オペラってアリアが注目されがちですが、それだけだと退屈に感じることがありませんか。
私の場合、有名なアリアは楽しみの一つではありますがそれはほんの一部です。
オペラにはアリア以外にも注目すると楽しいところがたくさんあります。
専門家はおそらく音楽的な難しい見方をするのだと思うんですけど、
正直言って一般人には音楽理論とかそういうのってわからないです。
そこで、今回は音楽素人の私がオペラのどんな部分を楽しんでいるのかを書いてみます。
今回は日本で特によく上演されるヴェルディのオペラ「椿姫」について。
ここに書いてあるようなことにも注目して見てみれば、きっと椿姫は数倍楽しくなるんじゃないかと思います。
前奏曲はどんな意味がある?
会場が暗くなって指揮者が登場するとパチパチと拍手。
そのあと静かにか細いバイオリンの音で椿姫の前奏曲が始まります。
椿姫の前奏曲は、第三幕ヴィオレッタの死をイメージさせる音楽。
オペラの前奏曲って、本編から抜粋したものや、抜粋してないけどオペラのイメージを思わせるもの、またはそういうのは関係ないものなどいろいろです。
ヴェルディの場合ストーリーを想像させるような前奏曲が多いと思います。
私の場合、この椿姫の前奏曲を聞くと「ああ、ヴィオレッタは死んじゃうんだなあ」とまず思うわけです。
そして椿姫の特徴は、前奏曲が静かに終わるといきなりうって変わって華やかなサロンの場面が始まること。
これって原作通り回想になっていると思うんですよね。
前奏曲はヴィオレッタの死なのですが、オペラはさかのぼって華やかなサロンのところから始まるわけです。
椿姫の原作もヴィオレッタの死後の遺品の整理から始まって、さかのぼって華やかな頃からの話が進んでいきますからそれと同じような作りになっているんですよね。
そんな流れも感じながら見るとよりおもしろいと思います。
ヴィオレッタのサロンに注目
椿姫の最初はヴィオレッタのサロンですが、まず注目するのはヴィオレッタのサロンの様子。
ほとんどの椿姫の場合華やかなサロンになっていて、シャンデリアがあったり豪華なカーテンがあったり、
椅子やテーブルが置いてあったりなかったりそんな感じです。
オペラって演目によっては、現代解釈したりする不思議な演出もありますが、椿姫の場合はだいたいオーソドックスな演出が多いです。
舞台の豪華さというのはほぼチケットの値段に比例していて、高価なチケットの場合は舞台も華やかで、まあ普通の値段の場合はセットもそこそこです。
そこは値段相応なので、チケットが安いのに「なんだ、安っぽいセット!」と思ってはダメですよね。
それよりも、費用はあまりかけていないけどなんか雰囲気がいいなあとか、なんかちょっと工夫してあっておもしろいわなど
例えば柱の使い方や階段の使い方がおもしろいとか、カーテンの色がおしゃれだとか
長いテーブルを使っているとか、絨毯が豪華だとか、透けて見える壁を使って別の部屋をイメージさせているとか
そういうのを見て自分はこういうのが好きだななどと感じることができると、楽しいと思います。
椿姫の主役ヴィオレッタのどこに注目?
そして次に注目したいのがヴィオレッタの美しさと衣装。
椿姫っていうオペラは典型的なプリマドンナオペラです。
主役のヴィオレッタが目立ちまくりのオペラなんですね。
なのでやはりどんなヴィオレッタなのかは最も気になるところ。
人気の高級娼婦ですからやはり見た目も美しくあってもらいたいですし、
どんな衣装で登場するのかも注目したいです。
美しいけど舞台姿がなぜか映えないなんて言う人もいますし、逆の人もいたり、
そこらへんもおもしろいです。
ヴィオレッタが美しい衣装を着るのは、
- 第一幕の自分のサロン
- 第二幕のフローラのサロン
この二つのサロンで衣装の色を変えることもあったり、またはずっと同じこともありますが、
いずれにしても華やかなキャラクターなのでやはり衣装は気になりますので注目したいところです。
ローマ歌劇場の「椿姫」引っ越し公演の際は、確かヴァレンチノの衣装が話題になったりもしました。
そして最も注目したいのがヴィオレッタの声質。
ヴィオレッタという役はコロラトゥーラの技術も必要で、ドラマティックな部分も必要という難しさ求められる役です。
普通コロラトゥーラっていうのは、軽めの声の人が得意としているんですよね。
でも役柄的にヴィオレッタはあまり軽い声だと合わないと思います。
だから本当はとても大変な役って言われるんですよね。
声っていうのはそれぞれ好みがあると思いますから、ヴィオレッタの声がどんな声か、暗めの声なのか、明るめの声なのかヴィブラートがどんな感じか、
高い声がよく出る人なのか、低音も安定して出る人なのか、コロラトゥーラの技術はどうなのか
などに注目してみると楽しいと思います。
第一幕はヴィオレッタの見せどころ
椿姫はプリマドンナオペラですから、最初から最後までヴィオレッタは目立ちまくりなのですが、
特に歌唱でまず注目したいのが第一幕のアリアです。
第一幕はヴィオレッタの長くて難しいアリアの連続。
「ああ、そはかの人か」「花から花へ」と終わるかなと思うと難しいアリアが続くんですよね。
しかも通常後半から調子が出てくる歌手が多いのに、椿姫というオペラは第一幕が一番難しいんじゃないの?と思う大変さ。
そんな第一幕をどれだけ余裕を持って演じ歌えるかは、ヴィオレッタ役の腕の見せどころじゃないかと思います。
難なくこなしちゃう人もいれば、大丈夫かなと感じる人もいます。
ただ、難なくこなしちゃう人が感動を与えるかというとそれは必ずしもイコールではなく、そこがまた不思議でおもしろいところです。
迫真の演技が加わると、また別の感動があったりするんですよね。そこら辺も注目です。
アルフレッドは意外に目立たない
ヴィオレッタの恋人役アルフレードは椿姫では大事な役ではありますが、実際のところはすごく重要かというとそうでも無い気がしています。
テノールが歌うのですがテノールって小柄な人がどちらかと言うと多いです。
ましてかっこよくてある程度背が高く、歌も演技もうまいテノールってそうはなかなかいないわけです。
それでなくても椿姫はヴィオレッタが目立つオペラなので、大体ヴィオレッタの方により有名な歌手を持ってきていると思いますね。
そんなこともあり、アルフレードについては正直私の中でも注目度はそんなに高くないのですが、
たまに、おや?このアルフレード良いなあと思うときもあり、それはそれで発見で楽しいものです。
二番目に目立つのは父親ジェルモン
椿姫でヴィオレッタの次に目立つ役は父ジェルモンではないかと思います。
第二幕で現れるジェルモンは、冷たいのか、暖かいのか微妙な役柄。
結構言葉は冷たいけど父の愛を感じさせる雰囲気と歌が欲しいところです。
ジェルモン役は重要なのでヴィオレッタ同様上手で熟練の歌手が担当することが多いです。
いつもこの父役を見るたびに人となりがいまいちわからないなあと思うのは私だけなのかもしれませんが、
大抵の場合歌手の魅力でその辺の微妙さをカバーしている気がしています。
そんなジェルモンは品があって、威厳がある上手なバリトンさんにぜひ歌ってもらいたい役で、
そこら辺が注目したいところです。
ジェルモンが歌うアリア「プロヴァンスの海と陸」はやはり耳をすませて聴きたい名曲ですね。
第二幕の2場は展開が早いけどバレエを楽しむ
アルフレードの元を去ったヴィオレッタがサロンに戻る場面。
展開が早すぎて、はじめて見ると誰が誰なのかちょっと解りずらいんじゃないかと思いますが、
そこはまあ良いとして、2場は通常バレエが入ることが多いので、ここはバレエを楽しむところかなと。
ヴェルディのオペラにはバレエが入るので、私はそれも好きなところの一つです。
サロンに復活したヴィオレッタの衣装も注目したいところ。
第三幕は地味なので最初は退屈かも
第三幕は前奏曲で聞いたような静かな音楽。
瀕死のヴィオレッタのシーンは地味な部屋にベッドがあるのが大体のパターンですが、この第三幕は意外に長いです。
私の場合第三幕が楽しめるようになったのは比較的最近。
三幕には特に有名なアリアもないし、最初のうちは
「長いなあ、死にそうで死なないなあ、結核なのに感染しないのかなあ‥」
などと不届きも思ってました(笑)。
だからもしかしたらはじめて椿姫を見ると第三幕はちょっと我慢が必要かも。
ところが見れば見るほど三幕も良くなってくるんですよね。
そこら辺は何度も見る醍醐味だと思います。
瀕死のヴィオレッタは大体白い衣装を着て横たわって歌います。
横になって歌うって大変だと思うし、細くて高い声を出すので大変だと思います。
瀕死なのに力一杯高音を出したら変ですから。
なので、寝ながら高音の弱音をいかに余裕を持って出して、かつ演技できるかっていうのが
注目したいところですね。
こんな風に椿姫を見るときはアリアだけでなくちょっと細かく見てみるともっともっと楽しくなると思います。
ただし悪いところばかりを探すのは楽しくなくなるので、やめた方がいいと思います。
良いところあり、悪いところもありでないと実は楽しくないんですよね。
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