1日で二つの短いオペラを見てきました。
モーツァルト作曲の
- バスティアンとバスティエンヌ
- 劇場支配人
というオペラです。
劇場支配人は、アリアの醍醐味を凝縮したような素晴らしい曲ばかり。
一方バスティアンとバスティエンヌの方は、モーツァルトが12歳で作ったとは思えない曲。
特に序曲が立派で驚きでした。
今回の公演は、調布市の音楽祭の一環です。
ちょっと遠かったのですが、劇場支配人が見たくて調布まで足を伸ばしてきました。
会場
会場は、調布駅前のグリーンホールという1300人程度収容できるコンサート用の会場。
舞台には古楽器の管弦楽がいて、前で歌手が歌うというセミステージ形式。
舞台セットなどはありませんが、管弦楽の人たちも演技に参加するという趣向を凝らした演出で、なかなか楽しかったです。
このオペラは調布市の音楽祭の一環でしたが、調布市は音楽に力を入れているのだなという印象。
比較的マニアックな演目にもかかわらず、会場はかなりの人の入り。
また、会場のロビーではレストラン・スリジェのシェフが白い服に白いコック帽を被って、軽食やお菓子を売っていました。
あの洋服で立っているとすごく美味しそうに見えるんですよね(笑)。
今回の上演は、アリアは原語。
セリフは日本語というちょっと変わった上演方法。
原語の際は、会場の前方脇にちゃんと字幕も出ていました。
バスティアンとバスティエンヌ
この曲はモーツァルトが、わずか12歳の時に作曲した曲なのですが、
堂々とした序曲から、まず驚き。
セリフの入ったジングシュピール形式ですが、セリフは多くなく、ほぼアリアで繋がっているようなオペラです。
物語後半のバスティアンとバスティエンヌがよりを戻すまでのやりとりは若干単調な感じがしましたが、
それでもやっぱりすごいと思ってしまう音楽。
他の女性に気を取られてしまったバスティアンと、それに気を揉むバスティエンヌの
ラブストーリーなのですが、
気の無いそぶりをして気を引くところなど、
恋の駆け引きのオペラです。
それを、12歳のモーツァルトが作ったというのは、大人顔負け。
魔法使いのコラが変な擬声語で、まじないをかけるシーンのアリアは特におもしろく
魔笛の夜の女王のシーンが浮かんできました。
全体にはかわいらしい曲といった感じでしょうか。
歌手は3人だけですが、3人とも楽譜を持ちながらの歌と演技。
そのためか、なんとなくリハーサルに見えてしまったのですが、
プロンプターもないし、譜面台を置いて歌うよりはというところだったのでしょう。
管弦楽の人達も一役買っての演技で、全体として見ている人を楽しませることに徹している舞台という感じでした。
見ている人たちもリラックスして見ているようでしたし。
本来オペラの鑑賞は、こういうものだったのだろうなと思いながら、楽しませてもらいました。
セリフはかなり調布用にアレンジされていましたが、それがまた笑いを誘っていました。
劇場支配人
この、モーツァルトの「劇場支配人」は、ウィーンのシェーンブルン宮殿において、
サリエリの「まずは音楽、それから言葉」と、競演したという演目。
- モーツァルトはドイツのジングシュピール
- サリエリは、イタリアのブッファ
という、競演だったようですが、当時の観客の反応はどんななものだったのかというのは、わかりませんが
興味あるところです。
今回モーツァルトの劇場支配人を見る限り、こんな見応えのある短いオペラが他にあるだろうか、と思ってしまうのですが、
それくらい、劇場支配人のアリアは素晴らしいです。
今回12歳の時のモーツァルトの作品・バスティアンとバスティエンヌを見てから
30歳になった時に作曲した、劇場支配人を見ると
モーツァルトの熟練ぶり、成長ぶりがあまりに顕著というか極めていて、その違いに驚くばかり。
劇場支配人の方のアリアは、数は少ないのですが、アリアの醍醐味を凝縮したかのようなアリアです。
- 憂いを含んだアリア
- 楽しく軽やかなアリア
- 超絶技巧を駆使したアリア
- 高音を駆使したアリア
それに加えて、
「アダージョ」と、「アレグロ」という言葉をそのまま歌詞にして、
- アダージョのアリア
- アレグロのアリア
まで入れてしまうのですから、なんというか
モーツァルトは、やはりすごい!と思っちゃいました。
アリアってこんなにいろいろあっておもしろいというのは、この劇場支配人を見るだけでわかるのではないでしょうか。
劇場支配人はもともとは20分程度のオペラだと思うですが、
こちらも調布音楽際に合わせて、楽しいセリフがたくさん。
そのくせ歌は一流なので、私を含め会場の人たちはおそらく満足して帰ったのではないかと思います。
アリアのたびに拍手をする間を与えない演出もよかったと思います。
劇場支配人は、オペラの舞台裏を描いた短いオペラなのですが、
今回オペラ歌手を演じたのは、
森谷真理さんと中江早希さん。
森谷さんは貫禄の歌唱で、高音になる程豊かな響く声になる素晴らしい声でした。
また中江さんの方は、超高温にもチャレンジ難しいアリアをこなし、
チャーミングな演技で盛り上げていました。
また男性は、櫻田亮さんと、加耒徹さんで二人とも芸達者。
歌もさることながら今回は見る人を楽しませてくれる演出の数々のおかげで楽しい公演でした。
劇場支配人は、なんども見たくなるオペラ。
もっともっと、あちこちで取り上げてもらいたいです。
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