アルチーナ・ヘンデル2018.5.19鑑賞レビュー

ヘンデルの「アルチーナ」というちょっと珍しいバロックオペラを見てきました。

場所は都立大学駅近くにあるめぐろパーシモンホールというところです。

めぐろパーシモンホールは1200席のこじんまりした劇場で、なかなか見やすい劇場でした。

それにしてもヘンデルはやはりいいです。

 

アルチーナ演出

 

舞台はアルチーナの魔法の島。アルチーナというのは魔法使いの名前です。

白を基調にした比較的シンプル舞台は四角い島をイメージした舞台演出

数カ所に階段や通路があり、四方から行き来でき効果的に使っていました。

冒頭はアルチーナとルッジェーロの愛し合う様子が影で映し出される演出。

 

アルチーナの大きなかぶり物は魔法使いっぽくいい感じなのですが、ルッジェーロが小柄でちょっと子供に見えてしまったかも。

それでも雰囲気はよく出ていました。

ルッジェーロを救いに来たブラダマンテとメリッソが、オーケストラピットから舞台によじ登ってくることで

アルチーナの島に到着した感じをうまく演出。

 

バレエはどうするのかなと思いましたが、さすがにバレエは無かったですね。

合唱もオーケストラピットに入っての出演。

これもありですね。

合唱は最初と最後しかありませんし。

 

最後に、変わった形のシャンデリアが下がってきましたが、あれは魔法の壺をイメージしていたんでしょうか。

全体にはシンプルで見やすい演出だったと思います。

 

本来3幕ですが、時間短縮のためか、2幕の途中でわけて前半、後半の2部。

休憩は一回でした。それでも夕方5時から始まって終わったのは8時過ぎでした。

 

 

歌手と演奏について

 

まず、やはりバロックオペラは管弦楽の演奏の音が小さいので歌手の歌が聞きやすいです。

そしてやはりヘンデルはすごいです。

音楽が多彩

楽器の使い方も多彩で

なので全く飽きない音楽と歌と演奏

 

今回は古楽器も使っていて、珍しい演奏の音が聞こえてくる度に上の方からオーケストラピットをのぞいてしまいました。

リコーダーの演奏もあったかと。

リコーダーって小学生とかも吹くイメージですが、これが意外にいい音色だなあと感じちゃいました。

 

 

歌手の方は、タイトルロールのアルチーナを演じたのが梶田真未さんというソプラノ歌手。

前半は人形のようだったアルチーナが、ルッジェーロを失うことで人間味を帯びてきて、

悶え、苦しみ、悩む様子がよく出ていました。

とても安定した強い声で安心して聞けます。

前半最後の長いアリアが圧巻で、続く後半もアルチーナはどんどん人間くさくなりなかなか情熱的で見応えがありました。

 

アルチーナの虜になってしまったルッジェーロは、ヘンデルの時代ならカストラートがやっていたかも。

カストラートとカウンターテナー

英雄役ではありませんが騎士の役ですし、ルッジェーロのアリアはなかなかに華やかでした。

今回担当したのはメゾソプラノの花房英里子さんという歌手。

 

小柄な体躯にもかかわらず、この人の声はとても魅力的。

レチタティーヴォの部分もよく響いていました。

ただ、後半最初のアリアがヘンデルらしいとても美しい曲だったのですが、

繊細さを追求したあまりなのか、声が上の方の客席にはあまり聞こえてこなかったのだけ残念でした。

後半のラッパ?と掛け合わせでホッホッ!と歌うアリアがおもしろい曲。

音楽のスパイスといったところかな、印象的でしたね。

 

今回もっとも目を引いたのがアルチーナの妹役のモルガーナを演じた宮地江奈さんというソプラノ歌手。

メリハリのある声で、華があり、今後が楽しみ。弱音もとてもよく響いていました。

チェロとの掛け合いのアリアが特によかったです。

 

ヘンデルは楽器の使い方が多彩で、いろんな演奏の音がよく聞こえてくるんですよね。

それもこのオペラの楽しさかもしれません。

 

男装してルッジェーロを救いに行く恋人ブラダマンテ役には郷家暁子さんというメゾソプラノ歌手。

ルッジェーロよりさらに落ち着いた声質の人で最後の三重唱はきれいでした。

 

このオペラの主要登場人物はほとんど女性なのですが、唯一テノールが担当するのがアルチーナの妹に思いをよせる、オロンテ。

オロンテは後半にいきなり難しいアリアがあり、これもなかなかに大変そうな役。

 

アルチーナというオペラは、合唱が最初と最後に出てくる以外は、ほとんどアリア(独唱)とレチタティーヴォで構成されており、最後にようやく三重唱が出てきます。

それだけに三重唱はとても新鮮に思えました。

なぜ二重唱が無いのかはわかりませんが‥。

 

それにしても改めて感じたのは、ヘンデルのアリアはかなり難しそうということ。

でも今回主要な出演者は難しいアリアを素晴らしくこなしていたように思います。

 

ヘンデルの曲はやはり美しいです。

静かな曲も、怒りの曲も、情熱の曲も魔術のように繰り出され、やはりヘンデルという人は天才だったのかなと。

 

 

また、このところロマン派のオペラを見る機会が多かったので、久しぶりに見たヘンデルはなんとなくほっとするオペラでもありました。

レチタティーヴォを聞いて、字幕を見ていれば筋はわかりますし、アリアになるタイミングもよーくわかります。

どんな感情をアリアで表現するのかもはっきりとわかるので、なんというか安心して見ていられるということでしょうか。

 

アリアの度にパチパチと拍手するところは途切れる感じも若干ありますが、それも含めてバロックオペラも楽しいものです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です