スペインのオペラもあった
今回はマヌエル・デ・ファリャと言う人が作った「はかなき人生」というオペラについてです。
初演は1913年、場所はニースのオペラ座でした。
初演はフランスのニースになっています。もともとこのオペラはスペインのコンクールで優勝したオペラで、優勝作品はマドリードの劇場で上演されるはずだったのですが、それがなくなってしまい、結局ニースでの初演となりました。
1905年に作曲してから8年もたってからのことでした。
ファリャはその頃パリに留学していたんですよね。
ニースでの初演の翌年には故郷スペインのマドリードでも無事に上演されたようです。よかった!
さてこの作品を見てまず感じたのは「ひさしぶりにおもしろいオペラに出会った」という感動。
そして「まだこんなすごい作品があったなんて」という驚きでした。
それくらいインパクトがあるオペラです。
どんなオペラなのかを私なりに一言で言うなら、とにかく情熱的、まさしくスペインのオペラそんな感じです。
ちなみにニースでの初演はフランス語だったようですが、もともとスペイン語のオペラです。
そしてスペインは古くから(オペラの原語はイタリア語が主流だった頃から)スペイン語が使われていた傾向がある、そんなお国柄のところでもあります。
だからこそだと思うのですが、スペイン色がものすごく強いです。
19世紀後半ごろから国民主義と言ってオペラもその国や民族の独自の色を出していこうっていう風潮がヨーロッパ全体で強くなっていきますけどこのオペラのスペイン色はとりわけ濃いんですよね。
最初から最後までスペイン一色!そんな個性的なオペラだからか、私などは見るとザワザワと血がさわぐ感じがします(笑)。
スペインには「サルスエラ」っていう音楽劇があるんですよね。
スペイン語で書かれていて叙情的な音楽で、セリフが多いのですが、セリフがあるといっても系統が違うのでオペレッタとは言わないと思うので、やっぱりオペラの一種と言っていいのかなと思います。
ファリャもサルスエラを作っていたようで、「はかなき人生」もいちおうサルスエラの部類になるのかなと、時代が新しいのでロマンティックサルスエラっていう類なのかも。
その辺の分類のことはよくわかりませんがまあとにかくスペインのオペラですね。
そうそうサルスエラってお料理の名前にもなっています。魚介料理、ブイヤベースみたいなやつです。
ちなみにファリャは1876年生まれなので作曲した時は29歳でした。まだ若い!
スペイン舞曲が有名
実はファリャっていう作曲家を私は全然知りませんでした。
でもヨーロッパがユーロになる前にペセタっていうスペインの紙幣にはファリャが載っていたと聞くとちょっとびっくり!そんなに有名な人なのねと。知らなくてちょっと恥ずかしい‥。
ファリャというとオペラは知らないけどスペイン舞曲の方なら知っているという人もいるのではないでしょうか。
「はかなき人生」の第二幕結婚式のシーンではお祝いの踊りがあって、そこで流れる二つの舞曲がスペイン舞曲1番と2番として有名なんですよね。
クライスラー編曲のバイオリン曲が有名です。
これをバイオリンで聞くとスペイン的でいいなあと思うんですが、本物つまりオペラの中で聞くともっとずっといいのです。
カスタネットや他の楽器が入るし踊りもあるから迫力が全然違うんですよね、「おお!本物はこういう感じかあ」っていう感動もの。
そうそうファリャってパリに行くんですけどパリで最初に認めてくれたのがポール・デュカスだったらしいんですよね。
あとドビュッシーとも親交があったのだとか。
デュカスっていうのはオペラ「アリアーヌと青髭」を作った人です。
そしてドビュッシーは「ペレアスとメリザンド」を作った人。
二人ともメーテルリンクの青ひげを元に作った作品っていう共通点もある人たちなんですよね。
そういう作曲家のつながりを見つけるとなるほどねえ、と思ってそれもまた楽しいところです。とはいえこの3人の音楽は全然違うなあと思いますけど。
簡単あらすじ
では簡単あらすじを書いておきます。
2幕ありますが全体でも1時間程度の短いオペラです。
ストーリーもわかりやすいのであっというまの1時間だと思います。
場所はスペインのグラナダ。
貧しいジプシーの娘の悲しい恋の物語です。
第一幕は貧しい娘サルーの家。
弱った小鳥をみてまるで孫娘サルーのようと心配する祖母。
サルーは恋人のパコが来るのを今か今かとを心待ちにしています。
そこへパコがやってきて二人は愛の言葉を交わすので祖母も少しホッとするのでした。
そこへ祖母の弟のサルバオールが血相を変えてやってきて、「パコが今度の今度の日曜日に金持ちの娘と結婚する」と伝えます。
祖母はことを荒立てないよう弟をなだめます。
第二幕はパコの結婚式の場面。
大きなお屋敷ではカルメラとパコの結婚式が行われています。中を覗き込むサルーの姿も。
中ではフラメンコが繰り広げられて楽しそうですが、悲しむサルー。
そこに祖母とサルバオールもやってきます。
サルーがパコを呪う歌を歌うとその声が聞こえてパコが青ざめるので心配する花嫁。
我慢が出来ずに中に踏み込むサルーとサルバオーレ。
「私と愛を誓ったのに」と叫ぶサルーに対して、パコは逆上して「この女を叩き出せ」と叫ぶのでした。
それを聞いたサルーはショックのあまり崩れ落ちそのまま死んでしまいます。
祖母は泣きながらサルーに駆け寄りパコを責め、「神よ」と悲痛な叫びをあげて幕になります。
そんな簡単あらすじです。とても悲しい物語です。
はかなき人生の見どころ
冒頭の音楽から結末を予感させる悲しげで熱い音楽。
これほど民族色が強いオペラがあったのねと思うのではないかと思います。
聞きなれない言葉に感じるのはスペイン語だからかも。
フランス語版もあるので、どちらなのかは確認しておくと良いかと。
音楽全体に叙情的、情熱的で聴きやすいので見どころ聞きどころですが、一番はやっぱり第二幕のスペイン舞曲のところが圧巻で見どころかなと。
スペイン舞曲は2つ出てきて、1番の方が有名なのですが、2番目のスペイン舞曲の方は入る前の「え!?これから一体何が起きるの?なになに〜!」っていう感じで盛り上がって始まるのですが、この時のゾクゾク感が半端ないです。
なのでスペイン舞曲2番の始まる前の部分も個人的には大好きで見どころ。
舞曲に関しては、踊りがあるかとかどんな踊りかとか人数、衣装などは演出は色々だと思います。
本格フラメンコが見たいですねえ。
第一幕のサルーのアリアも独特でスペインだなあと思います。熱くて惹きつけられるアリアで聴きどころ。
一幕と二幕の短めの間奏曲も美しくてスペインぽくて聞きどころ。
合唱も諸所に出てきますが時折カンタータのように聞こえるのはなぜだろう。
第二幕冒頭のお祝いの席の男性歌手の歌がとても異国情緒たっぷりでこちらも見どころ。
そして結婚式を見て嘆くサルーのアリアは本当にかわいそうで辛そうです。
生で見ていなくても終わると思わず拍手したくなるようなオペラです。そういうのって珍しいなと思うんですよね。
久しぶりに見つけた大好きなオペラです。
熱い音楽といえばこれまでプッチーニだったのですが、ファリャを聞いてからはこっちの方が熱いと思うようになりました。
このオペラはスペインの人じゃないとできないんじゃないかと思ってしまうオペラなのでした。
日本で上演するのは結構難しいのかもしれないなあ。ぜひ見たいけど‥。
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