日生劇場でベッリーニの「カプレーティとモンテッキ」を見てきました。
生の舞台でみるのは初めて。しかも好きなベッリーニということでかなり楽しみにしていました。
今回のカプレーティとモンテッキの感想をひとことでいうならベッリーニの旋律はもちろんのこと緩急が絶妙なんだなと気づいたこと、それとロメオ役の加藤のぞみさんがとても素晴らしかったのが印象的でした。
ベッリーニのオペラが見られた
- カプレーティとモンテッキ
- 2021年11月14日
- 場所:日生劇場にて
- 作曲:ベッリーニ
ベッリーニのオペラって最近は比較的見られるようになりましたけど、なかなか生の舞台ってなかったんですよね。
さて会場は、緊急事態宣言中ではありませんが、引き続き検温機があり、座席は一列目は使わず、オーケストラピットとの敷居も少し高くなったのかなと感じました。
売店や喫茶はまだやっていなかったです。
休憩時間には延々と感染防止のためのアナウンスが流れていましたが、本来楽しいはずの公演なので
早くそういうのがなくなるといいですね。
とはいえ日生劇場って見やすいから好きなんですよね。今回のオペラはパンフレット付き。そういうのもありがたいです。
パンフレットは長くないので読みやすいのとカヴァレッタなどのオペラ用語の説明をつけてくれていたのでわかりやすかったです。
演出など
テンポよくはじまった前奏曲から幕が上がると大きな剣がでてきましたが、すぐに舞台は変わってカペッリオの館に。
この大きな剣は何度か出てくるのですが、真ん中から割れると小さめの剣に見えて、二つ合わさると大きな剣に見えておもしろい演出でした。
舞台上の人たちは動きが止まった状態から始まり、1幕の最後にはまたピタッと止まってまるで大きな絵画の様でした。
この1幕終わりでは照明が赤く変わり、戦いが止まった状態。ここはなんだかかっこよかったですねー。
また時々舞台の中央は鏡のようだけど向こう側が透けて見える薄い膜も使用されていましたが、これは仮死状態のジュリエットが映し出されるときが特に効果的に思えました。
そして今回個人的にとても良かったのが衣装です。
全体に落ち着いて時代を感じさせる衣装。
デバルトは肩が戦士風で斜めにかけた赤が印象的なかっこいい衣装。恋敵としてはかっこよすぎる感じですが、デバルトは憎めないキャラなのでぴったり。
また着ている山本耕平さんがとっても似合っていました。
ジュリエットもかつての映画を思い出す髪型と衣装。それに父のカペッリオも風格あるかっこいい衣装。
しいて言えば主役のロメオがちょっと地味すぎて残念な気も。
変装しているシーンも変装がよくわからなかったのでデバルト達がしばらく気づいていないことがちょっとわかりにくかったかなと。
それにしても変装したロメオが見つかるシーンは緊迫感がありました。
また、最後の最後に「誰が殺した」「お前が殺した」と父は言われてしまうんですよね。
確かにそうだけど、息子を殺した相手から娘をくれ、息子にしてくれといわれてもなあと前半では思ってしまいました…。
あと瀕死のロメオが抱いてほしいと言っているのになかなか近くに行かないジュリエットにはちょっと「早く行ってあげてー!」と思ってしまいました。
いずれにしてもやっぱりこのお話は映画にしてもオペラになってもおもしろいです。
歌手について
なんといっても今回印象的だったのはやはりロメオ役の加藤のぞみさん。
最初のアリアからとってもすばらしかったけど、進むにつれてさらによくなって、情感がこもった声と演技は最高でした。
ジュリエットとの二重唱をきいてみて思ったのは、恋人同士はテノールとソプラノの二重唱が多いけど、女性同士で音域が近いからかやっぱり美しいということ。女性のロメオ役ありだなあとすごく思いました。
それにしてもロメオも結構高い声が求められてるなあと。やっぱり大変な役の気がしました。
恋敵のデバルトを歌ったのは山本耕平さん。この方は以前同じく日生劇場の「天国と地獄」のオルフェ役で見て以来。
そのときもバリトンかなとおもうテノールだって思ったんですけど今回そんな声がデバルトにぴったり。
恋敵ってバリトンが歌うイメージがあるんですけど、このオペラではロメオがメゾで恋敵がテノールなんですよね。
意志の強くてロメオに負けないくらいジュリエットに一途なデバルトに見た目も声もドンピシャでした。
ジュリエットが死んでしまったと知ったときのロメオとデバルトの様子は涙をさそいました。
だからデバルトも憎めないキャラですよね。
とても見た目がかっこいい人なんですけど、しいて言えば歌う時の眉間のしわが深くならないといいなとどうでもいいことを思っちゃいました(笑)。
初演の時はジュリア・グリージっていう有名なメゾソプラノがロメオをうたったんですけど、このデバルト役はどんな人が歌ったのかなとそんなことも思いました。
ジュリエットを歌ったのはオクサーナ・ステパニュックという人。
とても美しくてジュリエットの衣装がよく似合っていました。
ハープと歌う花嫁衣裳のアリアはいかにもベッリーニで旋律にとろけそう。これってソプラノだったら絶対一度は歌いたい曲だろうなあと。
高い声がやすやすと出る人で弱音も美しいのですが、なぜかちょっと単調にあっさりめに聞こえてしまいました。
ロメオが情感たっぷりだったからそれに比べてしまったのかもですが、もっと強く思って!歌って!と感じてしまったかも。
父親役のカペッリオを歌ったのはデニス・ビシュニヤという人。
体が大きくていかにも父王という感じ。声も迫力があってこれまた役にぴったりでした。
そしてロレンツォを歌ったのは田中大揮さん。私のイメージだとロレンツォって大事な役で父より存在感が強い気がしていたんですけど、今回のロレンツォはおとなしめだったかなと。
というか父が存在感ありすぎだったからちょっと控えめに見えてしまった気もします。
カプレーティとモンテッキでは合唱が時に伴奏のように歌うところがありましたけどあれもベッリーニの特徴なのかそれとも当時の特徴なのか…。
そして場の合間ごとに流れる物悲しいチェロの調べや、クラリネット(かな?)の旋律、きらりと光るバイオリンの音色など
歌以外にもベッリーニは本当に美しいです。
聞けば聞くほど好きになりますね。
コメントを残す