霊媒メノッティのオペラ・インチキ霊媒師にだけ聞こえる不気味な声

今年は新型コロナウィルスの影響で、買っていたチケットの公演が次々に中止になってしまいました。

考えてみればオペラって生きていくためにどうしても必要なものではなかったんだなあと改めて思う一方で

必要じゃないけどわざわざチケットを買って劇場に見に行くっていう、その特別な感じが良かったんだなあと改めて思うのでした。

チケットの払い戻しも何回したことか。

今ってコンビニで簡単にできちゃうんですよね。

すぐにできちゃうものだから、そのまま持っていれば来年使えるというのを知る前に払い戻しをしちゃったチケットもありました(^_^;)

サムソンとデリラだったかな、そのまま持っていればよかった。まいっか、また買えば。

メノッティの霊媒を見てみた

さて今回はメノッティの霊媒というオペラについてです。

メノッティはアメリカオペラの部類です。(本人はイタリアの出身なんですけど。)

実は私はメノッティのオペラってほとんど見たことがなかったんですよね。

どうして見なかったかっていうと、

時代が20世紀で新しいこと、そしてアメリカオペラということで、

「おもしろくないんじゃないか」

という私の偏見と勝手な思い込みがあったのです。

それより他にヴェルディとかワーグナーとか見たいオペラがたくさんありましたし、

そもそもメノッティのオペラってほとんど上演してないんじゃないかなと。

メノッティのオペラで最初に見たのは「電話」っていう1幕ものでした。すごく短いオペラです。

題名からしていかにも新しい感じだし、アメリカっぽいですよね。

電話というオペラを見ておもしろかったから、霊媒も見てみようと思ったかというと

そうじゃなくて、

むしろ「電話」っていうオペラはうーん、なんだろうなあ、おもしろいんだけどやっぱりアメリカっぽい。

女性が自己主張強い感じとか‥、あっけらかんとしてる感じとか。

これってミュージカルでよくない?

って思ったんですよね。

ところが、「電話」のことをいろいろ読んでみると、電話は「霊媒」っていうオペラを上演するときに

一緒に上演するものとして作られたっていうのをみて

あれ?「電話」って付属的な存在なのかなと。

だったら本編はどんな作品なんだろうと思って、ざっとあらすじを見てみたら

え?全然違う‥、電話とは180度違うオカルト系の話。

メノッティって一体どっち系の作風を作る人なんだろう、と興味が湧いたわけです。

それで霊媒を見てみよーってなったんですよね。

で、「霊媒」を見た感想を一言でいう

  • こっち(霊媒)の方がおもしろい
  • とはいえ「霊媒」と「電話」のセットはすごくいい組み合わせ。陰と陽っていう感じ。

だと思いました。

霊媒はインチキ霊媒師の話・不気味な声の主は

霊媒の初演

  • 作曲:メノッティ(台本も)
  • 初演:1946年
  • 場所:コロンビア大学劇場

プッチーニのオペラで三部作っていうのがあるんですけど、あれはプッチーニがすごく3つのバランスとか考えて作ったらしいんですよね。

(今はバラバラで上演されることが多いので、きっとプッチーニの本意ではないと思うんですけど‥)

メノッティの「霊媒」と「電話」を見ると、二つ見てちょうどいいなと、特に「電話」の方の良さもわかった気がしたんですよね。

それくらい霊媒はちょっとオカルトっぽい話なんですよ。

もっとも、初演のコロンビア大学ではこの作品だけの上演だったらしいんですけど、ちゃんと劇場でプロによる上演のときに電話とセットになったみたいなのです。

劇場でやるには霊媒は短すぎるから何かもう一つ、というのもあったんでしょうね。これは想像ですが。

霊媒の簡単あらすじ

霊媒ってババって言うインチキ霊媒師の話なんですよね。

ババは死んでしまった子供の霊と話ができるっていうインチキ占いをやっていて、

霊だと思うのは実は自分の子供たちに手伝わせて霊の声とか姿をやらせてお客を騙しているわけです。

子供のうち一人はもらい子で口がきけない男の子のトビー

もう一人は実の娘のやさしいモニカ

霊媒師のババはあるときから本当におかしな声が聞こえるようになってきて、恐怖で精神がおかしくなっていくんですね。

それでおかしな声を出しているのはトビーの仕業だろう、と疑うのです。

精神がおかしくなっていくのかバチが当たってしまったのか、その辺は見る人の想像ですが、

最終的に、トビーが疑われたまま、殺されてしまうのです。拳銃で

ストーリー性が高い

かわいそうなトビー、

モニカはトビーが好きだったんですよね。

霊媒は救いがないまま終わる話で、ちょっと映画っぽい感じもします。

なんとも暗い気持ちになってしまうオペラなので

だからこそ明るい「電話」とセットというわけですよね。

すごくストーリー性があって、オペラだけど芝居要素が強いと思います。

個人的には「電話」より「霊媒」の方がおもしろかったけど、劇場で両方とも見れるならやっぱりそれが一番良いかもと思いました。

霊媒の見どころは

メノッティのオペラって新しい時代のオペラなので、音楽的なことは例によってわかりません、合ってるのかどうかもわかりませんが、

「電話」では感じなかったけど、「霊媒」は多調とか無調っていう感じをうけました。

でもなんだろう、なんていうのか‥

普通は多調とか無調って聞きにくいんですけど、霊媒ってアリアになると途端に聞きやすくなるんですよね。

特にアリアの最初の導入のあたりが聞きやすいです。

あれ、これ良い曲だなあと思って聴き惚れているうちに、ん?これって無調っていうやつ?なんか現代っぽい、不思議‥。

ってなっていく感じなのです。

徐々に不思議な感じになる曲っていうかそれが見どころかもしれないです。

モニカが歌う「月は金の塔を降り」のアリア

これは怯える母をなだめる子守唄なんですけど、エキゾチックで不思議感もある美しい曲で、見どころ聞きどころだと思います。

あと、2幕のモニカのワルツも、いいです。

これも楽しいだけじゃなくちょっと不思議な感じもする曲

しゃべることができないトビーの恋心をモニカ自身が歌うというのもちょっとかわった設定。

二人は好き同士なんですよね。

すでにおかしくなり始めている霊媒師ババにお客の三人が、いやいやあなたはちゃんとした霊媒師ですよ

ねっとり3人で歌うところはなんとなく気持ち悪くて、逆に見どころかも。

テレビにもなった

霊媒って最初はコロンビア大学の依頼で作られたオペラで、その後電話とセットでプロによるちゃんとした公演になったのですが、

現代だなと思うのが、

さらにそのあとテレビになっているんですよね。

アメリカではテレビシリーズのオペラっていうのがあってその一つがこの作品になってるのです。

日本では劇場の公演を撮影したものをテレビでもやるというのはありますけど

テレビ用にオペラを作るっていうのは、日本ではやったことあるんだろうか?

少なくとも私は知らないです。

テレビシリーズでやっちゃうっていうところがおもしろいなと思います。

さらに霊媒ってその後、映画にもなっているんですよね。

たしかに映画っぽい題材だと思いますし。

プロの初演で主役の霊媒師を演じたのはマリー・パワーズ、モニカはイブリン・ケラーという人で

テレビシリーズもおそらく同じ人。

でも映画は別の人になったみたいで、映画版のモニカがすごく美しい人なんですよね。

アンナ・マリア・アルバーゲッティという人。

この人はイタリア生まれで、お父さんがローマ歌劇場のコンサートマスターだったらしいのです。

メノッティってもっと後だけど一時期ローマ歌劇場の支配人になっていたみたいで、なんか関係あるのかなあと、また勝手な妄想にはまりそうなので(笑)、この辺で終わります。

「電話」メノッティの一幕ものオペラ

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