2019年3月3日(日)中野ZEROホールで
グノー作曲のオペラ「ロメオとジュリエット」を観てきました。
今回はその鑑賞レビューです。
グノーの5幕オペラ
まず最初に思うのは、このオペラを上演してくれてありがとうという気持ち。
今回のロメオとジュリエットのようなオペラは日本ではまずめったに上演されることがないんですよね。
つまりなかなか生で見る機会がないわけです。
そのため今回のオペラはとても楽しみにしていた公演でした。
会場は中野ZEROホール。
初めて行ったのですが、それほど大きくないホールなので、とても見やすかったです。
雨だったことも影響してか人の入りは半分くらいでした。
せっかくグノーのオペラをやるのにやっぱりこれくらいしか入らないのか‥とちょっと残念が気がしました。
そしてこの気持ちは公演が終わって一層強くなることに。
もったいない!もっと見るべき、きっと見れば好きになるのに、と思う公演でした。
それくらい良かったです。
グノーの音楽はやっぱり素晴らしい、というのを今回再認識しましたね。
実は会場に行くまでは、今回の公演は5幕全部やるのかな?、それとも抜粋なのかな?とそんなことを考えつつ向かいました。
と言うのもグノーのロメオとジュリエットはまともにやると5幕7場もあるし、休憩を入れずに3時間はあるはず。
パリのオペラ座でグランドオペラとしてやったようなオペラを果たしてZEROホールで全曲やるんだろうかと思っていたわけですね。
で結果としては、ほぼ全曲ちゃんとやってくれました。
と言うわけで、このオペラを見ることができたことがまずは私としてはとても嬉しかったわけです。
そしてその内容もとてもよかったです。
第5幕は涙なしには見られないほどの感動。
グノーのオペラってやっぱり素晴らしいです。
ロメオとジュリエット演出
今回は中野ZEROホールということだし、チケットの値段を考えても、グランドオペラのような豪華な演出はもちろん無理よね、
と言うのはわかっていたけど、そういう場合の演出の工夫も実は興味があるんですよね。
舞台セットは同じでも見せ方で場面の変化を感じさせるというのは、よくある演出だと思いますが
今回は大きな門を置いた演出。
この門がパーティー会場になったり、外になったり、ロメオとジュリエットが出窓から愛を確かめあるところになったりと、いろいろに使われていました。
もともと豪華さは求めていなかったので、わかりやすい演出だったような気がします。
とはいえ、衣装はかなりちゃんとしているんだなという印象でした。
それぞれの役柄の雰囲気が出ていました。
そうそう一番最初はまるでひな壇かと思うような演出でしたがもしかして今日が3月3日のひな祭りだったからなのかなと。どうなんでしょうね。
その他は、今風に映像を駆使するわけでもなく、どちらかというとおとなしい演出と言うんでしょうか。
その分、歌と合唱に集中できた舞台だったと思います。
でも3幕の決闘のシーンは迫力がありました。
特に剣が触れ合う音は緊迫感たっぷりでおもしろかったですね。
ロメオとジュリエットの音楽
ロメオとジュリエットは1幕ごとに雰囲気がガラリと変わるので、時間が長くても全く長さを感じないオペラです。
そのメリハリも今回再認識しました。
- 第一幕は躍動的な音楽
- 第二幕は美しい愛の音楽
- 第三幕1場は厳か、2場は決闘の緊迫
- 第四幕は困惑と悲しみの音楽
- 第五幕は絶望のクライマックス
というように5幕あっても音楽の雰囲気がガラリと変わるのでそれがなんとも言えず心地よくて好きです。
このオペラはリリック劇場が初演ですが、オペラ座でもやっているんですよね。
今回このオペラをみて、パリでグランドオペラが栄えた理由が改めて理解できた気がしました。
5幕という長い時間でも飽きない音楽(とはいえ当時は途中から来る人も多かったようですが)になっていて
合唱の効果がやはり特別です。ここぞという時に合唱が盛り上げるんですよね。
19世紀のオペラ座で見てみたかった!と思ってしまいました。
今回の公演全体としては、第一幕の最初のあたりはオーケストラ音楽に歌がうまく乗ってないのかなという感じがしたのですが、
それは本当に最初だけで、全体としてはとても素晴らしかったです。
第一幕はワルツが印象的なのですが、一触即発の雰囲気から1幕の最後に再び豪華なワルツが流れるところ、
あの音楽の変わり方がすごく好きなんですよね。
そして第二幕のグノーらしいというかロメオとジュリエットらしい二人の愛のシーン、ここはやはりうっとりする音楽と場面でした。
そして最も盛り上がる第三幕は1場の神父さんのシーンが厳かな音楽でこれがまた良くて
後半の2場は打って変わって決闘のシーン、これもハラハラする緊迫感たっぷりでした。
そして5幕がやはり感動的だったのは主役二人の演技と歌唱の力が大きかったのかなと思います。
歌手について
では歌手についてです。
今回のロメオとジュリエットで最も特筆したいのはやはり主役の二人ではないでしょうか。
演技がうまくて歌も最高でした。
演技は、こんなに自然な仕草と表情を出しながら且つ歌える人もなかなかいないんじゃないかというくらい素晴らしい二人でした。
ジュリエットを演じたのは梅津碧さんという人。
高音が難なく出せる人で、夜の女王をやったことがあるというのも頷けます。
清楚な雰囲気は役柄にぴったり、何より自然な演技がとてもよかったです。
第一幕のジュリエットのアリアはこのオペラの中で最も有名かもしれません。
この難しいアリアを素晴らしくこなしていたと思いますが
私自身がこのアリアがすごく好きなわけでもないからか
梅津さんの良さは、この有名なアリア以外の、特に後半になるほど良さが出ていたような気がします。
本当に愛し合っている二人の雰囲気がよく出ていました。
またロメオ役は城宏憲さんという人。
この人がまた上手くてびっくりでした。
上品な見た目も艶やかな声もロメオにぴったり。
グノーのロメオとジュリエットは、ロメオにすごく情熱的な良い曲を作っているなあと私は思うのですが、
その素晴らしいロメオの曲をこの城浩憲さんというひとは、この上ないほど素晴らしく歌っていました。
すごく安定した声で、イタリアオペラや、カルメンのホセも確かにぴったりの感じ。
2幕の愛の歌は最後の高音もバッチリで、感動的。
4幕の二重唱も有名だけど私は5幕の方がさらに良かったです。
5幕のロメオはまたまた曲が良い上に素晴らしい演技と歌で
涙なしには見られなかったです。
今回のロメオ役は本当に最高でした。
日本のテノールの層は厚いんですね。
次回はエロディアードにもでられるようで、そちらもできれば見に行きたいです。
神父役は森田学さんというバスの方。
若い神父さんでしたけど、低い声が魅力的でした。
私は三幕1場の厳かな音楽、特に結婚の誓いをする時の神父さんの曲が大好きなので、
今回も素晴らしい歌に堪能しました。
厳かなのに華やかさがある第三幕1場は良いですね。
その他メルキュシオ役の和田ひできさんといういう人もベテランなのか、素晴らしい声でした。
第三幕の決闘でティバルトが死んでしまった後の合唱がなんとも効果的であのシーンも好きなんですよね。
今回合唱は30名弱だったと思いますが、あの広さの会場なら十分の人数だったんじゃないかと思います。
諸所に出てくる合唱はやはりフランスのこの時代のオペラならではという感じで、いいですね。
第三幕はブラーボ!をたくさん言いたかったけど言えないので心の中で言いました。
やはりグノーの曲は気品があるし、大好きなオペラです。
上演は難しいかもしれませんが、また見たいオペラですね。
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