リゴレット・オペラの魅力・父が娘を殺してしまう悲劇

イタリアオペラの巨匠といえば、ヴェルディ。

ヴェルディは、たくさんのオペラを残しましたが、その中でももっとも劇的で悲劇だけどおもしろいオペラのひとつがリゴレットです。

 

私が大好きなオペラの一つでもあります。

あまりに好きで、音楽家でもないのにスコアを買ってしまったくらいです。

 

分厚いスコアを見てもわかるわけもなく、後で思えばなんで買ったんだろうと(笑)

まあでも好きなところがたくさんあるので、とにかくスコアを見てみたかったんですよね。

そんなリゴレットの魅力は一体なんなのか。

 

リゴレットのあらすじ

 

リゴレットはせむしの道化師でマントヴァ公爵のお気に入りです。

マントヴァ公爵は女遊びが大好きで、人妻だろうが無垢な娘だろうが誰彼関係なく関係を持つしょうもない領主。

娘を弄ばれて怒るモンテローネ伯爵を道化のリゴレットがからかったため、

モンテローネはリゴレットを恨み、呪ってやる!と言います。

リゴレットは皆には秘密にしていますが、16歳になる純粋無垢で美貌の娘ジルダがいます。

外出は教会のみ箱入り娘

ところがその教会でマントヴァ公爵に見初められてしまい‥。

ジルダは公爵に弄ばれてしまう

リゴレットは公爵が許せず、殺し屋に公爵を殺してくれるよう頼むのですが、

それを知った心美しいジルダは身代わりになり死んでしまい、

リゴレットはモンテローネの呪いだ!と泣き崩れます。

 

と、こんなあらすじです。

ヴェルディのオペラには悲劇が多い、というかほとんど悲劇なのですが、

愛する娘を自分で殺したようなものですから、ヴェルディの中でも悲劇中の悲劇ですね。

 

さて、もともとこのオペラのタイトルは「呪い」だったのですが、当時の検閲にひっかかり

やむおえず「呪い」→「リゴレット」に変更しているんですね。

 

もしもタイトルが「呪い」のままだとしたら、リゴレットの演出はもっと呪いに重点を置くのではないかと思うのですが、

現在のリゴレットの演出を見ても、呪いの部分があまりクローズアップされておらず

そのため、オペラの最後にリゴレットが「あの呪いだ!」と泣き崩れても、なんの呪いだっけ?誰を呪ってるんだっけ?

とどうしても思ってしまうんですよね。

 

とはいえ、息もつかせぬ緊張感たっぷりのこのオペラは、素晴らしい旋律がたくさん、ストーリー展開も早いので見やすく、もっとも好きなオペラには間違いないです。

声のバランスもテノールあり、ソプラノあり、バリトン、メゾ、バスもあってそれぞれ存在感があるのですごくバランスがいいと思うんですよね。

どの声も楽しめるということじゃないかと。

 

リゴレットの上演時間と成立

 

リゴレットは、ストーリーが濃密なわりに、上演時間はそれほど長くありません

通常これだけの話を2時間にまとめると、薄っぺらくなってしまうことがあると思うのですが、

リゴレットは、音楽とドラマの融合が素晴らしいからか、これぞ音楽の持つ力なのか

登場人物の歌による心理描写が絶妙だと。

だから短い時間でも薄っぺらくなく濃密なオペラになっています。

 

<上演時間>

  • 第1幕(第1場:マントヴァ邸 第2場:リゴレットの家)・・・約50分
  • 第2幕(マントヴァ邸)              ・・・約30分
  • 第3幕(殺し屋の居酒屋)             ・・・約30分

 

休憩2回の約2時間の上演なので、休憩を長めに入れても3時間弱のオペラです。

2幕、3幕は続けてやってしまうこともあります。

第3幕は殺しのシーンですが、息を止めている間に進んでいくかのような緊張の30分ですね。

 

<成立>

 

成立は、ヴェルディが38歳の時。

ヴェルディはこの後トロヴァトーレ椿姫と続いて作品を書いています。

特にトロヴァトーレとこのリゴレットは悲劇性が強いのですが、

私の中ではヴェルディの、トップ2のオペラです。つまり大好き!。

 

この後のシチリア島の夕べの祈り」から「アイーダに至るまでも

ヴェルディらしい情熱的なオペラが続くのですが、

徐々にグランドオペラとしての色が強くなっていくような気がします。

それはそれで劇的でいいのですけど。

 

フランスからの依頼でグランドオペラを、ということのほか、

もっともっとインパクトがあるものを、という周りの期待もあったのかも。

リゴレットから20年後のアイーダになると、

大掛かりな舞台で華やかさは増す一方、オペラ全体の叙情性は若干薄くなって、ヴェルディの作品も変化しているのを感じます(こんなことを言ったら怒られるか‥)。

要は好みの問題ですね。

でもアイーダは人気があるんですよね。

 

リゴレットの魅力と聴きどころ

 

リゴレットの中でもっとも有名なアリアはマントヴァ公爵が歌う「女心の歌」

 

風の中の、羽のように変わる女心、涙も笑いもみないつわりさ

それを信じるのは哀れな人、だけど恋は知らなきゃ‥」

 

という歌の内容で、全てのオペラの中でももっとも有名なアリアの一つではないでしょうか。

オペラの公演後、ヴェネチアの街中でこの曲が歌われていたというほど、覚えやすい曲でもあります。

 

また、もう一つ注目されるところはクライマックスの第3幕の4重唱です。

 

オペラには2重唱はよくありますが、4重唱はめずらしいのです。

4人が別々のことを歌うわけで、旋律も異なります。字幕も大変です。

アリア(独唱)はそんなに盛りだくさんのことを歌っているわけではないので、字幕の方は意外になんとかなるものですが。

オペラ鑑賞のコツ・字幕はあまり見なくても良い

当時一度に4人に別々のことを歌わせるなんてありえない!と言った人もいたようですが、

これがまたいいんですよね。

オペラ用語

 

4重唱は聴衆側も、それぞれが何を歌っているんだろうと神経をとがらせるので、

実はそれが緊張感となって盛り上がっているのではないかと思います。

キーシンというピアニストがいるのですが、かつて彼のリサイタルのアンコールでリゴレットを演奏したことがあります。

アンコールで弾くような曲じゃないほど難しそうな曲なのですが(現に他の人のリサイタルではメインの曲になっていましたから)

キーシンがアンコールでリゴレットを弾いた時の感激は忘れられないです。

オペラが浮かぶような情熱的な演奏でしたし、キーシンもこのオペラに興味を持っているんだなと思いました。

 

でも、個人的にはもっともおすすめしたいのはジルダとリゴレットの父娘の2重唱です。

1幕の後半や2幕最後の2重唱はリゴレットの醍醐味だと思います。

ジルダは清純な若い女性の役。

演技にも声にもそんなジルダの雰囲気が出ていると最高です。

 

<聴きどころアリア>

  • 第1幕・・マントヴァ公がどんな美人もものにすると歌う「あれかこれか」。

帰宅したリゴレットとジルダが亡くなった母のことを聞く2重唱。

ジルダがマントヴァ公を好きになってしまう「慕わしい人の名は」。

最後のグアルティエール・マルデ‥‥と清らかに歌うところは本当に清らかです。

 

  • 第2幕・・リゴレッットが娘を返せと歌う「悪魔め、鬼め」

これはララッララッと歌う、道化の物悲しさが出ているアリアです。

泣きながら出てきたジルダを慰める親娘の2重唱「いつも日曜日に協会で」。

 

  • 第3幕・・マントヴァ公爵が歌う「女心の歌」

リゴレットの渾身の4重唱「いつかお前に会ったような」

 

 

また殺し屋スパラフチーレ(バス)もなかなか重要な役で、弱々しいバスではちょっと物足りなく

不気味な迫力が欲しいところです。

 

オペラはテノールがヒーローになることが多いのですが、

リゴレットではテノールはしょうもない能天気な役のマントヴァ公爵。でもアリアはテノールに良い曲が多い。

メインはタイトルロールであるバリトンのリゴレットです。

 

ヴェルディという作曲家は、リゴレットのようにバリトンに良い役を与えているオペラが多いのも特徴です。

女性についてもその傾向があり、トロヴァトーレでは主役ではありませんが、

アズチェーナ(メゾソプラノ)に非常に重きをおいた作品になっています。

高い声もいいけど確かにバリトンとかメゾって魅力的なので個人的にも好きなんですよね。

 

おすすめのDVD映像

 

リゴレットはいくつかDVDで映像が出ていますが、

何と言ってもおすすめは

ウィーンフィルの演奏で、リッカルドシャイーの指揮のDVDです。

ライブではなく映像版で、ジャン・ピエール・ポネルの演出の描写も素晴らしいと思います。

  • リゴレット:インクヴァールヴィクセル 雷鳴のようなバスバリトンで声、演技とも素晴らしい
  • ジルダ:エディタ・グルベローヴァ 美しく清純清らかなジルダ、高音が素晴らしくでこれもぴったり
  • マントヴァ公爵:ルチアーノ・パバロッティ スコーンと突き抜けるテノールの声が能天気な役に合ってます。
  • スパラフチーレ(殺し屋):フェルッチョ・フルラネットこの時はまだ若いと思いますが声、雰囲気ともよかったです。

 

そのほか、レオ・ヌッチというバリトン歌手もリゴレットを当たり役にしていました。

彼の演技も素晴らしいのですがやはりおすすめはこのDVDかなと、思います。

 

ところで、このオペラは超悲劇なのですが、悲劇の種を巻いたマントヴァ公爵は

何にも知らないまま苦労知らずで終わってしまうあらすじなんですよね。

なんともいえませんが、そんなものか‥とつい思ってしまいます。

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