かビゼーのカルメンを見てきました。新国立劇場の2020−2021シーズンオペラの最後の演目です。
2020年10月新型コロナ禍の中の夏の夜の夢ではじまった今シーズンでしたが、今回のカルメンまでようやくたどり着いたのかなとなんとなく感じてます。大変だったんじゃないのかなあって。ずいぶんキャストも変更になっていましたし‥。
そんなシーズンでしたが、最高のラストだったんじゃないかなと私は思います。それくらい良かったです。
カルメン演出など
- 2021年7月11日
- 新国立劇場オペラパレスにて
- ビゼー作曲「カルメン」
会場はほぼ満席かという人の入りでやっとオペラもコロナ禍を脱出しつつあるのかなと感じました。
入場者カードの記入や体温測定などはもう当たり前の感があります。場内で飲食を売っていないのはやっぱり寂しい気がしますがそれもあと少しの我慢かなと思っています。
今回のカルメンは1、2幕を続けてから休憩の後3、4幕を続けての上演。休憩は一回だけなので長めのカルメンも3時間強で終わりました。私の記憶では1、2幕を続けちゃうのはあまりなかったと思うのですが、これもありかですね。
休憩については今は喫茶も無いし、おしゃべりもしちゃいけないので、やたら休憩があってもやることがないっていうのが正直なところだったので少なくてよかったかなと。
字幕は日本語と英語の両方。これも最近の傾向かと思います。
さてテンポの早い序曲が威勢良くはじまると幕がすぐに開いて出てきたのは(表現は悪いのですが)マンションの大規模な足場を組み合わせたような巨大な金属の格子状のもの。舞台全体にあっていかにも現代的。
新国立劇場の演出はいつも凝ってますよね。最近は映像を駆使した舞台も多くなっていますが新国立劇場のように舞台セットにこだわっている感じも私は好きです。オペラらしいというか生のオペラを見ている感が強いから。
今回のカルメンは現代解釈のようで服装も現代風。中でもミカエラのパンツ姿は初めてかも。
そもそもカルメンって時代はいつだっけ?と思ったら19世紀前半、場所はスペインのセビリアでした。
内容的には確かに現代解釈もありなんだなと今回見ていて思いました。
舞台の上にはさらに一段上がった舞台があってカルメンとエスカミーリョはそこでマイクで歌うというまるでフェスのようなセット。オペラでちょっとしたフェスを見ました(笑)
残念だったのはバレエがなかったこと。でも新型コロナ禍の状況で仕方ないのかなあと。4幕冒頭はちょっと寂しい感じがしましたけど我慢我慢。
音楽と歌手について
今回の指揮は大野和士さん。シーズン最後はもしかしていつも大野さんなのかなと思います。
正直音楽的な専門はわからないのですが、時々公演で感じるちぐはぐ感とかが全然なくて、迫力とか絶妙!うーんこれこれっていう超満足感でした。
特に第2幕の出だしはかなりゆっくりで小さめな音で始まったのが徐々に速く盛り上がって頂点に達した時のワクワク感はほんと最高でした。血が騒ぐとはこのこと(笑)。
カルメンは女声合唱、男声合唱、混成、それに子供の合唱まであるという合唱の醍醐味もあると思っているのですが、
合唱は最初ちょっとおとなしめかなと感じました。そのうちそうでもなくなったのですが。
今回子供の合唱は男の子だけ。ボーイソプラノだけというのもちょっと珍しい気がしました!子供の声にはいつも癒されます。
そしてなんといっても圧巻だったのがやはりカルメン役のステファニー・デュストラックさんというメゾソプラノ。
カルメンって演技が上手な人がやるイメージは今回もやはりそうで、歩き方から小さな仕草まではカルメンでした。
そして歌い方が個性的というか、まずフレーズの出だしの声がすごくインパクトがある独特の声の出し方。
それに強弱のつけ方が絶妙で少しモワンモワンする感じ、それがカルメンにぴったりで、あと声色が変わるんですよね。普通は同じ人が多いと思うのですが。
とにかく引き込まれる歌い方と声。それになんといっても声量もすごい。40代後半らしいけどかなり若くみえました。というわけで今回ダントツに素晴らしかったのはやはりカルメンでした。世界にはすごい人がいるのねと。
ホセ役は村上敏明さん。もともとは海外からの歌手の予定だったと思うので新型コロナで変更になったのかなと思います。
村上さんはワルキューレのジークムントと昨年のリゴレットで見て以来。
ネクタイを締めたサラリーマン風の衣装で登場。
ワルキューレの時もそうでしたが、正直いってちょっとハラハラしちゃいました。特に高い声が出るかな、割れちゃうんじゃないかなとすごく心配で。
またホセって4幕でどんな演技を見せてくれるかなっていうのがカルメンの楽しみのひとつなのですが、その点は声でいっぱいなのかなあと申し訳ないけどそんな風に見えちゃいました。
4幕では気の強いカルメンなのに迷いとかホセへの恐怖感が見える演技だった(それがすごいなあと思ったのですが)だけに、せっかくのそれが浮いちゃった感もあった気がしました。
でも村上さんの声っていかにもイタリアオペラにあいそうな(今回はフランスだけど)すごく艶のある声で見た目も優しそうでホセ役にぴったり。こういう声質の人って日本にはなかなかいないって思います。すごく丁寧な歌い方だし。そして花の歌はやはりよかった。胸をはだけた時のバラの絵にはちょっと笑でしたが‥。
ナイフを持った時にナバラ風と言われていたセリフには今回初めて気づきました。ホセはナバラ地方の出身だったわけですね。セビーリアからはかなり離れてるのね、とそんなことも頭をよぎってました。
エスカミーリョ役はアレクサンドル・ドゥ・ハメルさんというバリトンかな。最初地味な服で登場したので、エスカミーリョも地味なんだ‥とちょっと残念に思っていたら、4幕ではド派手な赤い衣装!しかも体も衣装も巨大サイズ。最初の地味な服はこれを際立たせるためだったのかなと思ったのでした。
ただ体の割にはちょっとだけスカスカ感のある声質で音楽に遅れそうってちょっと気になった所もあったけど最終的にはそれも気にならず。伸ばしの時の声はブワーッと届いてさすがの声量でした。この巨体なら牛にも負けなそう(笑)
ミカエラを歌ったのは砂川涼子さん。確か2018年のカルメンでもミカエラを歌っていたと思います。
カルメンって良いフレーズがすごく多くて見るごとに好きな所を新たに発見していくんですけど、最近好きなのがミカエラがでてくるところのしっとりめの曲です。今回ホセとの二重唱が美しくてすごくよかった。ここの曲が一番好きかもって思ったくらいでした。
スニガ役は妻屋秀和さん。王様の役とか長めの衣装のイメージが強くて、舞台上で普通のスーツ姿を見たのが久しぶりの気がしました。なんか若々しく見えました。
そしてフラスキータ役の森谷真里さんの声がまた素晴らしかったです。森谷さんは劇場支配人で見て以来ずっと印象に残っている方ですけどやっぱりよかった。もうすぐルルにも出演されると思うのでますます楽しみになりました。
などなど。
そうそう3幕冒頭の間奏曲はやっぱり美しかったです。ああいう中で美しい音色でフルートを聞かせてくれるってあたりまえかもしれないけどプロってやっぱりすごいなあと思ったのでした。
シーズン最後のカルメンは拍手拍手で大満足。オペラってやっぱり楽しい!
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