フィレンツェの悲劇とジャンニ・スキッキの二本立てを観てきました。
場所は新国立劇場です。
初日の今日(4月7日)は日曜日ということもあってか、かなりの人の入りでした。
おそらく今期の新国立劇場シーズンオペラの中では最もマニアックな演目がフィレンツェの悲劇だと思うのですが、思ったより満席だったのでちょっ意外。
オペラファンは思ったより多いですね。
一緒に上演されるジャンニ・スキッキが間違いないおもしろいオペラなので引っ張られるのかも。組み合わせもうまいなと。
ジャンニ・スキッキも舞台がフィレンツェなのでフィレンツェつながりということらしいです、なるほど。
フィレンツェの悲劇
不思議な音楽とラスト
ツェムリンスキー作曲のこのオペラを観るのは全くの初めてだったのでとても楽しみにしていました。
最近は観たことがないオペラを観られるのがとにかく嬉しい!
さて、作曲したツェムリンスキーという人はR・シュトラウスの影響を受けたと書いてあるだけあって、確かにそんな感じもしました。
流れるような流麗な音楽。
私流に言えば悲惨と希望が入り混じったような音楽、というイメージかな。
でもそれよりも音楽を聞いていて感じたのは、ここでそんなに音楽が盛り上がるの?という不思議な盛り上がりが前半多くて‥。
そこまで盛り上がるシーンでもないんじゃないかなあ‥と思いながら聞いていたところが何箇所かありました。
ただその盛り上がりが、なるほどここではピッタリ!と一番ググッとときたのがラストの決闘のシーンで、
その辺の緊迫感は半端なくおもしろかったです。
(乗り出して見たかったけど怒られるからちゃんとおとなしく座っていました、笑)
前半は何を考えているかわからない不気味なシモーネの独擅場が続くオペラで、シモーネの役はとても大変。
シモーネを演じていたのはセルゲイ・レイフェルクスという人でした。この役は難しそう。
妻のビアンカを歌ったのは齊藤純子さんというソプラノ。声だけ聞くとメゾ?ソプラノ?どっちだろうと思う声で、つまり低音もよく響く声でした。
体は細身なのに、ワーグナーも歌ってる方なんですよね。今でも声がよく通るのでもう少し太っていたらもっとすごい声になるのかなとちょっと感じました。
それにしてもフィレンツェの悲劇というオペラの不思議なのは決闘の後のラストです。
不倫相手を殺した夫に対し
「あなたってすごく強かったのね」
「お前こそ美かったのに気付かなかった」
となって抱き合うという意外すぎる結末は、えー!?という驚きしかない。
でも動物学的に見ればメスはオスの強さに惹かれるし
オスはメスの若さと美しさに惹かれるっていうから
まさに人間の本質っていうことなんでしょうか。
そんなフィレンツェの悲劇の原作はオスカー・ワイルド。
全体に毒のあるセリフが多いのは元の原作がそうなのかはわかりませんが
オスカー・ワイルドといえばサロメの原作もそうですが、私の中では童話「幸福の王子」の作者と言うイメージです。
幸福の王子は良い話なんですけど、なんともいえない怖さを含んでいる話で印象に残る童話なのです。
と言うわけで今回のオペラを観て俄然オスカー・ワイルドという人にも興味がわきました。
いびつな建物がある演出
最初に薄い幕があって、それが徐々に透けて見えるというのは、最近の新国立劇場でしばしば見かける演出だと思います。
今回の舞台で印象的だったのはいびつな形をした建物。
そして建物からは大きな布が不気味にはみ出している。
これらの建物やセット、オペラの内容から、確かにデカダンスという言葉がぴったりの感じがしました。
これは最近感じるのですが、以前はオペラといえば海外が中心で、
舞台とかセット、演出も海外が良くて日本はいまいちという印象を持っていたのですが、
新国立劇場のオペラをいろいろ見るにつけ、最近演出がすごくおもしろいと感じるんですよね。
結構奇抜だし、斬新。凝った演出が多いし、それが細かいところまで考えられているというそんな気がしています。
今回のフィレンツェの悲劇もそうでしたが、特にそれを感じたのは次のジャンニ・スキッキの演出でした。
ジャンニ・スキッキ
細部まで見逃せない演出
最近ジャンニ・スキッキを観る機会が多くて昨年から3回目。
今回は、音楽が始まると舞台にはフィレンツェの悲劇の時のゆがんだ建物がそのまま残っているので
おや、今回は同じセットのままでいくのかな?まあそれもありかも
と思っているうちに建物が真っ二つに割れて後ろからブゾーニの書斎が出てくるという驚きの演出。
すごいですねー。
でもってジャンニ・スキッキの場合はだいたい似たような演出になるのかなと思ってたんですよね。
家の中にベッドがあってブオーゾが死んでいる。
全員がバタバタと遺書を探す時に部屋が散らかされるという演出。
これは勝手に私が思っているだけですが、紙などを散らかし放題にすると、後で片付けるのが大変だろうなあとか、舞台が美しくないなあなどつい思ってしまうのですが、
でも今回の演出では遺書を探す時も部屋は散らかされなかったですね。
おもしろいのはすべての物が大きくて、人間が小人状態になっていたこと。ガリバーの家でもないけど
巨大な本に、巨大なろうそくやペン、クッキーまで全部巨大。
人が乗れるほどの天秤ばかりまであるし、本はちゃんと開くようになってるんですよね。
おもしろいのは、巨大なペンはちゃんとほんとに文字がかけるようになっていて
偽物の遺書を作る時にそのペンでさらさらと書いてるんですよね、それっぽい筆記体を。
あれ、練習しないといきなり書けないと思うんですよね。何を書いていたのか気になるわー。
と言う感じで細部まですごく考えられている演出でそれがおもしろかったです。
歌手について
今回タイトルロールのジャンニ・スキッキを歌ったのはカルロス・アルバレスと言う人。
とてもうまいけど、彼以外全員日本人という中でやるのって、正直どうなんでしょうね。やりにくかったりしないのかなとちょっと思いました。
ジャンニ・スキッキという役は、最終的にみんなを騙す役なのですが、その割に今回は硬くてまじめな感じが否めなかったのですが、最後のセリフで
「皆さん」と日本語で言ったので一気に場がほぐれましたね。
あと、だいたいジャンニ・スキッキ役は太ったバリトンがやるのですが、
死んでるブオーゾは痩せた老人なので、どう見てもブオーゾになりすますのはわかっちゃうでしょ!と突っ込みたくなるのですが
何はともあれいつ見ても楽しく、イキイキとした音楽のオペラなので楽しめます。
ジャン二・スキッキには「私のお父さん」という超有名なアリアがありますが
こんなにさらっと有名なアリアに突入するオペラもそんなにないよねと思うくらい、私のお父さんというアリアは会話の途中でさらっと始まるんですよね。
今回ラウレッタを歌ったのは砂川涼子さん、この人ももう何度も見ています。
いつ練習しているんだろうと思うくらい引っ張りだこですよね。
今回のオペラは二つとも合唱が無し。
数日前にさまよえるオランダ人の大合唱を聞いていたので、同じオペラでもほんとにいろいろあるよねと感じました。
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