アマールと夜の訪問者・メノッティのほんわかオペラ

今回もメノッティのオペラです。

「アマールと夜の訪問者」を見てみました。

メノッティのオペラを見るのは「電話」「霊媒」に続いて3作目です。

電話はハッピーなオペラ、そして霊媒は暗いオペラでしたが、

今回の「アマールと夜の訪問者」ほのぼのオペラです。

今まで見たメノッティのオペラの中では個人的にはこの作品が一番好きかも。

メノッティの音楽にも慣れてきて、メノッティ風っていうのが少しだけわかってきた気がします。

言葉ではうまく説明できませんけど‥。

メノッティ「アマールと夜の訪問者」ってどんなオペラ

メノッティって分類的にはアメリカオペラになっているのですが、本人はイタリア生まれの人なんですよね。

イタリアからアメリカに渡ってきた人です。

アメリカのオペラっていうと日本ではガーシュインの「ポーギーとベス」の方が有名だと思います。

メノッティって言ってもおそらく知ってる人はほとんどいないんじゃないかと。

実は私も知らなかったです。

でも、オペラ本を見るとメノッティのオペラってたくさん載っているんですよね。

ガーシュインよりも多い。

だから「メノッティのオペラってどんな作品なんだろう」とずっと気になっていたのですが、でも見ていないという状況が続いていました。

やっぱりヴェルディとかプッチーニとか、メジャーな作曲家のオペラの方をみたいのでそっちを見ちゃうんですよね。

まあアメリカは後でいいかと、そんな感じです。

この度新型コロナウィルスの影響でオペラ公演も次々に無くなってしまうし、本当は私は「オペラは生で見たい派」なのですが、じゃあ映像で見るしかないかあと思い、見始めたのがきっかけです。

メノッティのオペラって短めだしと言う気楽さもありますね。

メノッティを見るのも3作目になるとなんとなく音楽の特徴っていうか雰囲気がわかってきて、

で、メノッティがヴェルディやプッチーニと並んでオペラ本に載る意味がわかってきたっていうか

魅力がわかってきた気がするのです。

メノッティの魅力を私なりに一言でいうなら、エキゾチックで、ちょっと現代音楽で聞きにくいか?というところもあるのに、びっくりするくらい美しい!と感じる旋律がしばしばでてくる。

そんな感じでしょうか。

特にアマールと夜の訪問者についてはこのイメージがぴったり。「うわあ!ここ良いわあ」と思う旋律が処処に‥。

だからアメリカを代表するオペラ作曲家なのねと納得してしまうのでした。

さて、アマールというのは貧しい少年の名前。夜の訪問者というのは旅の王様たち

なんとなく日本の昔ばなしの笠地蔵を思い起こしてしまうようなお話です。

心の美しいアマールに神様がご褒美をくれる、そんなストーリーです。

メノッティって1911年生まれで2007年に亡くなっているのでオペラではごく最近の人なんですよね。

ヘンデルとかモーツァルトとは200年以上も違う世代の人なのです。

アマールと夜の訪問者の初演は1951年

しかも初演がテレビというのが現代的です。やはり200年も違うとオペラも違ってくるわけです。

初演はテレビオペラだった

テレビオペラっていう言葉は最初しっくりこなかったんですよね。

劇場で生の公演を撮影したオペラをテレビで流すというのはよくあることですよね。

または映画のように作られたオペラをテレビで流すということもよくあります。

でもテレビオペラっていうのはそれとは違うのです。

テレビオペラというのは、もともとテレビで上演するために作られたオペラなんですよね。

そこがすごく違う

日本だとテレビのためにっていうと、今ならまずドラマなんかがうかびますよね。

テレビ用のオペラっていうのは、おそらく日本では無いんじゃないかと思います。

少なくとも私は知らないです。

テレビでオペラ歌手が歌を披露することはあっても新作オペラをテレビで初演するなんて聞いたことがないので

ところがこのアマールと夜の訪問者はテレビ用のオペラとして作られたわけです。

アメリカ的だなあという気もします。

  • 初演は1951年12月24日
  • NBC放送にてテレビ放送

NBCっていうのは1941年にはじめてテレビ放送を開始した放送局で、今もあります。

初演当時の1951年はまだテレビは白黒の時代なので、アマールと夜の訪問者も白黒だったわけですね。

また、12月24日というクリスマスの時期だったわけで、確かにぴったりの内容だと思います。

そして今もクリスマスに上演されるオペラになっています。

クリスマスオペラといえばはフンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」」っていうイメージがありますが、それだけじゃないんですね。

考えてみたらテレビが始まった頃って今みたいに制作会社もなかったわけですから、何を放送しようかって考えたときに劇場のような公演をそのまま放送しようっていうのは当然考えたと思うんですよね。

日本でもテレビ初期には、劇団の公演とか人形劇とかをけっこう放送していたみたいですから。

でもってオペラをやろうってなったんだろうなと思うんですよね。

内容的に大人から子供まで見られる内容になっていますし。

母親役はローズマリー・クールマン

当時初演のテレビ放送で主役の二人を演じたのは

  • アマール:チェト・アレン
  • 母親:ローズマリー・クールマン

という人。

その後少年役はいろいろ変わっていったらしいんですけど、母親のローズマリー・クールマンの方はこの役を何度もやっていたようなのです。

メゾソプラノで、初演当時は29歳。

で、この方は97歳で亡くなっていて、亡くなったのはつい昨年(2019年)のことです。

日本では知られていませんが、アメリカではそれなりに有名な人みたいですね。

今ってオペラ歌手の場合、ある程度舞台などで有名になるとテレビに出たりテレビで放送されたりしますけど、無名な人ってほとんど出ませんよね。

でもこの人についてはまさにテレビの黎明期にテレビで有名になったオペラ歌手だったんだろうなと思います。

当時はまだまだテレビを見られる人は少なかったとはいえ、一度にアメリカ中の人に名前が知られたわけですから。

ちなみに私はこの人のものは映像では見たことがありませんが、映像も残っているみたいです。

そのうち見てみたいものです。

こんな風に、アマールと夜の訪問者は最初がテレビ放送で、そのあと舞台でも上演されたというちょっとおもしろい経緯のオペラなわけです。

アマールと夜の訪問者・見どころ

主役のアマールは心がとても美しく足が悪いのに自分の大事な杖さえ人にあげてしまうという少年。

そして杖をあげた途端、アマールの足は治って歩けるようになるという心温まるお話です。

母親の方はあまりの貧しさから、旅の王様の宝物を盗んでしまうのですが、そんな母親のことも

アマールはかばうんですね。

物語の場所はベツレヘム近郊。ベツレヘムという場所はキリスト生誕の地と言われているところです。

まず序曲からしてほのぼの感あふれる音楽。これを聞くだけで物語の雰囲気がわかります。

私がとても好きな部分です。

ローズマリー・クールマンのことを前述しましたがオペラとしてはやはり注目はアマールの方です。

アマールは少年役で、オペラの場合少年はしばしば若い女性が歌ったりしますが、

アマールはボーイソプラノが担当することが多いのだそうです。

ボーイソプラノの澄んだ濁りのない素直な声は、この役にドンピシャで、一番の見どころ聞きどころだと思います。

美しいボーイソプラノの声には心が洗われる気がしますね。

ずっと聞いていたいと思ってしまう。

印象的なシーンとしては3人の王様達がやってくる時の音楽。なんとなく私はここで笠地蔵を思い出します。(なんでかな)

また、王様が何度か扉を「トントン」と叩きますが、そのあとアマールが母親にそれを告げに行く時の音楽も耳に残り見どころ。

話がちょっと逸れますが、メノッティって、オペラ「電話」で電話が鳴ってそれをルーシーがとり「ハロー、ハロー!」というシーンが何度かありそのの曲も印象的だったんですよね。

それと、このオペラのドアを叩く音のあたりはなんとなく似ていてメノッティらしい気がします。

3人の王様のうちの一人は耳の遠い王様で、ちょっと茶目っ気があります。

そして3人の王様はそれぞれテノール、バリトン、バスが担当しているんですよね。

つまりこのオペラは1時間という短いオペラだけど、いろんな声がちゃんと楽しめるオペラです。

ソプラノ(ボーイソプラノ)、メゾ、テノール、バリトン、バスが皆主たる役ででてくるからです。

王様は3人とも同じように立派な服をきているのですが、声質が全然違うのでそれがおもしろく、見どころだと思います。

しかも演出によりますけどバレエも入るんですよね。角笛のような楽器が入る村人達の踊りのシーンです。

3人の王様と母親の合唱のシーンのすばらしく、教会にいるかのようでここも見どころ。

敬虔な気持ちになります。

そしてアマールが歩けるようになるシーンはなんとも感動的です、ウルウル‥。

短いけどすごく楽しめるようにできているオペラだと思います。

クリスマスにふさわしいですね。

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