アイーダ新国立劇場2018.4月レビュー

2018年4月14日新国立劇場のシーズンオペラ「アイーダ」を観てきました。

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲のオペラです。

新国立劇場のアイーダは全部で7回の公演で、

シーズンオペラの中では、公演回数が最も多い演目なのですが、それでもほぼ満席の状態。

やはりアイーダは人気があるのですね。

日本にオペラ文化が着々と定着してきているのを感じます。

 

アイーダ第2幕の凱旋曲は、日本ではサッカーの応援曲としても有名です。

実は個人的な好みでいうと、ヴェルディの中で、それほど好きなオペラではありません。

しかも高額でS席が3万弱なんですよね(私はS席ではありませんが‥)。

 

それでも行こうと思ったのは、フランコ・ゼフィレッリの豪華な舞台を見ておこうかなと思ったからです。

ジャン・ピエール・ポネルの演出がなんとなく古いと感じるようになったように

長く続いたゼフィレッリの演出もそろそろ終わりかもしれない、とちょっと思ったんですよね。

ヴェルディとアイーダ

 

アイーダ演出について

 

やはり豪華な舞台は良いですね。

ヴェリズモオペラのような地味なオペラもありますが

オペラといえば、やはり王宮や、宮殿が舞台となる、豪華絢爛なイメージがあるので

これぞオペラという醍醐味はやはり時々味わいたいものです。

 

舞台はエジプトそのもの、

  • スフィンクスのような巨大なオブジェ
  • 巨大な柱の数々
  • 衣装もエジプト風
  • 髪型もエジプト風

という感じで、異国情緒満点の演出。

さすがに像は出てきませんでしたが、本物の白馬が2頭登場してました。

 

ただ、舞台に人とセットがとても多いため、せっかく馬が登場しても、インパクトは薄めだったかなという印象。

何もないところに登場したら、おっ!!本物の馬だ!

と思ったのでしょうが、そこは仕方ないところですかね。

 

あの、人の多さとと、オーケストラの音楽の中という特異な状況で、

小心者の馬がよくおとなしく登場したなあ、とは思います。

 

豪華なセットと大人数の中で、さらにインパクトを出せる動物となると

やはり像しかないのか、と思っちゃいまいした。(舞台の底が抜けそう‥)

 

アイーダは4幕で7場と場面設定がコロコロと良く変わります。

そんな中、巨大なスフィンクスや巨大な柱を動かしている大道具さんたち裏方さんは、本当にすごい!目を見張りますね。

 

また、くすんだような照明は古代エジプトの雰囲気を良く表している、と思いました。

 

ただ、新国立劇場は1800人程度が入る劇場で、横幅もそれほど大きくないので

さすがにあの柱の数は多すぎるかなと。

舞台には柱しかないというくらい柱が多い場面も‥。

入りきれず、無理やり入れた、という感じは否めませんでした。

 

また、全体として色と雰囲気のトーンが同じなので、

1幕1場の王宮の広間も、2場の巫女の神殿も、あまり違いを感じなかったのが正直なところ。

 

さて、今回はバレエが多い印象。

かなりバレエの人数も多めでした。

バレエのメインは第2幕ですが、1幕2場の巫女のシーンでもちょこっとバレエがあり、

また子供のバレエがとてもかわいかったですね。

 

2幕のバレエは見応えがありました。

オペラの中のバレエは、長時間のオペラで、ほっと一息できる、楽しい時間で大好きです。

 

今回アイーダを観て感じたのは、

ゼフィレッリの豪華絢爛な舞台は、やはりヴェローナなど野外ステージに合ってるのかもしれないということ。

というか、野外ステージを観てみたくなりましたね。

 

 

アイーダ歌手と音楽について

 

 

全体としてはとてもレベルの高い歌唱だったと思います。

タイトルロールのイム・セギョンという人は、はじめて見ましたが

小柄なのに強い声の人。

恋敵のアムネリスと比べても、アイーダの方が強い意志を感じる声質です。

 

特に高音がドラマティックに響く人ですね。

アイーダのような囚われのヒロインというより、強い意志を持った役が合いそうな気がします。

プッチーニやヴェリズモオペラが向いているんじゃないかと

聞きながら思っていました。

 

プッチーニのトスカが合っていそうですが、小柄なので、イメージとはちょっと違うかも。

蝶々夫人なら、アジア系の顔立ちからいってもぴったりしそうです。

彼女の声でカヴァレリア・ルスチカーナやマスネのナヴァラの娘なんかも観てみたいですね。

 

アイーダはエチオピアの王女役なので、肌を黒目にするのはわかるのですが、今回は照明が暗めのくすんだ照明だったので、

アイーダが黒い影のようにしか見えずちょっと残念。

もう少し表情も見たかったです。

 

ラダメスを歌ったのはマヴァリャーノフという人。

背が高いテノールで、見た目はぴったり。

その割に弱々しい感じがぬぐえませんでしたが、まだ若そうなので、これからもっと磨きがかかりそうで楽しみ。

 

アムネリスはエカテリーナ・セメンチュク。

非常にふくよかな声のメゾソプラノです。

安定した歌唱で、素晴らしかったですね。

 

第4幕のひたすらラダメスを慕う憐れにぴったりな感じがして、根本的に意地悪な役というより、

愛情を含んだ役が合っていそうな気がします。

ノルマのアダルジーザや、トリスタンとイゾルデのブランゲーネなんか向いていそう(と、いつもながら勝手な妄想をしています)。

 

日本人ではアモナズロに上江隼人さん、ランフィスに妻屋秀和さんが出ていて、安定した感じでした。

巫女の小林由佳さんの声が美しかったですね。

 

前奏曲から二人の昇天を予期させるような、高貴な音楽

アイーダは諸処の音楽はとても優美で美しく聞きごたえがあるにもかかわらず、

全体としてはあまり盛り上がらないオペラ。

 

台本の進行のせいなのかもしれませんが、全体としてセレモニー感をぬぐえないオペラだと思います。

敵国との戦いという劇的なストーリーでありながら音楽はゆったりと歩いているイメージで、

特に前半については、舞台が豪華な割に盛り上がりに欠ける、と見るたびに感じます。

 

最も盛り上がるのは3幕から4幕にかけてのやりとり、ここがオペラとしては一番の見どころでしょう。

最終の第4幕は、上下二段に別れる舞台が目を引きますが、

4幕前半の神官の問いかけがやたら長く、盛り上がりかけた雰囲気がサーッと引いてしまうような、感じがあるのですが、

アイーダにはあちこちそれと似たような雰囲気があります。

 

細かいところですが、2幕1場の後に舞台を変えるという時間上の都合があるとはいえ、

あそこのカーテンコールも不要だったかなと。

 

とはいえ、合唱が多く、アリアも美しく、さすがヴェルディで、聞きごたえ十分な音楽が盛りだくさんです。

 

アイーダというオペラは、音楽の美しさや舞台の豪華さもさることながら、厳かなセレモニーの面もあると思って、観るのがいいのかもしれません。

ヴェルディとアイーダ

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