フィンランド・スウェーデンのオペラ鑑賞レビュー

今回はちょっと珍しいフィンランドとスウェーデンのオペラレビュー(2018年2月)です。

知り合いの音楽家の方がヘルシンキとストックホルムに行かれたので、

オペラの感想と劇場の様子をお聞きしました。

フィンランドとスウェーデンは日本から見ると似たような位置付けなのですが、実際は民族も原語も異なります

フィンランドの首都ヘルシンキからスウェーデンの首都ストックホルムに行くには

ぐるりと上を回って行く電車は無く、船での移動となるんですね。

クルーズ船で一晩かけてバルト海を渡ったそうです。

スウェーデンに入るときも特にパスポートなどを見せる必要もなかったそうで、そこは大陸ですね。

 

フィンランドのオペラ

 

フィンランドはフィンランド人がほとんどで、一部スウェーデン人もいます。

歴史的にはスウェーデンの一部だったことや、お隣のロシアの支配下にあったこともあります。

フィンランドとして独立したのは1917年のことで

現在ではEUに加盟しています。

ヘルシンキの街並みは駅などのアナウンスも少なく、全体に静かな街だそうです

もっとも日本の駅が騒々しすぎるのかもしれません。

 

フィンランド国立歌劇場

 

フィンランド国立歌劇場の建物ができたのはまだ新しく、1993年です。

演目はプッチーニのオペラ「蝶々夫人」

タイトルロールを歌ったのは日本人のソプラノ大村博美さん

演出も日本人で笈田ヨシさんという方だったそうです。

 

蝶々夫人については、やはり日本人が海外でも活躍していますね。

大村博美さんは東京生まれでミラノ、パリを拠点にいろいろ活動され、

3月には東京の東急文化村でノルマ、またラトヴィアの国立歌劇場でも蝶々夫人を歌っています。

日本人にしては強めの声質。

 

パンフレットを見させていただいた限りでは、蝶々夫人の衣装は着物というより、羽衣のような感じ

髪も島田ではなく、長くして、若干イメージが違うとはいえ、

細かい所作などは日本人らしくて良かったようです。

 

さて、フィンランドの国立歌劇場は、新しいこともあってか、音楽は残念ながら今一つで

特に木管関係がちょっと残念な感じだったようですが、

オーケストラについてはまだ新しいから仕方がないのかもしれません。

 

開演は19時。

ヨーロッパは20時開始のところが多いですが、フィンランドもスウェーデンも19時とのことなので

仕事が早めに終わるのでしょう。

もっとも日本では残業が多くて帰宅が遅いのに開始は、19時ですが……。

 

冬なので、みなさん、2ユーロでクロークにコートをちゃんと預けていたそうです。

日本だと無料なのに預けない人もいるので、そこは違いますね。

オペラのマナーと服装

蝶々夫人はイタリア語のオペラなのですが、字幕はフィンランド語と英語の二つ

上部左側にフィンランド語右側に英語で表示されていたようで、

 

フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語なので、英語は観光客向けなのかもしれません。

いずれにしても日本人が遠いフィンランドでも活躍していることはなんとなくうれしい限りですね。

(見にくいのですが、これはフィンランド歌劇場の蝶々夫人のパンフレットです。約500円)

 

ミュージックセンター

 

ミュージックセンターは、フィンランドのヘルシンキに2011年に出来た、こちらも新しいホールです。

中央駅近くという便利な立地で

演目は「アブラハムの饗宴」

作曲は、ユッカ・リンコラ(Jukka Linkola)という人。

 

オペラというよりミュージカルのような感じで、踊りはなく

音楽は民族的な感じだそうです。

フィンランドの民族音楽でジェンカというのがありますが、そういう雰囲気かもしれません。

 

ユッカ・リンコラという人は1955年生まれのヘルシンキを中心に活躍するフィンランドの作曲家ですが、

日本では全く知られていないですね。

フィンランドのバーンスタインと呼ばれているようですが‥。

 

ただ、演目のせいなのか、たまたまなのかはわかりませんが

ホールは空席がめだっていたようです。

 

スウェーデンのオペラ

 

スウェーデンは19世紀後半フィンランドと別れ、20世紀になってからノルウェーとも分離して

現在の領土になっています。

 

スウェーデンの土地は日本より大きいのですが、人口は1/10以下。

寒い地域なので、住める地域が少ないのかもしれません。

 

ストックホルムは古い街並みで落ち着いた雰囲気、ガチャガチャしていないところとのこと。

また基本的に日曜日はコンサートやオペラはクローズで、美術館は開いているそうです。

みんなでお休みする時なのでしょうね。

 

スウェーデン国立歌劇場

 

スウェーデン歌劇場はストックホルムにあり、1773年の創立。

200年以上も前ですから、ヨーロッパの中でも最も古い歌劇場の一つです。

歴史を感じさせる豪華な内装で、ホールは馬蹄形の形をしています。

歌劇場の形式

演目はアイーダ

演出は古代エジプトではなく、ピストルが出てくるなど、バレエのシーンも無く、

現代解釈風の演出だったようです。

とはいえ、オーケストラも歌全般もとてもレベルが高い公演だったとのこと。

ヴェルディのアイーダ

 

スウェーデンはドイツからイギリスにわたって活躍したヘンデルの影響が強い国ですが、

バッハと同世代のヘンデルの時代からですから、音楽の歴史は意外に古いということですね。

レベルの高さはその証かもしれません。

 

オペラのシーズン中はほとんど毎日上演しており、有名どころのオペラハウスと同じような上演形式ですね。

アイーダはイタリア語ですが、字幕はスウェーデン語のみ

オペラのスタートはフィンランドと同じく19時。

馬蹄形のホールですが、ボックス型ではなくオープンなタイプの劇場

 

ボックスは左右の壁が意外に邪魔で見にくいので、オープンの方が見やすくていいと思います。

ホールのメインロビーは2階。

    

クロークは各階にあり、各階でコートを預けられます。

クロークの料金は20クローネで300円程度(EUに加盟していないのでユーロではありません)

 

由緒ある劇場ですが、来ている人々の服装は、それほど華やかではないようで、

年齢層は日本と同様中高年が中心。

ウィーンやミラノのスカラ座に比べると地味なのは、お国柄かもしれませんね。

    

(スウェーデン王立歌劇場の外観と、中の様子。それにアイーダのパンフレットです。)

 

フォルクオペラ

フォルクオペラ歌劇場は首都ストックホルムにあり、

創立は1976年なので、新しいオペラハウスです。

型にとらわれない、ユニークな演目をもっとうにし

フリーの歌手などを積極的に呼んでいるようです。

今回の演目も

  • サリエリのオペラ「まずは音楽、お次が言葉」
  • リムスキー・コルサコフの「モーツァルトとサリエリ」

という二つのオペラを合体させるという非常に斬新な演目

二つのオペラを合体させるというのは私もはじめて聞きましたが

なかなか良かったそうです。スカラ座ならブーイングが来そうですが。

スカラ座のブーイング

サリエリのオペラの登場人物は4人。

リムスキー・コルサコフは2人ですが、

合体したオペラは4人だったそうです。

上演は2時間で休憩が1回。

スウェーデン語のみの上演で字幕もなかったとのことですが、

事前に下調べしていったので、内容はだいたいつかめたそうです。

 

かつて私もウィーンでドイツ語のみ、字幕なしの上演を見たことがありましたが、

下調べが足りず、ちんぷんかんぷんだったことがあります。

ちゃんと調べていけば、地元の言葉のみの上演も観劇可能なんですね。

 (サリエリとモーツァルトのパンフレットです)

 

フィンランドとスウェーデンのチケットなど

 

チケットについて

今はインターネットでチケットが買えるので本当に便利になりました。

フィンランドもスウェーデンも事前にインターネットでチケットをとり、

カードで支払いを済ませて、プリントアウトしたA4の紙を持っていたそうです。

バーコードを読み取る劇場もありますが、

フィンランドとスウェーデンは紙を見せるだけで良かったそうです。

ゆるいですよね。

 

チケットの値段ですが、

スウェーデンは安め、フィンランドは高いと感じたとのこと。

どちらの国も全般に物価は高いようですが、

スウェーデンの王立歌劇場は3階席で3000円程度で見ることができるようで、

日本の新国立劇場の同程度の席でも8000円程度はするので、やはり安い感はあります。

また、フィンランドの方は同様の席で8000円程度だったようなので、やはり高いですね。

 

劇場のトイレなど

 

スウェーデンのストックホルムはトイレが男女一緒のところが結構あるようで、

フォルクオペラや美術館は男女一緒だったとのこと。

男女入り組んで並ぶのは不思議な気もしますが、

すべて個室タイプなら、それもありかな、と思いました。

男女一緒にしたら、女性のお化粧直しが短くなりそうですね。

 

スウェーデンの王立歌劇場はさすがに男女は分かれていたそうです。

クロークに関しては日本人は、無料なのに、コートを預けない人が多いのですが、

フィンランドとスウェーデンでは、有料なのにほぼ預けているというところは、

違うんですね。

日本人はやはりあくせくして時間に厳しいのかな、と思いました。

 

 

劇場の食事

フィンランドもスウェーデンも早めに劇場に行くのは日本と違うところ。

日本は開演15分くらい前にバタバタとみんなやってきますよね。

 

そもそも開場が30分前というところも多いのでないかと思います。

フィンランドとスウェーデンの、いずれの劇場も広めの食事スペースがあり、

多くの椅子と机が用意されていて、

皆、そこで食事をするそうです。

 

席を予約して、食事も予約している人が多いとのこと。

なんとなく優雅でうらやましい。

日本でも新国立劇場は、比較的机と椅子が多めで、食べるものも種類がありますが、

たいていのホールは、食べ物はサンドイッチ程度で、椅子もあまりないですから。

オペラの食事と休憩(新国立劇場)

もちろん休憩の時に食事をとる人もいて、それも予約しているようです。

日本の歌舞伎座みたいな感じでしょうか。

食べるものを持ってきてもいいのでしょうが、そういう人は見かけなかったようです。

私みたいにおにぎりやパンを買ってきて、やっと見つけた席に座って、

ガシガシと食べる人はいないんですね(笑)。

 

フィンランドもスウェーデンも遠いのでなかなか行く機会がありませんが、

行かれる方は参考にしていただければありがたいです。

 

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