・ムラーロという人。

とっても安定したバスの声で、こちらも大きな拍手。

この人が訴えたせいで、マノンは国外追放になってしまうので、オペラでは憎まれ役なのですが、

なんとなく憎めない風貌の人。

 

そして友人役のエドモント役のアレッサンドロ・リベラトーレもすばらしかったです。

第一幕の最初にでてくるのですが、若々しく朗々とした声はいかにもイタリアオペラの人

ロベルト・アラーニャに、風貌も似ているけど声も似ていました。

とってもよかったのだけど、主役の二人と、ジェロンテがよかったことと、

エドモントは第一幕しか出番がなかったのでちょっと影が薄くなった感じだったのかな。

この人にもブラーボを言いたいですね。

 

また、ちょっとしか出ていませんでしたが、第二幕の楽師たちが来るシーンの、ズボン役のメゾの女性

ハッとするような美しい声でした。

もう少し彼女の声も聞きたかったですね。

 

千秋楽

 

9月22日(土)は今回のローマ歌劇場公演の千秋楽ということで、とりわけ盛り上がったかなという気がします。

終わった後、オーケストラピットで、トロンボーンの人たちが、抱き合っていたのが見えて、印象的でした。

とても満足そうでしたね。

そして最後は、オーケストラも全員舞台に上がってのカーテンコール。

全員が上がるのは珍しいですよね。

 

会場からは惜しみない拍手がずっと続いて、

舞台には「日本のみなさまありがとう」の横断幕と

See you again」の大きな文字が‥。

引っ越し公演の千秋楽っていう感じで、感動もひとしお。

立って拍手している人がほとんどでした。

 

オペラって、同じ演目はなかなか見られないので、次にマノン・レスコーが見られるのかどうかもわかりません。

それだけに、今日素晴らしい公演を見る事ができて、本当によかったです。

たくさんの感動をありがとう!って言いたいですね。

そして、数年後に、またぜひローマ歌劇場の公演を見たいものです。

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