珍しいオペラ
2021年1月6日。今年最初のオペラに行ってきました!
場所はオーチャードホールで二期会の公演。
演目はサンサーンスの「サムソンとデリラ」です。
緊急事態宣言が出る直前で、まさか中止とかないよね?と若干しんぱいしたものの予定通り開催してくれてよかった!久々感じた感動の公演でした。
このオペラを生で見るのは初めてです。
フランスの作曲家なのでパリあたりではよく上演されているのかもしれませんが、日本では滅多に上演されないオペラなので。
だからとりわけ楽しみにしていました。絶対にみたい!と。多分一生で一度生で見られるか見られないかだと思うんですよね。オペラってそういうもんです。
会場はマスク必須、検温、入場者カードの記入と言う流れ。(この流れにも慣れてきました)
喫茶は新型コロナ対応のため、開けていない場合もあるのですが、オーチャードホールはちゃんと開けてくれていました。やっぱり喫茶がないと殺風景な感じがしちゃうんですよね、私は。
さて観客は満席とはいかないけど、もともとちょっとマニアックなオペラだしそれは仕方ないのかも。こういうオペラの時って男性が多めなんですよね。と言うわけで本日も男性が目立ちました。ちょっとオタクっぽい人も(笑)
ちなみに歌う人はコロナ対策のシードとかマスクはなかったです。これも公演によりけりで、聞いたところによると年末の第九ではマスクで歌っていた公演もあったとか。ちゃんと声は聞こえてきたらしいですけど。
オーケストラの方達は黒いマスクに統一していました。服も黒いので一瞬つけているかいないかわからないくらいでした。
演出について
今回の形式はセミステージ形式ということで、オーケストラの前には簡単な台がいくつかある程度。
あとは後ろに薄い幕があってそこに映像が映し出されていました。
合唱は全員薄い幕の後ろに立っていて、これはコロナ対策もあるのかも。
映像を見ていてフィデリオの公演をなんとなく思い出したんですよね。おそらく同じ人が作ったのかな?。映像も作る人の個性が出る気がします。
二期会の公演の映像ってちょっとあたたかいイメージの映像で私は好き。
映像があるだけですごくイメージが膨らむものだなと最近の公演を見て感じてます。
サムソンとデリラって最後の神殿の柱が壊れるところがクライマックスでどう演出するのかって思うところなんですけど、映像に神殿が写っていたので
これで壊れる感じを出すのかなと予想するのもちょっと楽しかった(実際そうなりました)
第三幕ではサムソンは、柱は無いけどちゃんと鎖もあってかわいそうな感じで感じで繋がれてました。
あと映像でのデリラのイメージは大きな花。蕾が開いてさらに色が変わっていくところはすごいなあと感心。すごく清楚な花だったけどデリラだからもっと毒っぽくてもいい気もしたけど、実際舞台上のデリラも毒っぽい花というイメージではなかったので合っているといえばそうだったのかも。
これは演じる人によるよねと。今回のデリラ役池田香織さんにはこの花は合っていた気がします。悪い女性に見えなかったので。
そして満点の星空も美しい音楽にぴったり。
あのエゴン・シーレ風のちょっと変わった絵は誰のだったんだろう。
思ったより音楽がずっと良かった
今回の公演の感想を一言で言うなら、思っていたよりずっとサンサーンスの音楽がよくて
最初から最後まで音楽が良すぎる!こんなによかったっけ?と思いました。
今回は指揮者が新型コロナで2回変更になったかと。結果すごく若そうな指揮者が登場。全身を使った大きな指揮、よく疲れないと思うほどでした。
サムソンとデリラはもともとオラトリオとして作ったというだけあって合唱がとてもオラトリオっぽいんですよね。
出だしからいかにもっていう感じの音楽と男性の合唱で始まって
「あ、オラトリオだ」と思う。
マタイ受難曲かなんかを聞いているよう。
そして最初の合唱のところで、「ああ、今日来てよかった!」と。こういう感じの合唱って普通のオペラには無いよねえ。(何が違うのかはよくわかりませんが…)
でも2幕になるとオラトリオ風なところは全然なくて普通にオペラ。
2幕には合唱がないんですよね。
つまり1幕と3幕がオラトリオ風、そして2幕はオペラ。そんな感じかなと思いました。
そして2幕も3幕も始まる時指揮者はそっと入ってきてました。拍手で雰囲気が途切れないようにとのことなんでしょうね。
2幕の秘密を言ってしまうあたり、あそこらへんは盛り上がる音楽でしたねえ。
第三幕の有名なバッカナールのところはセミステージ形式なのでバレエはなし、第一幕のデリラが登場した後もほんとはバレエが入ったりするのかも。
普通バレエが入るところでバレエが無いと間延びしたりする気がするんですけど、バッカナールについては音楽がすごくいいので、バレエが無くても全然大丈夫!何なら音楽に集中して聞けるからいいかもと思ったくらいでした。
サンサーンスって映画音楽のさきがけの人っていうだけあるなあと今回見て改めて思いました。盛り上がるし情景が浮かぶっていうか。
オペラってアリアとか部分的に良いところがあるけど必ずしも最初から最後まで音楽がずーっといいっていうわけでも無いと思うんですね。と言うかそういうオペラってあんまり私の中では無いかも。
そんな中でずっといいのはベッリーニのノルマだ!じゃなかったらワーグナーだ!って思っていた時期があったんですけど、
今回サムソンとデリラをみて、このオペラも最初から最後まで音楽がずっといい!と思ったのでした。
まず各幕の出だしの音楽が良くて(特に3幕の頭が好きかな)、合唱音楽が美しい(第一幕の「イスラエルよ鎖を断ち切れ…」や第三幕の「朝の風に吹かれて…」が特に良かった)
こういう合唱はやっぱりアマチュアじゃなくてプロの美しい声で聴きたいよねえとも。
サムソンとデリラって日本では割とマイナーなオペラだと思うんですけど今回生で見て、音楽がずっと良くて飽きないし、ストーリーはわかりやすいし、バッカナールも超有名だから初めてオペラを見る人でも大丈夫なんじゃないかなとちょっと思いました。音楽を楽しめるオペラ。
私はうちに帰ってからもバッカナールを再度聞いちゃいました。(生の方が数倍迫力があってよかったけど‥)
歌手について
というわけで合唱もすごーく良かったんですけど、今回歌手の人たちも素晴らしかったです。
正直言ってサムソンとデリラってすごく個性的でドラマティックなオペラだと思うので、日本人にできるんだろうかと悪いけどちょっと思ってました。
でも終わってみれば拍手拍手!。会場の人の入りは決して多くはなかったけど、私の周りの人たちも一生懸命拍手してました(もちろん私も)それくらい満足の上演でした。
何と言っても一番印象的だったのはサムソン役の福井敬さん。つやのある声はもちろんなんですけどこの方の一番すごいのは歌で伝える演技力とでもいうのかな。
仮に突っ立って歌っても福井さんの場合、歌だけ聞けば気持ちや情景が切々と伝わってくる気がします。一つの音だけでこんなに表現できるんだといつも感心しちゃうくらいこの方の声の表現力ってすごい!って思います。
日本のドミンゴっていう感じ(と勝手に思った…)
最後の「ジュテーム!」はとりわけ良かったです。
今回のサムソンは強い男というより、デリラ大好き!で骨抜きにされちゃった~っていう感じが強いサムソンだったかな。悲哀がすごく伝わってきました。
サムソンを骨抜きにするデリラ役は池田香織さんというメゾソプラノ。
もともとメゾの声って好きなんですけどやっぱりいいですよねえ。色っぽい役ならやっぱりメゾかと。とても艶のある素晴らしい声でした。
ただ経歴を見てしまったせいか、妖艶というよりどうしても才媛に見えてしまった。(髪が短いから活発な人に見えてしまったのかも)
「愛よ弱い私に力を貸して、あの男の胸に毒を‥」とか「足元に跪かせる」とかデリラの言葉は怖いけど音楽はとてもきれい。
そして有名な「君の声で我が心は開く」のアリア。これを生で聞くことができたのは本当によかった。やっぱり素晴らしい曲でした。
ダゴンの大司祭役はバリトンの小森輝彦さんで存在感たっぷり。
老ヘブライ人役は妻屋秀和さん。こういう役の声は本当にぴったり。敬虔な気持ちになってしまいます。
髪を長くしていたので、黙っているとこっちがサムソン?にちょっと見えたかも。
あと、アビメレクは背の高いジョンハオさん。
などなどでした。
いずれにしても心が洗われるような公演でした。セミステージじゃなく本格的なステージでバレエも入れると演出によってはとても豪華なオペラになりそうな作品なのかなと。
コロナ禍なので声は出しちゃいけないけど、もし大丈夫なら絶対ブラボー!が出ていたこと間違いなしだったと思います。
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