新国立劇場2018ー2019のオペラシーズンが始まりました。
日本のオペラも最近はヨーロッパのように秋からシーズンが始まるようになってきたんですよね。
少なくとも新国立劇場はそうしているようです。
そして、幕開けの演目はモーツァルトの魔笛です。
演出について
魔笛の初日の新国立劇場は、平日(水)にもかかわらずかなりの入り。
男女半々くらいかなという割合でした。
それにしてもやはり新国立劇場は、ゆったりしていていつもながら過ごしやすい空間です。
またどの席から見ても見やすいのがありがたいです。
さて、今回の新国立劇場の魔笛を一言でいうなら
「プロジェクションマッピングの魔笛」と言えるのではないでしょうか。
最近は映像を駆使したオペラの上演をよく見かけますが、
今回はとりわけ映像に力が入っている演出で、プロジェクションマッピングがずっと上映されていました。
舞台の変化や情景はすべて映像。
そのため、舞台に置いてあるものはせいぜい椅子くらいのものです。
あとは動く床。
映像はずっと写っていましたが、印象的だったのは、タミーノが笛を吹きながら歌うアリアに合わせてでてきた
動物が出てくる映像。サイがかわいらしかったですね。
あとはイシスオシリスの歌のシーンのプロジェクションマッピングも迫力がありました。
またパパゲーノが死ぬしかないと嘆き悲しむシーンでは、さりげなく首吊り用の輪があったり‥
プロジェクションマッピングを使うことで魔笛のおとぎ話性が強く出ていたような気がします。
すべてのオペラがプロジェクションマッピング形式になっていくのは、個人的には寂しい気がしますが、
魔笛のように、すぐに場面と状況が変わっていくオペラには、確かにこのやり方はあっているのかもしれないとおもいました。
いずれにしても新しいオペラの形ですね。
音楽について
今回魔笛を観るに当たっては、実は字幕をあまり見ずに音楽を楽しむことに決めていました。
魔笛のストーリーはあまりよくわかりませんし、理解しようとすると、音楽を楽しめなくなる気がしたからです。
結果として、思ったのは、やはり魔笛の音楽って、最初から最後まで美しくメリハリがあってすばらしいということ。
有名なアリアが多いのはもちろんのこと、それ以外の部分でも好きなところを再発見。
例えば、第一幕で夜の女王が登場するシーンの最初の静かな音楽や
2幕最初の音楽など。
また、確かモーツァルトはフルートという楽器はあまり好きではなかったと聞いたのですが、
魔笛においてはフルートが大活躍。とてもきれいな音色でした。
魔笛の音楽にはフリーメイソンの「3」にかかわる音楽や、3人という人の数などが出てきますが、
今回はじめて気がついた「3」は、三人の侍女たちが、パパゲーノを呼ぶときも3度「パパゲーノ」「パパゲーノ」「パパゲーノ」と呼んでいたこと。
これも「3」にまつわる部分だったのかな。
歌手について
今回の魔笛は、
- ザラストロ
- タミーノ
- パパゲーノ
の三人が海外の歌手。それ以外は日本の歌手の方でした。
全体にスレンダーな人が多く、特にザラストロは大抵縦横に大きい人が演じることが多いので
あんなに若くてほっそりしたザラストロははじめてみました。
ザラストロはサヴァ・ヴェミッチという人。
今でも良い声でしたが、今後もっと低音が安定していくんだろうなという感じの人でした。
またパパゲーノもおとぼけ役というより、二枚目の雰囲気。
歌わずに立っているだけだと、タミーノとパパゲーノが逆に見えるかもしれません。
と言うのも、パパゲーノの服装の方が若干ちゃんとして見えたので、王子っぽいというか。
対するタミーノは、黄土色で地味だったので‥。
でも顔を見るとやっぱりタミーノの方が王子っぽい感じか‥。
パパゲーノ役はアンドレ・シュエン、そしてタミーノはスティーヴ・ダヴィスリムという人。
かなり若そうだし、これから楽しみ。
そうそう、パパゲーノは舞台で本当にサンドイッチらしきものを食べていました。歌うのに食べるんですね。
相手役のパパゲーナも小柄で華奢な雰囲気的がぴったり。
さて、魔笛といえば夜の女王のアリアが代名詞のように有名ですが、
今回夜の女王を演じたのは安井陽子さんという方。
高音もよかったけど、難しそうなところをコロコロと正確に歌って、
また表情が良くて、女王の迫力が出てました。
そして、今回もっとも印象的だったのが、パミーナの林正子さん。
魔笛においてはパミーナはそれほど目立つ役ではないと思うのですが、
最初の一声を聞いたときから、つやつやした素晴らしい声で驚き。
名前は知っていましたが、実際に生で聴いたのはおそらくはじめて。
とても魅力的な甘い声で、すっかりとりこになりました。それくらいよかったです。
オペラの拍手と上演中の姿勢について
最後にちょっと気になることを少し
今回の公演に限らないのですが、最近の傾向として、
- 指揮者のタクトが下りるまで拍手を控えるように
- 音がなり終わるまで拍手をしないように
と言うことが書かれていたりアナウンスされたりすることが多くなりました。
確かに早めに拍手をする人がいて、もう少し余韻を楽しみたかったなと思うときもあります。
でも本来拍手は自然に出るものなの。
少し早めに拍手をする人や、しない人などいろんな人がいてもそれはそれでいいと、私は思っています。
(ワーグナーのように作曲者の意向がある場合はちょっと別だと思いますが)
気になるのは、そういうことを厳しく言うことでオペラの敷居が高くなるんじゃない?ということ。
あと、上演前にスマホの電源をお切りください、というアナウンスは今や当たり前にですが、
最近はそれに加えて、上演中は座席を背もたれにつけてみるようにとのアナウンスも多くなってきました。
確かに前の人が、前のめりだと後ろの人が見にくいですよね。
ただ、そもそもすべての席の人が平等に見えなければならないというのは、無理な話で
席が後ろに行くほど、見えずらいのは仕方のないことだ、と思っています。
海外の劇場など、柱があったりそもそも見えずらい席が普通にありますし。
ところが最近、少し前のめりになっただけで、怒り付ける場面を何度か見かけました。
確実に怒る人が多くなってきたような気がする。楽しむ場所なのに…。
このままでは、かがんでオペラグラスを取り出すことすらできなくなりそう。
やはりオペラは、リラックスして、楽しく鑑賞したいものですね。
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