オペラシティでセミステージ形式
2020年11月3日、初台のオペラシティでヘンデルのリナルドを見てきました。
管弦楽はバッハ・コレギウム・ジャパン。指揮とチェンバロは鈴木優人さんです。
リナルドはちょうど1年ほど前にも北とぴあで見たので、まだ記憶に新しい感じでした。
会場の入り口で検温があり、消毒液を手にかけてもらい、席と名前を紙に書いて提出し、チケットは自分で箱にいれました。
座席は一つおきではなく普通に戻っていましたが、前2列は使用しないようになっていました。
あと終わったら入り口が混まないように指示に従って順次出るというのが新型コロナ以来のやり方になってますね。
今回はオペラシティでの公演ということでオーケストラピットはないのですが、舞台の奥に管弦楽、前に簡単な舞台というセミステージ形式でした。
RPGという設定?
最初はわからなかったのですが、今回のリナルドはRPGの世界という設定だったみたいです。
ゲームのリモコンを持っている男性(リナルド役)が最初からいたので、現代解釈なのかな?と思いながら見ていたのですが、
ずいぶん後(3幕くらい)になってからですけど、ゲームの設定なんだということがようやくわかりました(遅いですよね‥)
RのTシャツを着ていたのもそういうことなのねと。
そして思えば服装も、特にリナルドのマントやゴッフレート達の服装がいかにもゲームの戦士っぽかったです。
ちなみにリナルドのTシャツのRをよく見たら靴を履いてました(かわいい!)。
現代解釈のオペラはしばしばあるけどさすがにゲームっていう解釈は初めてだったかも。
しかもバロックにこれを当てはめるとはちょっとびっくりでした。
でも考えてみればおとぎ話みたいなストーリーでゲームっぽいといえばそうなんだなと。
後半に行くほどおもしろくなる
バロックオペラって全部そういうわけではないと思うんですけど後半に行くほどおもしろくなると思うんですよね。
リナルドもそうで、1幕は結構長いし悪いけどちょっと退屈で、初めて見たときは、こんな感じで2幕3幕まで続くんだろうか‥みるのやめちゃおうかな、と思ったくらいでした。
でも2幕目からおもしろくなってくるんですよね。
それで、終わってみるとすごく満足してるっていうそんな流れの気がしてます。
今回も第一幕は(申し訳ないけど)アリア長いなあ、終わりかな?‥違った、繰り返しかあ‥なんてちょっと思いつつ、
でも2幕からおもしろくなるはずだから見よう!っていう小さな葛藤がありました(笑)。
アリアが終わりかと思うと終わらないので、拍手のタイミングがつかみにくく、結局拍手をいちいちしなくなるっていうそんな雰囲気もあったと思います。
それでもすごく良かったときはそういうのも関係なく自然に拍手が出てましたね。
16時から始まって終わったら20時。4時間かかったのでやはり長いことは長いのですが、いい公演だったので長さは結果としては気にならなかったです。
1幕のアリアの繰り返しとか減らせないのかなあ(こんなこと言ったら怒られるか‥)
リナルド・人形を使った演出
リナルドの見どころの一つはアルミーダがアルミレーナに変身してリナルドを誘惑するときにどんな風にするかというのがあると思うんですけど
今回最初から本人たちに似た人形を登場させていてそれをうまく利用していました。
だから人形があるのねと、このシーンで納得。
あとバロックって雷の音がよく出てくる気がします。
リナルドもアルミーダの登場のときとか何度か鳴ってましたけど、あの音独特ですよね。薄い金属板みたいなもの。
ハッとするので結構効果あるなあと感じます。ちょっと眠いときも目が覚めます(笑)
途中観客も一緒に手拍子をするところがありました。私はああいう参加型が好きなので良かったです。
管弦楽ですが、チェンバロ2台の他古楽器が使われていましたが、長いオペラで楽器が少ないからそれぞれの音が目立ってるし、ずっと演奏し続けなんだなと今回見ていて気付きました。
中でもチェロはほぼ引き続けだったんじゃないかと。バロックのチェロって大変なのかなとちょっと思いました。
歌手について
リナルド役は藤木大地さんというカウンターテナー。
この方は10月新国立劇場の夏の夜の夢でオーベロンも演じてました。
ウィーン国立歌劇場にも出演されたというプロフィールを見てびっくり。すごいですねえ。
Tシャツ姿はごく普通のどこにでもいる男性。でも声をだすとえ?!っていうすごい声です。
カウンターテナーって女性のような声を出すだけですごいなと思っちゃうのですが、この人の場合太くてツヤがあって安定度がある別格の感じです。
しゃべる声から違うんですよね。オルフォオとエウリディーチェとかもやってるのかな。聞いてみたい。
リナルドの恋人役は森麻季さん。変わらない美しさで人柄もいいのかなというのがにじみ出てる方ですよね。
衣装も舞台ごとに変えてくれてとても華やか。
私は森麻季さんって弱音より強い声が実は魅力的じゃないかと勝手に思っていて、時々身体から出てくるハッとするような強い声がもっと聞きたい!って思うんですけど割とそれが少ないんですよね。すぐに弱くなっちゃう。
それで、なんか加減してるのかなあとか、若干のもどかしさをいつも感じてしまうのです。
すごく丁寧に弱音を歌っているのがわかるんですけど、もっともっと強い声が出るんじゃないのかなあ、そっちの方が聞きたいなと。(私だけそう思うのかもですが‥)
あと今回すごく良かったのがアルミーダ役の中江早希さん。
この方は以前調布だったかなの劇場支配人で森谷真里さんと一緒にオペラ歌手役をされていたと思います。
あのときの公演はなぜかすごく印象に残っていてあのオペラをもう一度聞きたいと思っているのですがなかなか機会がなくています。
あのときも明るいキャラクターでよかったけど、今回はさらにパワーアップして、ちょっと別人かと思うほど。
声が安定してすごく通るし演技もやはり上手でとてもよかった!
リナルドはアルミーダがすごく重要な役だと思うので、どんな感じかなというのが一番気になっていました。
ろうそくを引き抜いたのと、お酒の瓶もおもしろかったです。
素晴らしい声と演技にパチパチ!
ゴッフレート役はカウンターテナーの久保法之さん。
ゴッフレートの第3幕のアリアは心が洗われるような曲で、リナルドの中で私が一番好きな曲かもって思ったくらい良かったです。
エウスタツィオを演じたのは青木洋也さんというこちらもカウンターテナー。
終始望遠鏡を持ち歩いていて、それが彼のアイテムなんですね。今回も3人のカウンターテナーの声が聞けました。
第二幕ではアルガンテ役で初めて低い声が登場。第一幕は全員高音なので、なんとなくホッとする気もします。
アルガンテ役はバリトンの大西宇宙さん。ちょっと気弱ないい人感が声と雰囲気で出ていたアルガンテでした。
経歴を見るとエウゲニー・オネーギンとか道化師のシルヴィオとか書いてありましたけど、見た目と声でなんとなく納得。オネーギンは特に合いそう。
後半はパッパラパー!っていう感じの勇壮な曲、そして合唱もあり、バロックらしい展開かなと。
最後は大きな拍手が長く続いていました。ヘンデルってやっぱりいいです!。
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