ドン・カルロ/2021年5月新国立劇場公演

出演者が大幅に変更したけど

2021年5月新国立劇場のオペラ「ドン・カルロ」を見てきました。

シーズンオペラもドン・カルロを入れて残りはあと二つ。最後はカルメン

今シーズンは新型コロナの影響で本当に関係者も大変だったんじゃないかなあと思います。

今回も出演者が大幅に変更になるという事態。

タイトルのドン・カルロが変更。そしてフィリッポ2世とエリザベッタまで。主要なメンバーが変更になっちゃったわけです。

出演者が変わることは時々ありますけど通常は一人程度。今回の変更は大きいですよね。

とはいえ個人的にはこの人がどうしても見たくて行くっていうのはあまり無いので、出演者の変更ってさほど気にならないです。

それより緊急事態宣言で中止になるんじゃないかとそちらが気になってなんどもサイトを見たりしました。

というわけで何はともあれ無事ドン・カルロを見てくることができました。

今回のドン・カルロの感想を一言でいうなら

うーん、個々にはすごくよかったけど全体としては‥

何ていうのか‥

感動の嵐というわけにはいかず、という率直な感想です。

勝手な感想を言いつつなぜそう思ったのか理由は自分でも分析できない‥。

もしかしたら期待しすぎちゃった?。

グランドオペラという期待、ヴェルディのドン・カルロだという期待、スペクタルあるかなの期待などなど。

4幕イタリア語版大きな塀が動く演出

今回のドン・カルロは4幕のイタリア語版。4幕ってどこが無くなるのかなあと思っていたら、いきなり最初のところが無かったのでした。フォンテブローの森のところ。

あと自分でもびっくりしたんですけど今回の演出は前にもおそらく見ていました(笑)。

あれ?この感じは前にも見たかなあと十字の光で気づき‥。

今回のドン・カルロは新制作じゃないから何年か前にもやってるはずだと。

すぐに気づかないところが情けないけど、毎度新たな気持ちで見られるのは得かもしれないです(笑)

舞台には大きな塀のような壁がいくつもあってそれが上へ下へ、横へ、そして回転したりと場面ごとに動く演出。前もこうだったのかなあ。

舞台に木とかしきり版があってそれを動かして場面を変える演出はしばしばみかけるけどこんなに大掛かりな壁はなかなか無いんじゃないかと。

2枚の壁の隙間にうまいこと人が収まる時は「あー挟まれそう!」と思うんですけどちょうどうまく隙間に収まるんですよね。

衣装はエボリ公女以外は全体に暗めの色彩。エリザベッタもまだ若い設定だと思うけど王妃だからかちょっと地味目。最初の衣装は壁の色と似ていてちょっと同化していた感も‥。

その他の人たちの黒い衣装は全部同じかと思うと、よく見ると全部形と柄が違っていたのには驚きで実は凝った衣装なのでした。

だけど一番インパクトがあったのはやっぱり宗教裁判長のメイクかなあ。

3幕であの不気味な音楽と共に登場する腰の曲がった宗教裁判長は本当に怖い!(笑)前回見た時は確か妻屋秀和さんがこの役をやっていたと思うんですよね、それだけは覚えてます。今回妻屋さんは王役でした。

今回はバレエはなかったけどエボリ公女のサラセンの歌のところあたりはバレエがあいそうでした。もともとはあったんだろうか?など考えながら見てました。(コロナ禍だから贅沢は言えませんが‥)

もともとグランドオペラだしスペクタクル的なことが何かあるかなあとどうしても期待しすぎちゃうんですけど、今回は火あぶりのところが工夫されていたのかなと思いました。

火あぶりは結構生々しい感じでかなり煙も出ていたので本当にむせちゃうんじゃないかと思っちゃいました。

最後のカルロ5世の亡霊のところはかなりあっさり。

舞台中央に四角い物があったので「もしやあれが割れる?」など想像しちゃってましたけどあれは割れず(笑)後ろから普通にカルロ5世が頭巾を被って登場しましたけどどの人が亡霊なのかちょっとわかりにくかったかも。

ここら辺も前に見た時のことを全く覚えていなかったということです。なんども楽しめる自分がある意味ありがたい(笑)

歌手について

いつも新国立劇場はすごくレベルが高いと思うのですが、今回もそれは変わらず。

入り口でキャスト表をもらって思ったのは

エリザベッタのカヴァーが田崎尚美さんだったこと、そして天の声が光岡暁恵さんだったこと。天の声はちょこっとだけの役ですが、そういう役もカヴァーも一流の人たちなんだなあと改めて思ったのでした。

今回のドン・カルロをみて個人的にすごくよかったと思ったのはフィリッポ二世役の妻屋秀和さん、そしてエボリ公女役のアンナ・マリア・キウリさんという方。

妻屋さんは今回代役での出演でしたが、妻屋さんののフィリッポ2世以外にありえるんだろうかと思うほどすばらしく情感あふれる王。最高でした。

4月のイオランタの時のルネ王もすごくよかったけど今回も。

特に3幕1場の王の苦悩の場面は素晴らしくて!切ないメロディーもなんともいえずよかったです。

こういう役がドンピシャで合う方だなあと思いました。それにしても妻屋さんは4月にルネ王で5月に今回のドン・カルロ。1ヶ月違いで違うオペラをこなせちゃうもの?とそれにもびっくりしました。

フィリッポ王の「婚礼の時、年老いた私を見た時のそなたの悲しそうな顔‥」のセリフは切なかった‥。

またエボリ公女は声もよかったけれどそれ以上に罪を悔いる姿が人間味溢れて素晴らしい演技と歌。

自分の美しさを呪うといって自身を刺すのはどうかとは思うものの(笑)、とにかく今回の公演ではとても印象に残りました。

今回エリザベッタもそうですけどドン・カルロはヴェルディの中でも重めというか、ワーグナーを歌える歌手の方が歌うのかなと。

タイトルのドン・カルロを歌ったのはジュゼッペ・ジパリさんというテノールでこちらも当初予定の人が来られなくなっての代役。イタリア出身かなと思ったらアルバニアのご出身。

いかにもイタリアオペラにぴったりの甘い声質

後半になるにつれ存在感が薄くなっちゃった感がありましたけど、そもそもカルロ役ってタイトルの割に他の役の方がインパクトがあるオペラっていうイメージがあるので仕方ないのかなと。

そして私が個人的に好きなロドリーゴ役を歌ったのは高田智宏さんというバリトン。名前に覚えがあったのは3年前に紫苑物語で宗頼役で見たからでした。

あの時の陰陽師風の衣装の方が個人的には合ってた気がしますけど、今回もとても安定した声。

フィリッポ王との二重唱はやはりよかったです。というかアリアって悲しいとか嬉しいとかそういうアリアが多いと思うんですけど、こんな風に政治的な硬い内容のアリアなのにこれほど聞かせてくれるアリアって珍しいんじゃないかなと改めて思ったのでした。

ここはドン・カルロの感動的な場面ですよねえ。セリフもいいのかな。台本誰だっけ?と思いそっか!原作がシラーだったと思い出したのでした。

そしてエリザベッタを歌ったのは小林厚子さんというソプラノ。こちらは少し前の2021年3月のワルキューレのジークリンデ役で初めて知った方でした。

ジークリンデの時はあまり顔の印象がなかったのですが、今回は王妃役。

後半になる程調子出てきたのかなっていう感じで、特に高音が硬めの強い声という印象。エリザベッタの見せ場は第4幕でしたね。4幕は劇的でやはりおもしろいです。

改めてシラーを読もう!って思ってしまった。

それほど歌わないのに存在感がありすぎる宗教裁判長役はマルコ・スポッティと言う方。

そしてアレンベルク伯爵夫人役かな、たぶん木村寿美さんと言う方だと思いますけど‥の声もキラリと光って印象的でした。

というわけでドン・カルロを見られたのはとてもよかったです。早く思い切り拍手やブラボーが言える(私は言えないけど笑)状況になるといいです。

あと中で喫茶や食べ物も早く復活するといいですねえ。そういうのもオペラの楽しみって私は思うんですよね。

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