オペラはたまにしか見ないという人も多いと思いますが、
今回は、はじめてオペラを鑑賞するという人や時々しか見ないという人も、
ここに注目すれば絶対楽しく見ることができる、というポイントを簡単にまとめてみました。
今回はヴェルディのオペラ「リゴレット」について。
これを読めば、きっとリゴレットを見るのが待ち遠しくなること間違いなしです。
数あるオペラの中でもダントツ純真無垢なジルダに注目
リゴレットは数あるオペラの中でも特に好きなオペラですが、
なぜリゴレットが好きなのか?と聞かれたら私なら
「ジルダを見たいから」と答えます。
ジルダというのはタイトルになっているリゴレットの娘役なのですが、
数あるオペラの中でもダントツに純真無垢な役だと思います。
年齢は10代、教会以外外出したことがないという生粋の箱入り娘で、見た目も心も美しい可憐な女性なのです。
ジルダという役にはコロラトゥーラと言われるコロコロと転がすように歌う技術が必要なのですが
このコロラトゥーラという技術はモーツァルト「魔笛」の夜の女王に代表されるようなきつい役や、こうもりの女中役アデーレに代表されるような抜け目のないちゃっかりした役もある中で
ジルダのコロラトゥーラは天使のような可憐さが魅力だと思うんですよね。
こんな清らかな女性って実際にはいないよねと思いつつも、天使のような歌声に聞き惚れたいとなぜか思ってしまうのです。
実際にジルダを演じる歌手の人の実年齢はもっと上で、時には還暦を超えても歌っちゃう人もいるんですけど
声の力っていうのはすごいもので、上手な人が歌うと実年齢に関係なく、清らかで清純な若い女性に見えるものなんですよね。
そんなわけで、もちろん見た目も大事だとは思いますが、とにかくどれだけ清純無垢に聞こえるか、見えるのかっていうのがリゴレットを見る時は毎度楽しみなのです。
どんなジルダかな?と思って見てみると良いのではないでしょうか。
もちろん好き嫌いは人によりいろいろなので、自分の感性で見れば良いと思うんですよね。
各登場人物の注目点は?リゴレットは声のバランスも絶妙
リゴレットの主な登場人物は5人で
- リゴレット:バリトン
- ジルダ(リゴレットの娘):ソプラノ
- マントヴァ公爵:テノール
- スパラフチーレ(殺し屋):バス
- マッダレーナ(スパラフチーレの妹):メゾかアルト
ですが、それぞれの登場人物について簡単に私なりの注目点をあげてみます。
リゴレット
タイトルになっているだけあって歌唱力と演技力が求められる役なのでまずこれらに注目。
いやいや道化の仕事をやっていて、救いは美しい娘だけというところは、なんとなく家族を養うためにしかたなく会社に行く現代のサラリーマン?を思い浮かべてしまうのですが、
そんなリゴレット役には、ひねくれた面と娘に見せる愛情深い父親の面の二面性を感じたいところ。
なので、リゴレット役は演技ももちろん注目ですが、バリトンだけど貧弱なバリトンではなくてできればバスに近い重めのバリトンがいいなと。そこらへんにも注目でしょうか。
低い声がでないなあとなると、ちょっとがっかりしてしまうんですよね。
見た目でいうと、リゴレットはせむしの役なので背中に何かを入れている場合、入れない場合、
服装はピエロのような服の場合、そうではない場合などがありますから、オペラをみる際は
どんな服装のリゴレットかなというのも最初に気にしてみると良いでしょう。
ジルダ
最も注目したいジルダについてはまず見た目は、どんな清純な感じの人かなというところに注目。
そして最も気になるのは声と歌い方。
ジルダが登場するのは第一幕の第2場ですが、父親とのやりとりはじっくり聴きたいシーン。
そして最も注目したいのはマントヴァ公爵が帰って行ったあとに歌う
「かの麗しい人の名は」のアリア。
とても美しい曲で、ここが最もジルダの良さが見えるところではないかと思いますので注目。
あと、声もそうですけどちょっとした表情や仕草も重なり合って、その人のオーラって出ると思うんですよね。
そして見る人の好みっていうのもあります。
自分がいいなあと感じるのか、そうでないのか、それを素直に感じること
それも実は大事じゃないかなと思います。
マントヴァ公爵
ジルダが好きになってしまうマントヴァ公爵は確かに重要な役で、有名なアリアも多いのですが、
役柄的にはわりと浅い役と言うイメージなんですよね。
リゴレットの苦悩も、ジルダが身代わりになって死ぬことも、全く知らないままの呑気な役だからです。
なのでマントヴァ公爵については演技よりひたすらアリアに注目したいところ。
中でも有名なのが第三幕の最初のあたりに出てくる「女心の歌」。
この曲ってリゴレットの中にあったのね?と発見をする人も多いと思いますが、それほど有名な曲です。
マントヴァ公爵はテノールですが、この女心の歌をはじめ彼が歌うアリアに注目して
どんな感じで歌うのかな、うまいかなと、どのアリアがいいかなと思いながら聞くのが楽しいのではないでしょうか。
スパラフチーレ(殺し屋)
それほど歌も出番も多くない割に殺し屋という役柄のせいなのか、かなりインパクトが強いのがこの役。
低音のバス歌手が担当するのですが、力強いバスで殺しの誘いをすると
結果的にかっこよく見えてしまうこともしばしば。
顔をあまり見せずに登場することもあり余計に興味がそそられるのかもしれません。
そんな役なので、スパラフチーレについては太いバス声かどうか、不気味感がでているか
どんな衣装ででてくるか、そしてかっこよかったかなどに注目して見たいところです。
マッダレーナ
殺し屋スパラフチーラの妹役でメゾかアルトが担当します。
ジルダが純真無垢な役なのに対し、こちらは世慣れた妖艶な大人の女性の役。
ジルダと対照的な役なのですが、かなりはすっぱな女性に見える時と、意外に良い人?と思える時があります。
マッダレーナについては妖艶な雰囲気なのか、そしてどんなメゾ(またはアルト)の声なのかに注目したいところです。
リゴレットは声のバランスが絶妙
リゴレットというオペラのもう一つ注目点は声のバランスが絶妙だということ。
主な役柄を見ればわかるのですが、メインの役はソプラノ、メゾ、テノール、バリトン、バスとなっていてすべて一人ずつでとてもバランスがいいのです。
しかもそれぞれの個性が全く異なるので、どれが誰なのかわからなくなることもなく、すべての声を満遍なく楽しめるんですよね。
モーツァルトのオペラとか、もっと遡ってヘンデルの頃のオペラになると、やたら高い声が多いオペラがあるのですが、
その点リゴレットはちょうどバランスよく高い声と低い声があるわけです。
オペラによってはソプラノが多いと、「うーん、これは誰だっけ?」っていうこともしばしばあるんですけどリゴレットについてはそれがないのが嬉しいです。
いろんな声を聞けるというのもリゴレットの良さで注目点じゃないかと思います。
各幕の注目点はここ!
では最後に各幕の注目点を幕ごとに少しだけ書いておきますね。
第一幕はモンテローネの言葉に注目
リゴレットの主題は実は「呪い」だと思うのですが、何気なく見ちゃうと
「何が呪いなのかなあ‥?」
ってなっちゃうことがあります。
そうならないためには、第一幕のモンテローネっていう老人のセリフに注目。彼は娘を弄ばれて非常に怒っていて、
「呪ってやる!」となっているんですね。
悪いのはマントヴァ公爵なのに、それをからかったリゴレットも呪われちゃうわけです。
リゴレットは道化の仕事だから仕方ないのにちょっとかわいそう。なんでそこまで?とちょっと思っちゃうのですが、
そこはおいときましょう。
最後の最後にリゴレットが「呪いだー!」と絶望するのは、このモンテローネが絡んでいるので、第一幕は、ちょっとセリフに気をつけて見るといいと思います。
同じく第一幕1場でチェプラーノ夫人という人がちょこっと出てきます。
この人の名前も覚えておくと、第一幕第2場で「チェプラーの夫人をさらうんだよ」とまんまと騙されてしまうリゴレットの様子がよくわかります。
というわけで、第一幕は意外に字幕のセリフに注目しておいた方が良いのではないかと思います。
また、第一幕第2場でマントヴァ公爵は貧乏学生のふりをしてジルダに近づくのですが、これも知らずに見ているとマントヴァ公爵だと気づかず、別の登場人物だと思ってしまう人もいますので、知っておいた方がいいですね。
歌手って私たち見ている方は初対面だし、海外の人だったり、服装が変わったりすると、同じ人なのか違う人なのか、これ誰?って意外にわからなくなるんですよね。
第二幕
第二幕の注目点はリゴレットが皆の前に疑心暗鬼で現れるシーン。
リゴレットが「ララッララッ‥」と歌うシーンは疑いと不安が混じり合った、なんとも辛い心境の場面です。
道化の辛さが滲み出るシーンで注目。
そしてジルダから一部始終を聞かされる父娘のシーンの曲と歌は聞けば聞くほどよくなる場面です。
最初はそれほどピンとこないかもしれませんが、ぜひ耳をじっくりと聞いてみて、良いと感じるのかそうでないのか、見た感覚を素直に持っておくといいと思います。
次に見たときに違うかもしれませんから。
第三幕は嵐の中の緊迫感を感じたい
第三幕はジルダが殺されてしまうシーン。
この幕はオーケストラが嵐の様子を音楽で表していて緊迫感がすごいと思います。
クライマックスなので、第三幕はあれこれ考えず舞台にのめり込んで見るのがおすすめ。
強いて言えば有名なのは4人が別々のことを歌う4重唱のところですが、私的には4重唱がすごいとか音楽的によくできているとかそういうのはよくわからないので(笑)
ただ緊迫感を味わいたい場面ですね。
というか、そんな第三幕であって欲しいです。
リゴレットは何度も見たくなるオペラです。見れば見るほど良いところ、好きなところが多くなっていくと思いますよ。
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