今回は子供と一緒に行けるオペラ
フンパーディンク作曲
ヘンゼルとグレーテルの紹介です。
このオペラを一言でいうなら、「子供向けのストーリーで聴きやすいのに音楽的には高級なオペラ」だと思います。
だから大人もはまるオペラで
私もお気に入りのオペラの一つです。
ヘンゼルとグレーテルあらすじ
あらすじは、グリム童話のヘンゼルとグレーテルが元になっているのですが、
オペラのヘンゼルとグレーテルは、少し原作とは異なっています。
意地悪な継母ではなく実の母親で、
それほど怖いシーンもなく(魔女の演出にもよりますが)ハッピーエンドで
とってもいいお話です。
<簡単あらすじ>
貧しい家の兄妹ヘンゼルとグレーテルが仕事をさぼって遊んでいると
母親が帰ってきて激怒。
怒ってヘンゼルを追いかけるうちに、
大事なミルク入りのツボが壊れてしまい、母はさらに激怒。
兄妹は森に食料を取りに行かされます。
夜になってしまい森は怖いけど、妖精達に守られて一夜を明かす二人。
翌日、魔女のいるお菓子の家が現れヘンゼルは檻に閉じ込められてしまいますが
何とか逃げ出す二人。
心配した両親にも会えて、
お菓子の姿に変えさせられていた、他の子どもたちも元の姿に戻り
めでたしめでたし。
というあらすじのお話です。
男の子のヘンゼルはメゾソプラノが歌います。
女の子のグレーテルは軽くて高音の声のリリコ・レッジェーロが向いています。
ヘンゼルとグレーテルの成立と上演時間
さて、ヘンゼルとグレーテルはオペラにしては上演時間も短めです。
だから子供でも観ていられるということがあると思います。
あまり長いと子供は退屈してしまうかもしれませんから。
ヘンゼルとグレーテルは3幕まであり上演時間は
- 1幕・・30分
- 2幕・・30分
- 3幕・・40分
合計1時間40分ほどです。
1幕で70分くらいあるオペラはざらにあるので30分というのは短い方ですね。
そして、ヘンゼルとグレーテルのオペラの初演と場所は
- 成立(初演)・・1893年
- 場所・・・ドイツのヴァイマール劇場
- 原語・・・ドイツ語
です。
このオペラはクリスマスの頃よく上演されるのですが、
初演も12月23日でした。
初演もクリスマスシーズンの上演だったということです。
ヴァイマールというのはドイツの真ん中あたりです。
日本ではワイマールということが多いかなと思いますが
ワイマール憲法といえば歴史で習いましたよね。私の場合それくらいしか馴染みがないかなあ。
オペラの魅力と特徴
ストーリーもそうですが、オペラの主役が子供の兄弟で児童合唱団もでるので、
子供向けのオペラとされますが、
音楽的にはワーグナーのような音楽を思わせるオペラなんですよね。
だからこのオペラは大人にもたまらない魅力があります。
大人一人でも見に行きたい人がたくさんいると思いますね。
さて、オペラ歌手は20代ではとても若いほうで最も脂がのるのは40代からなどといわれます。
それだけ大変な世界だけど、息の長い世界でもあります。
そのため本来の物語の設定よりもかなり年のいった歌手が演じるのは
オペラの場合ごく普通のことです。
先日など、70歳を過ぎたエディタ・グルベローヴァというオペラ歌手が清純な20歳前後の乙女を演じていました。
これはさすがに珍しいことです。
でも彼女は若々しい声を保っていて、歌を聴いていると70歳を過ぎている事を忘れるんですよね。
オペラの場合、20歳以上若い役をこなすことは普通なのです。
ヘンゼルとグレーテルは子供の役なので、オペラ歌手としては最も若い役柄ではないかと思います。
さて、私は初めてこのオペラを聞いたときからこのオペラにはとても魅了されました。
別のブログで、
- ワーグナー
- リヒャルト・シュトラウス
- マーラー
は私にとって同じようなグループ、と書いたのですが、
もう一つこのグループに加えるとしたらこのフンパーディンクです。
作曲家のフンパーディンクはワーグナーの弟子だった人だけあって、時々まるでワーグナーを聴いているかのような錯覚になります。
うっとりするような美しい音楽が途切れる事なく、物語と同化して進んでいき、
そうかと思うとメリハリのある楽しい数え歌や魔女の歌も入り、
最初から最後まで誠に活き活きとした情景が続くオペラです。
ただの子供向けオペラじゃない!と。
日本でももっともっと有名になってほしいオペラの一つです。
聴きどころとおすすめの映像
では次に私がおすすめする、オペラ・ヘンゼルとグレーテルの聴きどころです。
1幕では冒頭で兄弟が口ずさんでいる民謡のような歌がなかなかおもしろいです。
そして、仕事に飽きて二人が遊びだすときに踊りながら歌う数え歌。
実は私はこの部分は終わった後もついつい口ずさんでしまうような旋律です。
楽しい歌なので、一度聴いたら忘れないです。
あと、1幕では人のいいお父さんが帰ってくるときの歌とお母さんとの二重唱も調子が良くて楽しい歌です。
2幕では眠りの妖精と、朝の精の透き通るような美しい旋律と歌が魅力です。
2幕は森の精がいろいろ出てきますよ。
3幕はクライマックス、魔女のお菓子の家のシーンです。
魔女がおまじないをするホークス、ポークス!というところ。怖いですねー。
子供たちが歌う合唱は、心が洗われる気持ちがしますね。
最後にも少し出てくるお祈りの曲は前奏曲、眠りのときにも出てきて
単独でもしばしば演奏される曲ですが、なんとも敬虔な気持ちになるフレーズで実は一番好きなところかもしれないです。
DVDで映像もいくつかでていますが、なんといってもおすすめなのは
ショルティ指揮のDVDです。
このDVDは
- ヘンゼル ブリギッテ・ファスベンダー
- グレーテル エディタ・グルベローヴァ
- お父さん ヘルマン・プライ
- 魔女 ユリナッチ
という信じられないような豪華メンバーです。
魔女役のユリナッチはこの時はかなり年を取っていますが、素晴らしいソプラノ歌手だった人です。
気品があり、声もメゾからソプラノまで広く出たので、
ズボン役のはらの騎士のオクタヴィアンやフィガロの結婚のケルビーノ(いずれもメゾソプラノ)を
あたりやくにしつつ、ばらの騎士の元帥婦人(ソプラノ)までやっていた人です。
またお父さん役のヘルマン・プライは、持って生まれた天性の美声のバリトン歌手で、
その素晴らしい声は、天からの授かりものとしか言えない声でした。
そしてグレーテルを演じたエディタ・グルベローヴァは今でも健在ですが、
世界のコロラトゥーラソプラノ歌手です。
海外、特にヨーロッパでは頻繁に上演されているオペラですが、
幼い頃こんな素晴らしい音楽に触れることができるなんて、いったいどんな音楽感性になるのかなと
うらやましい気がしますね。
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