とても珍しいオペラを見てきました。
ロッシーニのランスへの旅です。
2019年9月6日。
場所は新国立劇場のオペラパレスです。
秋のオペラが始まりました!
新国立劇場に行くのはちょっと久しぶりです。
私の中ではいよいよ今期の秋のオペラが始まりました!という感じです。
その最初のオペラが今回のランスへの旅です。
ローッシーニがパリに行って最初に作ったのがこの作品。
これを生で見るのは初めて。おそらく会場にいたほとんどの人がそうだったんじゃないかと。
それくらい珍しいオペラですよね。
主催は藤原歌劇団ですが、共催として二期会と新国立劇場合唱団の名前も入っていました。
平日ということもあってか、人に入りは決して多くはなく、比較的高齢の男性が目立ちました。
ただ、満席だから良い上演かというとそういうわけでもないのがオペラの公演で
その点人に入りは多くなかったのですが、今回の公演はとても満足でした。
ランスへの旅というオペラ
一言で言うと、ランスへの旅というオペラは、まさにシャルル10世の戴冠のために作られたんだなあと、というオペラ。
実は私は、アバドたちが復活するまで奇しくも忘れ去られていたオペラっていうイメージを勝手に持っていたのですが、
今回改めて見て、これだけ式典色が強いオペラだと、戴冠ムードが無くなってから上演するのは逆に変だろうなと、だから上演されなくなったのねという実感でした。というのもオペラの後半で
「これから歌を歌いますのでお題を決めてください。」
あれにするか、これにするか‥
「ではシャルル10世!」
なんていうところはまさに式典オペラ。
でもこれがいい歌なんですよね、コリンナの歌が。
お題で歌っているのを聞いていたらなんとなくマイスタージンガーの曲ができていくシーンを思い出しちゃいました。
ランスへの旅演出と音楽
演出
今回の舞台や演出は比較的あっさり系。
というかそもそも舞台はずっとホテルだからセットを変える必要もないですしね。
百合の柄をあしらった壁にテーブルや椅子があるだけのもの。
ランスへの旅は別名「黄金の百合咲く宿」なのでそれにちなんで百合というわけですね。
時代を感じる髪型や衣装は、日本人にもよく似合っていていいなと。
総監督は折江忠道さん、折江さんは歌でも出ていましたね。
そしてやっぱりガラコンサートっぽいオペラだなあと思ったのも事実。
前半は他愛もない好きだとか嫉妬だとかの話。
見どころは後半かなと。
ちなみにこのオペラって1幕だけど意外に長いんですよね。
今日は休憩が一回だったけど結構前半が長くて‥。
初演の当時は休憩は何回だったのか、どこで切っていたのかなというのもちょっと気になりました。
音楽
特に後半は各国の歌が聞けて、歌手の腕の見せどころ。やはり楽しいオペラです。
今回はハープ奏者のみ2度舞台にのっての演奏。コリンナとハープは綺麗でしたねえ。
コリンナの時は他の楽器はなくてハープのみ。ハープって言ってもちょっと小型に見えましたが。
あとフルートもたくさん聞こえてきていましたが
こんなにフルートが長く活躍するオペラも珍しい気がします。
ランメルモールのルチアより大変?と思っちゃいました。とても美しい音色でしたねえ。
途中何度かフィナーレかと思うような壮大な音楽もあったので思わず拍手をして、でも終わってなくてまだ続くという感じも。
ま、そんなことはどうでもよくて、セビリアの理髪師より音楽はずっといいなあと思ったのは私だけでしょうか。
セリアとブッファが両方聞けるっていう感じなんですよね。
目録を作るところなんかは、まさにブッファのロッシーニ。
個人的にはセリアっぽいロッシーニが好きなんですけね。
そうそう、オケなしでアカペラで大勢で歌うところもありました。
いろんな趣向が盛りだくさんのオペラです。
歌と歌手
ランスへの旅の歌について一言でいうなら、とにかく難しそうの一言です。
ベルカント一色。
ランスへの旅って登場人物が多くて、しかもどの役もすごく難しそうな歌があるんですよね。
男性も女性も。
だからとても大変なんだろうなって思いました。
そのかわり聞きごたえがあるから、それぞれの歌手の人たちの歌と技術を楽しめるのがこのオペラの醍醐味。
よくあるガラコンサートだって、ここまで難しいアリアを並べないよねっていう感じです。
一応主役はコリンナとなっているのですが、出番としてはそれほど多くなくて、メリベーア夫人とかベルフィオーレも同じくらい歌っているんですよね。
だからコリンナが主人公なのかな、とちょっと思っていたんですよね、ストーリー的にもコリンナが中心というわけでもないし。
でも今回通してちゃんと見てみると、明らかにコリンナに重きを置いているのがわかりました。
ロッシーニがコリンナのために作っている曲は本当に美しい。
唯一ハープのみで歌うし、明らかに他の登場人物たちの曲とは趣が違うというか
同じ作曲家が作ったとは思えないくらいです。
ロッシーニってセリアの方が意外にいいって私は思っているんですが
こういう曲が作るからやっぱりセリアだよねえって思っちゃいました。
初演でコリンナを歌ったのはジュディッタ・パスタという有名な歌手だったのもわかる、というか
ロッシーニはジュディッタ・パスタをイメージして作ったのかも。
今回コリンナを演じたのは光岡暁恵さんという方。この人がすごく上手いのでびっくり。
持って生まれた声質のよさもあると思うんですが、技術がすごくて、だからと言ってときどきあるような
技術は完璧だけどなんか優等生でつまんないというのも全くなく
高音の美しいこと。歌い方が丁寧でと妖精のような歌は好感度高すぎ!素晴らしかったです。
まさにベルカントにぴったりでルチアとか合いそうですね。
また、コリンナ以外ではやっぱりメリベーア夫人が印象的でした。舞台で目立つ容姿の人だなあと。
このオペラの後半にはいろんな国の雰囲気を出した歌が順番に歌われるんですよね。
今回は国旗も出して。
これって平和感があっていいなあと。
もちろん日本の歌は出てこないけど、親善オペラっていう感じがしました。
今回のオペラはシャルル10世の戴冠という時代を感じるオペラ。
1825年といえば今から約200年近く前のことです。
それでもこうやって音楽がみずみずしく残っているって素晴らしいです。
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