愛の妙薬・新国立劇場の解説とレビュー

2018年3月18日(日)

新国立劇場にて「愛の妙薬」を見てきました。

 

このオペラを劇場で観るのはとても久しぶりです。

私の場合、最初オペラをずっとビデオで見ていたのですが、

初めて劇場に足を運んだのが、この愛の妙薬でした。

 

今回久しぶりに観て、最初に選んだのがこのオペラだったのは、いい選択だったんじゃないかなと思いました。

時間も短いし、明るく楽しいオペラです。

愛の妙薬の特徴

このオペラの特徴をあげるなら

  • 2幕で約2時間なので、時間が短め。
  • 管弦楽が大仰ではないので歌が聴きやすい
  • ストーリーがわかりやすく笑いもあり楽しい
  • 音楽も聴きやすい
  • 合唱が多め

 

このオペラは2幕しか無いので、休憩が1回、

前半約1時間、後半も約1時間

合計2時間のオペラです。

 

休憩を入れても2時間半で終わりますので

オペラとしては短い方ですね。

 

全体に、軽めの声の歌手が歌いますが、ストーリーもわかりやすく

管弦楽も控えめなので、声も聴きやすく、字幕を見ながらにはなりますが、歌の内容もよくわかります。

 

ここ最近は、ワーグナーリヒャルト・シュトラウスのオペラを続いて観ていたのですが、

愛の妙薬は全くタイプの異なるオペラです。

 

ドニゼッティのオペラを聴くと、管弦楽の音が小さいので、軽い声でもよく聞こえるなあと

改めて思いましたね。

 

ワーグナーを歌う人は、管弦楽の音が大きいので本当に大変です。

 

さて、このオペラのキーマンはインチキ薬売りのドゥルカマーラじゃないかと思うんですよね。

主役のネモリーノとアディーナの両方と軽妙にやりとりがあるし、

最終的には二人を結びつける役柄。

 

ちょっと悪いやつだけど、根っからの悪じゃない、そんな憎め無い存在です。

 

かつてジュゼッペ・タッディという有名なバス歌手がこの役をやったのですが、

当時すでに高齢で、正直なところ、あまり声は出ていなかったのですが、なんとも言えない雰囲気と演技で盛り上がっていました。

 

ドゥルカマーラって重要な役どころなんだな、と思ったものです。

今回のレナート・ジローラミもとても良かったです。

 

やっぱりドゥルカマーラはどっしり太っていて、表情に愛嬌のある人がいいです。

 

前回の新国立劇場の愛の妙薬でも、レナート・ジローラミがこの役を演じたようですが彼の当たり役になるかもしれないですね。

 

今回の新国立劇場の愛の妙薬の主要キャスト4人は、みんな素晴らしかったです。

このオペラは、普段オペラを観ない家族や友人を誘うのにもってこいじゃないかなと思います。

 

それにしてもアディーナという主役の女の子は、純朴なネモリーノをちょっともてあそぶような娘です。

綺麗で、人気者で自分で私はかわいい!と言い切っていますからね。

 

そのくせネモリーノが自分の方を見ていないとおもしろくないから、あてつけに婚約しようとする。

ちょっと怖いくらいの身勝手な性格です。

 

対するネモリーノは、朴訥、純朴で、要領が悪くて馬鹿にされるタイプの青年。

二人とも、こういうタイプはいますよね、現代にも

 

最終的には二人は結ばれるのですが、結婚してもきついだろうなあ、

ネモリーノは苦労しそう‥という二人です(笑)。

 

アディーナ以外の村の娘たちも

ネモリーノに叔父の遺産が入る、と分かった途端目の色が変わって

結婚相手にちょうどいい!と色めくあたり、なんとも女性は怖いですねー。

 

このオペラ愛の妙薬はトリスタンとイゾルデという中世の媚薬の物語が軸となっているのですが

ワーグナーもこの題材で「トリスタンとイゾルデ」というオペラを作っているんですね。

 

そちらも素晴らしいのですが、暗く延々と続く愛と死の曲で、暗い結末のオペラです。

元は同じでもずいぶんと違ったオペラができたものです。

 

ドニゼッティの愛の妙薬はとにかく音楽がチャーミングです。

思わず行進したくなるような、楽しい旋律から、しっとりとしたアリア

 

そして、その両方を組み合わせた二重唱など、緩急あり、で引き出しがたくさんある作曲家だと思います。

しかもドニゼッティはこのオペラをたったの2週間で作ったといいますから、まさに天才とはこのことですね。

 

ランメールモールのルチアのような悲しい悲劇オペラと、愛の妙薬のような喜劇的なオペラの両方をささっと作っちゃうんですよね。

 

 

新国立劇場・愛の妙薬の演出

 

今回のオペラ愛の妙薬は

新国立劇場の2017-2018のシーズンオペラの一つです。

 

新国立劇場はシーズンで10個のオペラをやることにしているようで、

愛の妙薬はシーズンの7つ目のオペラですね。

 

新国立劇場では、オペラの料金体系を0から4までの5種類に分けていて、0がもっとも高額、4がもっとも安くなっています。

パンフレットをよく見ないとわかりませんが、シーズンでスケジュールが決まっているところ、

値段が決まっているところなど、日本も海外のオペラハウスのようになってきましたね。

 

愛の妙薬については、料金体系は2なので、ちょうど中間ですね。

演出の豪華さとか、出演者の知名度などで変わるんでしょう。

(ここまで見ている自分がちょっと怖いのですが‥笑)

 

ちなみにもっとも高い0ランクなのはアイーダの上演です。(そうでしょうね、アイーダはゼフィレッリの演出で豪華絢爛ですから)

今回の愛の妙薬の演出は、題名から取ったELISIR(妙薬、秘薬、霊薬)の巨大なアルファベットオブジェが使われている以外は

比較的シンプルな舞台でした。

 

扉も家も台もELISIRのオブジェの一部をつかっていました。

あとはトリスタンとイゾルデの本のモチーフがあちこちに使われていましたね。

椅子や扉や、幕、台など。

 

というわけで舞台セットはどちらかというと前衛的でした。

スペインの片田舎を思わせるセットではありませんでしたね。

 

でも今回の新国立劇場の愛の妙薬でもっとも特徴的だったのはやはり衣装でしょう。

とにかくカラフル!

ネモリーノの髪は赤毛で服は上下とも派手な緑。

 

アディーナはショッキングピンクの洋服と純白の髪。

中でも私が一番気に入ったのはドゥルカマーラのチェックの衣装。

あれは素敵で良かったです。

明るい色、色、色・・

それだけで楽しくなりました。

 

私は明るい色が好きなので、思いっきり明るい舞台と衣装って良かったです。

 

ただ、一つ気になったのは、最初にアディーナがメガネをかけていて、白髪だったので、おばあさんかと思ってしまいました。

本を閉じたらメガネも外したので、老眼鏡みたいだったし‥。

あれはどうなんでしょうね。

 

話が進むと純白の髪も気にならなくなりましたけど。

上にも書いたようにこのお話は現代にもあちこちにいそうな男女の恋の駆け引きの話なので、

時代設定はスペインのバスク地方でなくてもいいですもんね。

 

色合いだけでいうと、若干無機質感、ロボット感はありましたけど。

 

新国立劇場の演出は、今回両脇の柱に、トリスタンとイゾルデの名前が貼ってありましたが、

前回のホフマン物語では、3つの扉に、オペラ、ドンジョバンニにでてくる3人の女性の名前が貼ってありました。

 

新国立劇場の最近のお気に入り演出なのかなと?、ちょっと感じました。

本当のところはわかりません。

 

愛の妙薬、歌と音楽

 

今回久しぶりにドニゼッティのオペラを見て

やっぱりロッシーニに似てると思いました。

 

ロッシーニはセヴィリアの理髪師が有名ですが、ドニゼッティとほぼ同じような時代に生きている人です。

囁くように歌い始めて繰り返していくところは特に感じましたね。

 

時代の特徴と言っていいかもしれません。

 

ほとんど管弦楽とともに歌ってすすんでいくのですが、

時折チェンバロでレスッティーボが入るあたりや

短調の音楽の最後だけ長調にするっと変わるのも、古い時代の名残りという感じがします。

単調は不吉とされましたから。

ちなみに日本の歌はちょっと寂しい感じの短調が多いですよね。

 

私などはチェンバロが入りすぎると若干飽きるので、ドニゼッティの愛の妙薬くらいの入り方が適度でちょうどいいなと感じました。

 

キャストについては、新国立劇場のお決まりのやり方と言って良いと思いますが、

主要キャストは外国の歌手オーケストラと、合唱は日本人、というやり方でした。

主役4人のうち3人は外国人歌手、1人だけ日本の大沼徹さんでしたね。

 

アディーナ役

ルクレツィア・ドレイという人。

パンフレットを買ってないので彼女の経歴はわかりませんが、名前からすると

イタリアの人かなと。ルクレツィア・ボルジアというオペラがあって、イタリアの人なので。

艶のあるよく通る声の人です。

この役はリリコレッジェーロという軽いソプラノかなと思うのですが、

この人はもう少し強い声の役でもいけるんじゃないかなと思いました。

ただ、小柄なので、若干、役柄は限られそう。

 

オペラの主役級になるとやはりある程度背があった方が舞台映えがして得な気がします。

コロラトゥーラの技術も高くて、見た目が美しいのでこうもりのアデーレなんかも合いそうですね。

あとはモーツァルト、ロッシーニででしょうか。

ネモリーノ役

ネモリーノを歌ったのはサイミール・ピルグという人です。

伸びやかな声で素朴な雰囲気もでていました。

パバロッティの再来とも言われているようですね。

 

ただ、そんな風に言われる人を何人も聞いてきたので、

歌が上手な人はみんなそうやって言われるのかな、と最近は思うようになってきました。

 

ピルグという人の声はレチタティーヴォがとてもよく通る声です。

こんなにレチタティーヴォが聞こえやすい人も珍しいのではないかと。

それだけ、そこにも発声にかなり気を配っているんでしょうね。

 

ネモリーノのアリア「人知れぬ涙」はこのオペラでもっとも有名です。

前後ではとてもよく声が出ていたのに、肝心のこのアリアの時はちょっと緊張していたのかなとおもいました。

声の伸びがいまひとつだったような‥

まあ、大声を出すようなアリアではないのですけどね。

 

ちょっと気になったのは、このアリアの時は、舞台にいっさい、何もない状態になったんですよね。

そこまで全て取っ払っちゃうかな、というくらい何もない状態です。

ハラハラと紙が上から落ちるだけ。

舞台の上で一人ぽつんと立って歌う、という状況。

これっていくら慣れた人でもちょっと辛いんじゃないかな、思ってしまいました。

ファン・ディエゴ・フローレスをちょっと思い出す艶のあるリリコ(リリコレッジェーロかな)でした。

 

ベルコーレ役

今回ベルコーレを演じたのは、主要キャストでは唯一日本人の大沼徹さん。

この方は何度か見ていますが、たぶんすごく真面目な方なのかなと思います(歌を聞いた感じだけからですが)。

大沼さんのベルコーレはかっこよくて色男、というより優しい良い人っていう感じが出ていました。

声もマイルドですよね。

と言うわけで男性が二人とも優しそうで、全体にほんわかした感じの、ラブコメディーありのオペラでしたね。

 

 

その他の音楽について

ドゥルカマーラは最初にも触れたように、舞台の引き締め役で、とても良かったです。

そしてジャンネッタは、未来のアディーナかな、と感じました。

ジャンネッタは吉原圭子さんという人。澄んだ声です。

 

このオペラでもっとも有名なのはネモリーノの人知れぬ涙ですが、

実は私がもっとも印象に残るのは2幕最初の宴の曲です。

 

みんなで歌う、2拍子のような、調子のいい曲で、度々転調しながら進んでいく音楽です。

愛の妙薬と言うと、私はこちらの音楽の方がすぐに浮かんでしまうんですよね。

つい体を揺らしたくなるような楽しい曲です。

 

次回愛の妙薬を見る時は誰かを誘って行こうかなと思います。

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