さまよえるオランダ人が好きになる・見どころと簡単あらすじ

今回はオペラ「さまよえるオランダ人」についてです。

ワーグナーのオペラの中では有名な方のオペラだと思います。

というのもワーグナーのオペラで有名な演目というのは、バイロイトの演目でもあるんですね。

バイロイト祝祭劇場というところはワーグナーが作った劇場なのですが、

ここでは上演する演目が決められていて基本的に7つなんですね。

さまよえるオランダ人はその中の一つなわけです。

 

さまよえるオランダ人の伝説

 

さまよえるオランダ人の題材はもともと伝説から来ていてちょっと不思議なストーリーなんですね。

神を呪った罰で死ぬことも生きることもできず、永遠に海をさまよい続けるという運命の幽霊船の話なのです。

幽霊船に乗っているのはオランダ人船長で

彼は7年に一度だけ陸に上がることができ、その時永遠の愛を捧げる女性が現れれば呪いが解けるということなのです。

そしてその運命を救うのがゼンタという純粋な娘なのです。

これはヨーロッパに古くから伝わる伝説から来ているんですね。

 

その伝説とは、

かつてオランダ船が現在のアフリカ南端の喜望峰沖を航行中に嵐にあってしまいます。

船は遭難して全員が死亡するのですが、のちに喜望峰沖でその船を見たという情報が広まり幽霊船伝説ができたようです。

嵐の際、船長が神を呪ったため永遠にさまよう罰が降りたということなのです。

 

さまよえるオランダ人はこのヨーロッパに伝わる伝説とハイネの小説などが元になって、ワーグナーが構想を得たといわれています。

 

そしてワーグナーはこのオペラ以降の作品についてのみバイロイトの劇場で上演すると決めたのです。

つまりこの作品以降がワーグナー自身が納得するワーグナーらしい作品だということなのだと思います。

さまよえるオランダ人以降のオペラに共通しているのは、レチタティーヴォがなく音楽が切れ目なく脈々と続く特徴で、まさにワーグナーらしい世界ですよね。

 

さまよえるオランダ人の特徴

 

バイロイトで上演される演目というのは

の7つなのですが、これらのオペラは総じて時間が長く

3時間半から4時間半近くある中で、さまよえるオランダ人だけは約2時間ちょっとで終わるので短いという特徴があります。

そのため「ワーグナーのオペラを見るなら最初はさまよえるオランダ人がいいよ」

と何度か言われたことがあります。

単純に時間が短いという特徴があるからとっかかりやすいということだったんですね。

 

バイロイトにおいてはさまよえるオランダ人は休憩なしで一気に上演しますから、2時間ほどで終わります。

確かに短いんですよね。

時間的には短いから見やすいのですが、私の場合は最初このオペラを見てもまったくピンと来ず

結果として最も時間の長いニュルンベルクのマイスタージンガーを見たときに

初めてワーグナーが好きになりました。

そのため、何を最初に見ると良いかは、時間という特徴だけじゃないかもね、という気がしています。

そして、さまよえるオランダ人のもう一つの特徴として主役がバリトンということがあると思います。

ワーグナーのその他のほとんどのオペラはテノールが主役級になっていて、

など皆テノールなんですね。

そんな中さまよえるオランダ人はバリトンが主役です。

ゼンタに思いを寄せるエリックと舵手がテノールなので、テノールもいることはいるのですが、

やはり目立つのはタイトルロールであるオランダ人役のバリトンになっているのです。

さまよえるオランダ人は全体に話が暗い上に主人公がバリトンなのでかなり地味なイメージがあるんですよね。

とはいえ、最初の荒れ狂う海の様子など、全体にワーグナーらしい迫力のある特徴のある音楽です。

 

初演はドレスデン宮廷歌劇場

 

さて、さまよえるオランダ人は1843年にドレスデン宮廷歌劇場で初演されています。

現在のドイツのドレスデンにあるゼンパーオーパーの前身ですね。

実はワーグナーがさまよえるオランダ人を作曲したのはパリの場所でした。

ワーグナー自身が船でパリに渡る際に嵐にあい、その経験がきっかけとなりこのオペラを書いたと言われています。

そしてワーグナーはパリでの上演を望んだのですがそれは叶わず、ドレスデン宮廷歌劇場での初演となったんですね。

 

とはいえ、このドレスデン宮廷歌劇場という場所は後から見ると、まさにドイツらしいドイツのための歌劇場になっていくのでぴったりの場所だったと言える気もします。

ドイツの東側にはこのドレスデン宮廷歌劇場のほかに、現在のベルリン国立歌劇場(当時は王立歌劇場)もありました。

ここでは1821年にウェーバーの魔弾の射手が初演されています。

ウェーバーといえばワーグナーが尊敬してやまない作曲家でもありました。(私が大好きな作曲家でもあります)

ワーグナーはウェーバーのオペラを見て感動し影響を受けたと言われるんですよね。

ではベルリン国立歌劇場の方がよかったんじゃないかと単純に思うのですが、

当時のベルリン国立歌劇場は、ドイツオペラというよりどちらかというとフランスやイタリアの影響が強かった歌劇場なんですね。

というのも当時の音楽監督を見ると

  • 1820年からはスポンティーニ
  • 1842年からはマイアベーア

が就任しているのです。

スポンティーニはイタリア出身でイタリアのオペラセリアを作る、パリで活躍した人

マイアベーアといえばパリのグランドオペラを確立した人

という風にイタリア、フランス色が強いのがわかりますよね。

 

またワーグナーが尊敬したウェーバーは、魔弾の射手こそベルリン国立歌劇場での初演でしたが、

その後はドレスデンの宮廷楽長となり、ドイツのオペラをドレスデン宮廷歌劇場を足場として定着させているのです。

つまり当時ドイツオペラといえばドレスデンの方だったんですよね。

現在に至るまでドレスデン宮廷歌劇場(現ゼンパーオーパー)では魔弾の射手が非常に多く上演されることを見ると、この傾向は今もずっと続いているのかもしれません。

そんな歌劇場だったからこそワーグナーのオペラが受け入れられたのでしょう。

ワーグナーはこの歌劇場でまずリエンツィというグランドオペラを上演して成功し

そのあとこの場所の音楽監督になり、さまよえるオランダ人を初演したんですね。

と言うと華々しく聞こえるかもしれませんが、なかなか上演場所がなかったと言うのが当時としては本当の所のようです。

パリでの上演は叶わなかったけど、ドレスデン宮廷歌劇場で上演することができたというわけですね。

そしてドレスデン宮廷歌劇場はワーグナーの元でしばらくワーグナー、ウェーバー、グルック、ベートーベンという

いかにもドイツらしいオペラを上演する歌劇場になるわけです。

なんだか自分で書いててゾクゾクしちゃいます(笑)。

タンホイザーもこのドレスデン宮廷歌劇場が初演の場所なんですよね。

でもその後ワーグナーがいなくなってしまい、ドレスデン宮廷歌劇場はしばらくしょぼくれてしまうのですが‥。

もっと後でリヒャルト・シュトラウスが出てきますがそれは20世紀に入ってからのことなんですよね。

 

さまよえるオランダ人の上演時間と簡単あらすじ

 

ではこの辺で簡単あらすじと上演時間を書いておきます。

上演時間>

  • 序曲:約10分
  • 第一幕:約50分
  • 第二幕:約35分
  • 第三幕:約35分

合計で2時間ちょっとの上演時間なので、ワーグナーの中ではとても短いです。

バイロイトでは休憩なしで一気に上演されますが

通常は休憩が1回または2回入ると思います。

最近は3幕の場合、第2幕を前後で分けて1回の休憩にするケースもありますが、

さまよえるオランダ人においてはそれはないと思います。切れ目が難しいと思うので。

 

さまよえるオランダ人簡単あらすじ

舞台はノルウェーの海岸。(オペラではノルウェーになっていますね)

さまよい続けた幽霊船は7年に一度上陸できます。

上陸してオランダ人はゼンタの父ダーラントに会います。

オランダ人の呪いが解かれる唯一の方法は永遠の愛を捧げる乙女が現れること。

オランダ人はダーラントの娘に求婚し、ダーラントも承諾。

その頃すでにゼンタは自分こそ伝説のオランダ人を救う人物だと確信しているんですね。(なぜかわかりませんが)

そこに本当のオランダ人が現れたので二人は愛を誓うわけです。

ところがゼンタに思いを寄せるエリックがこれを遮ったため、オランダ人は絶望して船に乗り込むのですが、

健気なゼンタは海岸から海に身を投げて永遠の愛を誓うのです。

すると呪いは溶けてゼンタとオランダ人は昇天する、というあらすじです。

 

ゼンタの無償の愛というか崇高な愛なのかもしれませんが、

なぜそこまで?と思ってしまうのは私だけでしょうか。

ちょっと不思議な自己犠牲と永遠の愛だなと思ってしまいます。

とはいえ、ワーグナーのローエングリンを見てもただただ信じることを妻エルザに望むところは

同じく通じるものを感じるので、ワーグナーらしい女性の理想像なのかもしれません。

でもゼンタは幸せなのか不幸なのかどっちなんだろうと不思議に思ってしまうのも事実。

そんな女性いないかも‥って。

さまよえるオランダ人2019.4月東京春祭レビュー

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