久々の引っ越し公演
ハンガリー国立歌劇場のオペラ「魔笛」をみてきました。
- 日時:2022年11月6日 14時開演
- 場所:東京文化会館にて
久々の引っ越し公演です。
新型コロナの影響で引っ越し公演はすべて無くなっていたので(まあ元々引っ越し公演はそんなに多くはなかったのですが)本当に久しぶり。
3年ぶりです。ようやく‥という思いが見る側の私にもあったので、関係者の方は尚更なんだろうなと思います。
今回の魔笛の印象をひとことでいうなら、おとぎ話なのねという雰囲気が自然に伝わってくる公演でした。(なんか何言ってるかよくわからない‥笑)
魔笛って衣装を奇抜にしておとぎ話感をだしたり、逆にかなりまじめな感じのオペラになっていたりと公演によって違うと思うんですけど、
今回は衣装は比較的オーソドックスな感じですが、まじめすぎず素直におとぎ話としてすんなり見ることができた気がします。
それは最初と最後にジーパン姿という普通の姿になったからなのか、それとも笛や鈴などの小物が凝っていたからなのか、よくわかりませんが、個人的には小物の効果っていうのは割とあるような気はしました。
ハンガリー国立歌劇場はとっても豪華な劇場
引っ越し公演ってどの演目を持ってくるのかなっていうのが気になるし楽しみのひとつなんですけど、今回のハンガリー国立歌劇場はモーツァルトの「魔笛」。
どうして魔笛なのかなとまず思ったのですが、そもそもハンガリー国立歌劇場ってウィーン国立歌劇場と並ぶほどの立派な歌劇場なんですよね。
マーラーが音楽監督をやっていた時期もあったりするし、往年の大歌手たちも数多く来ている劇場。
そんな有名な劇場だから正直どの演目でもおかしくないのねと思ったのでした。
とはいえハンガリーにはエルケルっていう日本ではほとんど知られていないけどハンガリーではかなり有名な作曲家や、あとバルトークなんかもいるけど、さすがにマニアックすぎて持って来れなかったんだろうなあ。
個人的には青ひげ公の城なんかはなまでみてみたいですけど。
今回のパンフレットにはアンドレア・ロストさんの写真が載っていました。
彼女はスカラ座のイメージが強いのですが、実はハンガリーの出身だったんですね。なんと既に60歳!と知ってびっくり。
とても見えなかったです。
演出
日本の最近のオペラ演出は映像を駆使した演出が多くなっていますが、それはハンガリーも同様のようで大蛇や試練の炎、水など映像をうまく使っていました。
セットはそれほど多くありませんでしたが、床を敷き詰めた格子模様。あれはハンガリー国立歌劇場の床に似てるなあと思ったのですが、違うかな。
最初タミーノがジーパン姿だったので現代解釈なのかな?と思ったのですがすぐに王子姿になっていました。
夜の女王を始め衣装は全体に「そうそうこんなイメージだよね」って思う衣装だったのですが、目を引いたのはザラストロの衣装。
一番お着替えをしていたのでは?という目立ちぶりで内心おもしろがってました(笑)。
あと3人の童子の服装が一人は王子風で一人はジーパン姿という全く違うくみあわせで、一瞬ジーパンの人は衣装を忘れた?と思ったのですが、最後にパミーナもジーパンになったことを考えると多分これも意図ありですよね。(よくわからないけど‥)
印象的だったのは何度か降りてきた大きな目が描かれた幕。クリムトの絵のような色彩でとてもインパクトのある幕でした。
舞台は観客を楽しませてくれようとする試みがたくさんで、かたことの日本語も何度も飛び出してまるでオペレッタのよう。
銀の鈴のオルゴールが回ると会場にも光が回ってこちらも楽しい演出でした。
最後には大ジョッキで乾杯!。パパゲーノはビールを一気に飲んでましたねえ。
今までみた魔笛で一番笑わせてもらいました。
死の恐怖に打ち勝つところは棺に入るという演出。
なるほどと思いましたが、炎や水の試練と同様こちらもあっという間の試練。試練が短いんですよねー。
口を聞かない試練だけが長い(笑)
試練は短いのだけど、魔笛って後半がやっぱちょっと長いなあって思うのは私だけ?(モーツァルトの作品になんてことを!っていわれそうですが‥笑)
歌手について
軽やかな前奏がはじまると全体にテンポよく進んでいく感じ。
今回の歌手はおそらくほとんどハンガリーの方だったのかなと思います。
パミーナを歌ったアンドレア・ロストさんは年を重ねても昔のかわいいイメージはそのままで、やはりこの役には見た目共にぴったり。
おそらく母親役の夜の女王とは親子ほどの差がありそうですが、それを感じさせないのがオペラのいいところですよねー。
安定した歌と演技はさすがでした。オペラって同じ歌手をそう何度もなまで見られるものではないと思います。
彼女を見たのはずっと前の日本での公演、スカラ座での公演、そして今回と確か3回目。こうやってたくさん時が流れてまた見ることができたことになんだか感慨深いものを感じてしまいました。
そしてタミーノを歌ったのはゲルゲイ・ウィヴァーリさん。
高音のときに若干はらはらしてしまったけどとても美しい声。
背も割と高いし、見た目の感じと声からワーグナーにも合いそう、マイスタージンガーのヴァルターなんか歌ったら美しいだろうなあと勝手に想像していましたが、さすがにワーグナーは大変かな。
ザラストロを歌ったのはイシュトヴァーン・コヴァーチさん。最初赤い服をいていたので「え、この服?」とおもったのだけどあれは別人だったのか…。たぶんザラストロの最初の衣装だと思うのだけど…。
ザラストロはとても低い声が魅力的ないいお声。
イシス・オシリスが有名だけどこの歌の時は比較的オーケストラが大きめなので、それよりもパミーナに教えを説くところ、こちらはオケも静か目でしっとりと声もよく聞こえてきてきたせいか、はじめてこのシーンの音楽の良さに気づきました。
オペラって何度か聞くとこういう発見があるのも楽しいんですよね。
そして夜の女王を歌ったのはルチエ・カンコヴァーさんという方。
夜の女王らしい衣装に頬は銀色にして冷たい印象を出しているのかなと。
超高音のアリアはとりわけ有名ですが、金属的な高温でそれが役柄に合っていてよかった。やっぱりこの役は若くないと歌えないんだろうなと思います。
人間こんな高い声でるんだ!と思っちゃいますね。会場からも大きな拍手でした。
今回とってもよかったと個人的に思ったのがパパゲーノ役のチャバ・シャーンドルさん。
魔笛はパパゲーノの出番がとっても多いしキーマンと言ってもいいんじゃないかって思います。
タミーノとパミーナは割と普通の優等生キャラなので…。
今回のパパゲーナは見た目もいいけど演技もとってもうまくてお茶目。そのくせ声がめっぽう本格派なのでググっと来る魅力が満載の人でした。
この人にも会場からは大きな拍手拍手。
お相手役のパパゲーナはジョーフィア・ナジさん。
パパゲーナは少ししか出どころが無いんですけど老婆からかわいい女性に変身するので、いつもキラキラしてみえるいい役柄だなって思います。
今回もかわいらしいパパゲーナでした。
三人の侍女は髪色が全く違うので、わかりやすいいでたち。
3人それぞれは上手くてインパクトもあるけど三重唱になると、あんまり合わせようってないのかなって、たぶんこれ国民性とかもありそうですよね。
それはそれで自由で個を感じてしまった(笑)。
あと魔笛ってフルートがとても目立つんですけど最後にフルーティストさんも壇上へ。そういうのも初めて見ました。いいですよね。
最後は長く拍手が続いて壇上の出演者たちもとても満足そうでした。ハンガリーからやっときてくれてありがとう!っていいたいです。
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