2018.3.10ホフマン物語・新国立劇場にて

新国立劇場のホフマン物語をみてきました。

演出といい歌手といい、新国立劇場の意気込みが諸所に感じられる公演でした。

おもしろかったです。

ホフマン物語は、実は私は映画版オペラでしかみたことがなく、劇場で生で見るのは今回がはじめてでした。

生で聴くオッフェンバックの音楽はやはり美しくて、軽妙で、リズミカル、なんとも魅力的な音楽でした。

 

ホフマン物語は舟歌が一般的には最も有名だと思いますが、私にとっては

記憶で印象に残っていたのは、クラインザッハの歌と人形オランピアの歌でした。

今回生でそれらが見られてまずは嬉しかったですね。

 

最近のオペラの演出は光を効果的に使う傾向がありますが、今回はそれに加え、蛍光塗料の演出が目を引きました。

黄色く浮き立つような色は、物語の不思議さ、ファンタジーを感じましたがファンタジーっぽさと怖さがある内容のオペラなのでその意図だったんでしょうか。

 

このオペラはオッフェンバッハが作った唯一の正式なオペラと言われています。

オッフェンバッハの作品はほとんどオペレッタなんですよね。中でも最も有名なのは天国と地獄です。

ホフマン物語は、全体を通して不思議感が漂っていて

私は観ているとどうしてもこれは風刺?喜劇?何だろう?と考えてしまったんですよね。

そんな不思議感があるオペラでした。

 

若干気になったのは、アリアのたびに音楽が止まる感じが強いので、その度に拍手が入っていましたが、

アリアが多いので、結果として度々拍手が入ることに‥。

さすがに流れがブチブチと切れる感じがあり、ちょっと残念な気がしました。

ここは拍手をするべきなのかしないべきなのか、珍しく迷った箇所もありました。

 

客席の他の人も似たように感じたのか、次第に拍手もまばらになっていきましたね。

 

こんなちょっとしたことに気を取られてしまうのは、もったいない感じがしました。

 

ホフマン物語はオッフェンバックを完成させる前に亡くなっているんですよね。

もし彼自身がちゃんと最後まで作っていたら、こんなにぶつ切りにならず、もっと音楽が繋がるようになっていたのだろうか、

などと考えてしまいました。

 

さて、今回の新国立劇場の上演でやはり秀逸だったのはオランピア役の安井陽子さんではないかと思います。

オランピアはかなり難しく高音が随所に出てくるので、大変な役だと思いますが、

衣装も手伝って、人形っぽい演技も完璧。

すごく良かったです。

安井さんは魔笛の夜の女王も得意としているようで、なるほどですね。

 

ホフマン役はディミトリー・コルチャックというテノール歌手。

経歴を見ると名だたるオペラハウスの経験があるので、

今最もあぶらがのった歌手なんでしょうね。

 

ホフマンは高音もあり、なかなか大変な役ですが、美しい声が聞けました。

コルチャックはロシアの人ですが、あまりロシアもののオペラはやっていないようで、

確かに声を聞く限りイタリアオペラにぴったりの感じです。

 

アルマヴィーア公爵や、ネモリーノなどをやっていますが、

まだ若いですしそのうちヴェルディの様なオペラに行くのかな、とちょっと思わせる声でしたね。

 

リンドルフ他4役を担当したトマス・コ二エチュニーという人は声的にバスだと思ったのですが、

役柄はバリトンでした。

雷鳴が轟くような声なので、ヴォータンが合いそうだなあなんて思ってましたが、後で見たら、すでにヴォータンをされていました。やはり‥いい声ですねえ。

新国立劇場はどういうルートがあるのか知りませんが、かなりすごい!と思う歌手達をよんでくれてるので、いつも楽しみです。

 

さて、今回の上演は

  • オランピア
  • アントニア
  • ジュリエッタ
  • ステッラ

別々のソプラノ歌手が担当していましたが、以前見た映像では同じ人が一人で全部歌っていましたね。

その時の演出で違うのでしょう。

 

今回娼婦役のジュリエッタを担当していたのは、横山恵子さんというドラマティックな声の方でした。

経歴を見るとブリュンヒルデを歌っているくらいですから、かなりの方なんですね。

その声量はさすがにすごかったです。他のオペラでもぜひ見てみたいです。

 

ずっと以前にホフマン物語を見た時の記憶に、アントニアの章の記憶が無かったのですが、

とりたてて有名な曲も無く、どうしても印象が薄くなるのを、今回も感じました。

 

加えてアントニアを担当した砂川涼子さんは横山さんのようなドラマティカルな声ではないし

また、アントニアはそういう役柄でもないので、どうしても印象が薄くなってしまうのは仕方ないんですかね。

アントニアの役柄には合っていたと思うのですが‥。

 

今回見ていて、オッフェンバックが生きていたら歌手の声のイメージはどんなだったんだろうと考えてしまいました。

 

今回ジュリエッタは迫力があり素晴らしい声でしたが、オッフェンバックが望んだのもこういうジュリエッタだったのかなと、ちょっと思いました。

4人のソプラノの役を4人で分けて歌う場合、それぞれにどんなソプラノの声を持ってくるかは、難しい選択かもしれない

とそんなことを感じた公演でした。

 

今回の演出では最後にホフマンがピストル自殺をするというもの。

そのシーンでも舟歌が美しく流れていて、なんともシュールでしたね。

 

そうそう、舞台に3つの扉があり、それぞれの扉にはドンジョバンニの役柄である

  • ドンナ・アンナ
  • ドンナ・エルヴィラ
  • ツェルリーナ

の札がかかっていましたね。途中でドンナ・アンナ→ステッラに変わっていましたが

あれは物語の中でステッラがドンナ・アンナ役に出演していたと言うことを表していたのかなと。

 

あと、最後の合唱が素晴らしかったです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です