年末が近くなるとやっぱりみたい
もしかしたら生で見ている回数は一番多いかも‥。それくらい好きな演目なんですよね。
- 2021年11月28日
- オペレッタ「こうもり」
- 作曲:ヨハン・シュトラウス
- 場所:日生劇場にて
日生劇場で今年もヨハン・シュトラウスのこうもりを見てきました。
4日間あるうちの最終日です。
こうもりは年末が近くなると見たくなるオペレッタ。
そして今回の日生劇場のこうもりは今までたくさん見た中で一番楽しかったかもって思います。
歌も抜群だったけど何より演技が絶妙で演出が最高!
場所も日生劇場でどこからもよく見えるし聞こえるしでオペレッタにはちょうどいいなといつも感じます。
こうもりって歌はいいけど演技はそれほどでもないっていう公演も正直いってあるんですけど今回は指の先まで登場人物になり切っていた感じでした。楽しかった〜!
日本でこんなに本格的な歌で楽しいオペレッタが楽しめるなんてって思います。たくさんの人にもこの感じをあじわってもらいたい、そんな気分でした。
今回アリアはドイツ語、セリフは日本語でした。どうかすると日本語のセリフの部分は字幕がないのに聞き取りにくいっていう時もあったりしたんですけど、今回はすごく聞き取りやすかったです。
演出も工夫してるなあとすごく感心しちゃいました。
演出について
幕は最初から上がっていて、舞台全体には白い布がかぶせてある状態。
序曲が終わると布はとられて、レトロ感漂う椅子やクローゼットが置かれていたんですけど布があるだけで何があるのかなって興味津々になるものですね。
家具は比較的雑然と置かれている感じでしたけど、基本的には舞台は3幕までそのまま。
2幕になると家具が斜めになったり倒れたりしているのはパーティのはちゃめちゃ感を出しているのかなと。
3幕の刑務所まで同じセットだったのはちょっと意外でしたけど、
でも壁が向こう側に倒れたり床が空いたり大きなシャンデリアまで現れたりと驚きの趣向が次から次へとあって目にも楽しませてもらいました。
ここまでしてくれるの!っていう感じでした。
アイゼンシュタインがアデーレのお尻を触るシーンは今回はなかったけど、あれもお決まりではなく演出の一つにすぎなかったのかな。
ウォッカのシーンではピストルが出てきて「パン!」となった時の音は結構ほんとにおっきくてびっくりでした(笑)。そのあとウォッカの瓶はやっぱり投げてましたね。
シャンパンのシーンでは何本もほんとにポンポンと開けて(まさか本当のシャンパンではないと思うけど)グラスについでいたから、ほんとに開けてるなあとちょっとびっくり。
そして今回一番感心しちゃったことの一つが本来バレエが入るところです。
今回3幕のところを休憩1回にしていたんですけど、「え、ここで休憩なの?」っていう不思議な箇所だったんですよね。
そして後半になると、まだ会場が明るいうちにさらっといつの間にか始まった音楽。
後半の冒頭は本当ならバレエが入るところなんですよね。
バレエの人が踊らないときはなんとなくこのシーンって場が持たない感じがよくあったりしたのですが、
それが今回は「まだ正式には始まってないよ、聞いても聞かなくてもいいよ」っていうラフな感じが醸し出されていて(実際会場ではまだ係の人が案内したりしてました)、バレエのシーンがさらりと過ぎていきました。
おかげでこのシーンになんとなくモヤモヤすることもなくこういうやり方もあるのね、なるほどー!。と私はすごく感心しちゃったのでした。これすごい工夫だなって思います。
その代わりというか2幕と3幕の間は切れ目なく過ぎていき、そこら辺もいろいろ演出でできるのねと今回は何かと演出とか進行に感心することしきりでした。
服装についてはロザリンデがすごくよかったです。緑の服に赤い髪とマスクは変装が完璧!
ロザリンデって大体はマスクをつけるだけで明らかにわかる変装が多いんですけど、どう見てもロザリンデとはわからないし妖艶で異国感が漂う感じがすごくいいなと。
途中仮面をはずしたりまたつけたりとそれも夫に見られないようにきめ細かい演出。演出がほんと細かいところまで考えられてるなあと今回感じました。
今回登場人物のキャラクターがそれぞれすごく立っていてそれも楽しかった理由の一つだと思うんですけど、中でも個人的にすごくおもしろかったのがオルロフスキーのキャラ。
オルロフスキーってどんな人がやるのかはいつもこのオペレッタの楽しみの一つなんですけど、男性がやっても女性がやっても大体はむっつりどっしり構えているタイプがほとんど。
ところが今回のオルロフスキーは対人恐怖症なのか空気読めない系なのか(笑)とにかく挙動不審すぎて笑えました。
こんなオルロフスキーは初めて。いちいち所作がおもしろくて私はずっと目で追っちゃいました。こんなオルロフスキーをもっと見たかったーっていう感じ。
歌手について
こうもりに限らずオペラって公演によって光る人っていると思うんですけど、今回のこうもりはキャラが立っていて光っている人が多かったです。
中でも良かったのがやっぱりアイゼンシュタイン役の小林啓倫さん。
アイゼンシュタインがどんな感じかで「こうもり」の雰囲気ってかなり変わるんじゃないかと私は思っているんですよね。硬い感じだとまじめ系の「こうもり」になり、おちゃらけた感じだと笑いが主の「こうもり」かなと。
で、歌も大事だけど演技がうまくてなんか憎めないおじさんだといいなあっていう勝手な希望があります。でまさに今回の小林啓倫さんは憎めないかわいいおじさんキャラでした。
最初出てきたときはなんか堅物感?があってまじめ系かなあ‥って思ったんですけど、それが違って演技が絶妙、そして声も最高!。両方揃ってる人ってなかなかいないと思うんですけど。とにかくすごく楽しい雰囲気になってよかったです。
そして妻のロザリンデを歌ったのは木下美穂子さん。
この人は2018年のローエングリンでエルザ役で見て以来。
ワーグナーを歌うくらいなのでさすがの歌唱力、そして見せ場で大好きなチャールダーシュもすごく良かったです。
アデーレを歌ったのは雨笠佳奈さんというソプラノ。この人は初めてだったんですけどすごく細身なのに声が出ていて、森久美子さんも言ってたけどいまは細くても声が出る人が多いですよね。
アデーレって大体いつも演技と歌が上手い人がやるイメージがありますが今回もそんな感じでした。
そして挙動不審な(笑)オルロフスキーを歌ったのは成田伊美さん。声も良かったけどこの人のおかしな演技には一人でクスクス受けてました。どういう人になるように演技で言われたのかちょっと聞きたい感じです。
アルフレードを歌ったのは金山京介さん。この人は少し前に魔笛のタミーノ、その前には後宮からの逃走のベルモンテ見たかと。
タミーノではまじめな青年だったけど今回はコミカルな役。こちらも合ってるのねと思いました。
1幕でのセリフ「出ていくために入ってきたんじゃない」は笑えたし、アルフレードの能天気な感じが出ておもしろかったです。
個人的にはアルフレードがさらっと別のオペラの一節を歌うのが、何を歌うのかなって楽しみの一つなので、それが無かったのはちょっと寂しかったかも‥まいっか。
そして刑務所長フランクを歌ったのは杉浦隆大さん。
3幕で刑務所に戻ってくるシーンはかなり今回なくなっていましたけど、パーティでアイゼンシュタインとフランス人として変な会話をするところはこうもりのお楽しみの一つで今回も笑わせてもらいました。
あそこはもっと聞きたいなあといつも思うんですよね。(まあコントじゃないんだからあまり時間割けないですよね笑)
そして友人ファルケを歌ったのは加耒徹さん。今回の仕掛け役感がでていて見た目も演技もイメージぴったりの雰囲気でした。
そして3幕で看守役を演じたのが森久美子さん。看守が森久美子さんって言うのはすごくおもしろいやり方だなって思いました。
一人であれだけ喋って場を盛り上げるのはさすがです。
最初モンセラートが一瞬聞き取れなくて誰のことを言っているのかわからなかったんですけど、「あ、モンセラート・カヴァリエね」と。生では見たことないけど映像では見たことがあります。カレーラスとの公演だったような。
日本に来たんですよねえ。トスカのラストでジャンプはおもしろかった。
指揮者とかコンサートマスターの人にも話しかけてあれで会場との距離がグッと縮まったのかなと。やっぱり一体感っていいですよね。
最後は一瞬だけん?終わったよね?っていう間を感じたけど、それでも盛大な拍手拍手。
そして最後はたくさんの人が手を振っていました。あんなに手を振っている人を見たのははじめてです。楽しかったからですよね。楽しいオペレッタが見られました。よかったよかった!。
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