ウェーバー作曲のオペラ「魔弾の射手」を見てきました。
場所は上野の東京文化会館。
開演が18時半と若干早めなのは、オペラの時間が長めだからですが、
おかげで21時半には終わったのはやはりありがたいです。
今回は一幕と二幕を、休憩なしで続けての上演。
最近は、なるべく長時間にならないよう主催者側もいろいろと工夫をしてくれていると感じますね。ありがたいです。
上演形式
なかなか上演されないオペラなので、非常に楽しみにしていたオペラです。
感想を一言でいうと、やはりウェーバーの音楽はすばらしいという一言につきます。
今回の魔弾の射手は二期会の公演。
3階席以上は空席もちょっと目立ち、比較的男性が多いかなという印象。
- セリフは日本語
- それ以外はすべて原語(ドイツ語)
という上演形式。
日本語と原語が混ざる公演は久しぶりで、最初だけちょっと違和感を覚えましたが、
ジングシュピール形式で、セリフが長いこのオペラの場合、日本語の方が確かにわかりやすいですね。
字幕を見ずに済みますから。
また、上部に英語の字幕もあり、日本語と英語の二部仕立ての字幕という上演形式。
海外では、二ヶ国語の字幕を見たことがありますが、
日本では初めてみました。
それだけ海外のお客様が増えたということでしょうか。確かに私の近くの席にもいましたね。
ちなみに昔ハンブルクではドイツ特有のオペラがあったのですが、そのころはドイツ語とイタリア語が混在していたと言います。
魔弾の射手のやり方はある意味それに似ているのかなとちょっと思いました。
入り口に入って、まずお祝いの花が多いことに気がつきましたが、ほとんどの花は元宝塚の大和悠河さんへの花。
前回のローエングリンの時もそうでしたが、最近の二期会はオペラ歌手以外の人を使うのがちょっとブームなのかなと。
役は悪魔ザミエル。セリフのみで歌はありません。
オペラなので体格の良い人が多い中で、大和悠河さんはとりわけスリムなので、
個人的には私の中のザミエル像とはちょっと違っていましたが、舞台慣れした見せ方はさすが宝塚の人、という感じ。
ファンらしき人たちが、固まって見ている感じでしたね。
二期会は、いろんな方法を試みているのかなと思いました。
これについては賛否両論はあるのかもしれませんが、オペラファンが増えるなら、結果として上演されるオペラが多くなるので良いと思います。
なんでもやってみないとわからないものですしね。
目を引いたのは確かです。
演出
舞台の方でまず目を引くのは、赤いエレベーター。
1階から7階までと地下は、「狼」と言う文字。
場所の変化をエレベーターで表すという演出なのだと思います。
知り合いのオペラ好きの人に魔弾の射手を見に行ったといったら、狼谷の演出はどうやってた?と速攻聞かれました(笑)。
やっぱりそこって気になるんですね。
今回の場合、舞台の変化で狼谷だということはしっかりとわかったので、エレベーターはなくても大丈夫だったかなとはちょっと思いますが、
今回の二期会の公演は、エレベーターの他にも
光や不気味な音、声、古めかしいテレビに映るカスパールなど、
細部まで様々な工夫が施されており飽きない演出。
飽きるような音楽ではないと思いますが、目でも楽しめます。
事実私も、3階席の後ろの方から聞こえてくる不思議な声の方を何度か、つい見てしまいました。
いろいろ施された演出のためか、1幕はちょっとミュージカルっぽい感じすらしました。
また、前半の最後には1階の扉を開けて光を入れていましたが、上から見ると光の帯が入ったようにみえて、
あれはなかなか良かったです。
また、最も盛り上がる2幕で3つ目の弾が出来たときに、上から大きなセットが降りてくる演出は迫力があって良かったですね。
衣装については、カスパールは非常に要となる役で、悪役だけどかっこよくあってほしいというのが、個人的にはあります。
今回はちょっとしょぼい感じの衣装。
ただ、悪魔役のザミエルがかっこよく決めていたのでその兼ね合いもあるのかと思います。
またマックスは、やはり短パンより長いズボンの方が良かったのでは?と個人的には思っちゃいました。
狩人は、森に行くのに短パンを履くのかな?
足が出ていたら危ないんじゃないかと余計なことを考えました(笑)
とはいえ、音楽と歌がよければすべてよしがオペラかなと。
ウェーバーの音楽があれば、十分にストーリーや場面の変化は感じ取れましたし、服装も気にならなくなったのも事実。
それくらい、ウェーバーの音楽って情景が浮かぶ旋律です。
音楽
指揮者の入場に気づかず、いきなり始まった序曲にちょっとびっくり。
それでも、序曲はやはり最高。
4本のホルンが奏でる牧歌的な出だしは、印象的です。
これほどメリハリのある音楽が、凝縮された序曲も少ないのではないかと思うような最高の序曲です。
1786年生まれのウェーバーは、ドイツのドイツらしいロマンオペラの元を作り、
ワーグナーにも影響を与えたと言われるのですが、
今回改めて見てそれを強く感じました。
ワーグナーの楽劇を、ちょっと荒削りにしたかのようなところがあるオペラです。
一方でモーツァルトっぽい、ちょっと時代が戻った感じの部分もあります。
ロマン派オペラの特徴がはっきりと現れているのは、やはり2幕の狼谷のシーン。
弾が一つづつ出来ていく際の、緊迫感溢れる音楽は、ゾクゾクするほどすばらしかったです。
個人的にはここがやはり一番好きですね。
6つ目の弾ができるときに序曲の有名な旋律が流れますが、あのときが頂点の迫力です。
まるでワーグナーそのものと思う部分さえありました。
ウェーバーの音楽は、力強いアリアあり、繊細で美しいアリアあり、
また、陰と陽、緩と急、喜びと哀愁など誠に多彩な音楽です。
とても一人の作曲家が、紡ぎ出したとは思えないようなオペラです。
また楽器、特に管楽器がとても美しく目立つのこともウェーバーの音楽の特徴で、
モーツァルトやベートーベンのフィデリオには無いものを感じます。
ホルンを始めオーボエやフルートなどが非常に効果的で、美しい音色に思わずオーケストラに何度も目を運びました。
3幕が始まるときのホルンの旋律やチェロの旋律など、言い出したらきりがないほどですね。
もっともっと注目されても良いオペラではないかと、改めて思いました。
歌手
今回、歌手はダブルキャストの公演。
セリフ、歌、共に多く、重要な役の一人、カスパールは清水宏樹さんというバリトン歌手。
細身の身体なのに、発する声は堂々とした低音で、魂を悪魔に渡したうらぶれ感が出ていてよかったです。
また、アガーテ役の嘉目真木子さんは、清楚な見た目がアガーテにあっていましたが、
声質はメゾソプラノかと思うような声。
あれ、アガーテってメゾが歌うんだったっけ?と一瞬思ってしまいました。
ソプラノなのに、低音が響く人で、落ち着いたどちらかというと大人っぽい声質。
まだ若い人だとは思いますが、情緒のある声質は思いやりのある母親役なども合いそうな気がしました。
2幕のアガーテの祈りは有名ですが、
3幕の祭壇の前で祈るアリアの方も素晴らしく美しい曲。
ずっと観客に背中を見せての歌唱でしたが、せめて後半だけでもこちらを向いて歌って欲しかったとちょっと思いました。
いろいろと工夫が施された今回の公演。
ウェーバーの音楽を堪能し、目にも耳にも楽しめました。
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