2019年10月1日新国立劇場のオペラパレスで
チャイコフスキーの「エウゲニ・オネーギン」を見てきました。
新国立劇場の今期のオペラが開幕の初日!というわけで平日の夜でしたが、私も頑張って行ってきました。
秋を感じる演出。タチヤーナは美しかった。
三幕で休憩は一回でした
今回会場について階段を登ると、2階の変なところに受付があるし、やけに係りの人が多いしカメラがいると思っていたら
拍手とともに秋篠宮ご夫妻がいらっしゃいました。
座席は2階なので2階の人は席に行く時は毎度チェックされて、なかなか大変。(私は2階じゃないです)
さて、今回の初日のオペラを一言でいうなら、
チャイコフスキーの音楽はやはり素晴らしいということ、
すごく秋を感じる演出、そしてタチヤーナがやはり良かったです。
三幕7場のオペラですが、今回は第二幕を前後に分けての上演。なので休憩は1回でした。
それでもPM6:30〜PM9:40まででしたから、休憩一回でありがたかったかも。
帰りが遅くなっちゃうと翌日が辛いので‥(笑)。
かなり場面がかわるのに休憩が1回だけなので、舞台美術の人は大変なんじゃないかなあと思うのに、ほとんど音もせずに変わるのでさすがです。
すごいもんですね。
エウゲニ・オネーギン演出について
今回のエウゲニ・オネーギンはすごく秋を感じる演出でした。
オレンジ色の穏やかな光と、家には色づいた木がかかり、家の外ではハラハラと落ちる枯葉、
そして窓を開けると風が吹いて部屋に入ってくる木の葉。
うわあ、繊細な演出!と。
窓から風が入る時はちょっと扇風機の音が大きかったけど(笑)
とにかく秋‥秋‥秋
特に前半のメランコリックなイメージには秋はぴったりだなと、私は思いました。
舞台には全部を通して立派な柱が6本くらい立っていてこれがかなり豪華な柱。神殿とかにも使えそう。
この柱が最初はタチヤーナの家に使われていましたが、
私が持つタチヤーナの家(田舎にあって貧しくはないけど豪華でもない)のイメージよりちょっと豪華すぎる感じのお屋敷になっていましたが、
まあみすぼらしいより綺麗な方がいいかな。今回は場がよく変わるしずっと使うし。
演出で印象に残ったのは第二幕1場の最初と最後。
タチヤーナのお祝いで大勢が集まっているシーンは、映像が一時停止したような状態で全員がいろんなポーズでピタッと止まっていて、
薄い幕が開くと動き出すというもの。
これどこかの引っ越し公演で似たような演出を見ていいなあと思ったんですよね。
まるで絵画が動き出すようで、いいですよね。
最後も同様にピタッと止まって、幕がサーっと降りてましたね。(芸が細かいなあ)
決闘のシーンではいきなり舞台が冬景色に。
あれ?そんなに時が経っちゃったの?と思ったものの、
寒々とした決闘というシーンには合っているかなと、すぐに気にならなくなりました。
それより決闘の場の前の間奏曲が美しい。そのあとのレンスキーの歌もですが。
そうそう今回は字幕のところに「第二幕2場早朝の小川」とか「第三幕1場グレーミン公爵の大広間」
のようにどんな場面かというのを出してくれるのはわかりやすくてよかったです。
場が多いオペラの場合はやはりこういうのがあるとありがたいです。
今回ちょっと残念だったのはバレエがなかったこと。
チャイコフスキーだし、ここはバレエがやっぱり欲しいなあと思ってしまう。
踊りってちょっと回るだけでも、プロのバレリーナがやるのとそうじゃないのは歴然とわかるんですよね、
今回みたいに、バレエが入ってもいいところだけど無いというケースはよくあるにはあるんですけど
今回若干間が持たない感じがしたんですけどどうなんだろう。
今回は衣装も全員黒一色に着替えたり、髪型も凝っていた印象。
そうそう衣装が黒一色って珍しいと思いましたけど、これはタチヤーナの赤い衣装を目立たせるためだったんですかね。
エウゲニ・オネーギンの見どころの一つはタチヤーナの変身ぶりだと思うんですけど
最初にタチヤーナが登場したときすごく美しい人だったので
「お、これは変身が楽しみ!」とちょっとテンションが上がりましたね。
実際赤いドレスのタチヤーナは見事な変身ぶりでした。
もっともこのドレスは最後の場でさっさと脱いじゃうのでちょっともったいない感じがしたんですが、
プーシキンの原作では化粧もしていないタチヤーナという場面なので
素のままのタチヤーナに戻る感じで、ドレスを脱いだのかなと勝手に想像してました。
ところで、妹のオリガって自分のせいで決闘になるし、レンスキーが死んだときもリアクションがなくて
オペラではちょっとオリガが冷たく見えてしまうんですけど、
プーシキンの原作だと確かにレンスキーが死ぬシーンにオリガはいないんですよね、駆けよって泣き崩れることもないのはある意味原作に忠実かも。
もっと言えばやはりオペラだとオネーギンの人物像とか苦悩が見えにくいなと。
そもそもタイトルはオネーギンなのに、このオペラの主役って完全にタチヤーナですよね。
あと手紙のシーン、これやっぱり原作を読んだ方がいいと思うんですよね。
でないとただ、だらだら悩んでいる乙女に見えてしまわないかなと。
というわけでよければ当サイトの
プーシキンの原作エウゲニ・オネーギン(オペラを見る前に)もどうぞ。
エウゲニ・オネーギン歌手について
今回タチヤーナを演じたのはエフゲニア・ムラーヴェアというソプラノ歌手。
いきなりホールに美声が響き渡って
ウワッうまい!と。
まったく濁りのない声で、低い声もいいのですが特にいいのが高音。
ビロードのような声とはこのことかと。
まだかなり若いんじゃないかと思いますが、お下げ髪が似合う美しい人でした。
特に前半は手紙のシーンを中心に長丁場を歌い続けなければいけない役なんですよね。
でも余裕の声と演技でした。
手紙のシーンはオーケストラもとりわけも美しいです。
オネーギン役を演じたのはワシリー・ラデュークというバリトン歌手。
後半になるほど声が出ていましたが、前半はおとなしめ。レンスキーの方が目立ってました。
これは世の中を斜に見たような前半のオネーギンを表現するために、前半はおとなし目に歌ったの?と思うくらい、後半は別人のように情熱的な声になったものの、
正直なところ、私の中のオネーギンのイメージはもう少しひねくれたというか、きつい人物のイメージなので、それにしては今回は優しすぎるオネーギンと言う印象。
声もまろやかで、いかにも良い人っていう見た目と声。
パンフレットを買わなかったのでわかりませんが普段はどんな役をやっているんだろう。
それでもラストの場ではすごく熱演でした。
決闘で殺されるレンスキーを演じたのはパーヴェル・コルガーティンという人。
この人は、線は細い感じなんですけど、雰囲気がレンスキーにぴったり。
正直なところをいうと今回のオペラではこの人が最も役に合っていたのではないかと思うほどです。
決闘の前に歌う切ないアリアは心に染み入るものがあり、
そんなに簡単に命を落とさないで
と思わず思ったものの、でもプーシキン自身もなんども決闘して死んじゃったのよねと思ったり‥。
エウゲニ・オネーギンはタチヤーナの手紙のシーンが原文通りでとても有名なのですが
個人的にはこちらのレンスキーのアリアの方がコンパクトでわかりやすいし、良いんじゃないかと思っちゃいます。
こちらもプーシキンの詩が元になってますよね。
そして妹のオリガを演じたのは鳥木弥生さんというメゾソプラノの方。
レンスキーとの組み合わせがちょっと不思議な感じもしましたが、
タチヤーナとは異なる声質で(似たような声質だと姉妹がわかりにくいこともありますが)オリガらしい明るいキャラクターのイメージが出ていました。
出番は少ないけど存在感があったのはグレーミン公爵役のアレクセイ・ティホミーロフという人。
見た目も声もどっしりと落ち着いていて、
どうみてもオネーギンよりこっちの方が良いね、と思ってしまう雰囲気。
タチヤーナを思うアリアで大きな拍手が出ていました。パチパチ!
今回合唱も思ったより大勢でした。
実はこれを言うと怒られそうなのですが、
以前は合唱って新国立劇場の合唱より、藤原歌劇団の合唱の方がうまいんじゃないかって個人的に感じていたんですが、
今回エウゲニ・オネーギンは合唱がすごく良かったです。
なんでそう感じたのかはわかりませんけど
とにかく厚みがあってまろやかな声と迫力。オペラの合唱も好きなのでとてもよかったです。
今回エウゲニー・オネーギンをみてからプーシキンの原作をもう一度見たくなりました。
決闘のシーンと、それからラストがどうやって終わっていたかなと。
ラストは原作では、キスはもちろん、抱き合ったりもしないです。
タチヤーナは涙を流しつつも毅然としてるんですよね。
でも内心は彼が好き。
うーん、だからまあキスしてもいいかと。
プーシキンの原作を短いオペラにまとめるなんてとても難しいと思うのだけど、音楽の力ってそれができちゃうのね、とも思った今回の公演でした。
エウゲニ・オネーギン解説言葉が重要なオペラ(オペラディーヴァ)
エウゲニ・オネーギン原作プーシキンと比較オペラを見る前に(オペラディーヴァ)
もよければどーぞ。
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