ウェーバー以後のドイツオペラ

オペラはイタリアで始まったし、作られた数でいえばおそらくドイツオペラの数はイタリアにはかなわないと思います。

とはいえ有名なオペラを見ると

古くはヘンデル、グルック、

少しあとになるとモーツァルト、ベートーヴェン

さらにウェーバーにワーグナーなど有名どころがたくさんいます。

ただ、そもそも何をドイツオペラと言うかもあると思います。

 

そもそもドイツオペラって 何?

 

オペラを語るときに、イタリア物のオペラが好きか、

それともドイツ物のオペラが好きかと言う話が出ることがあります。

そもそもドイツ物のオペラってなんなの?って考えてみると

これが意外に微妙なんですよね。

  • ドイツ人が作ったオペラ
  • ドイツ語で書かれたオペラ
  • ドイツで初演されたオペラ

 

ドイツがずっと現在の領域だったわけではないし

そもそもドイツ人って何?と掘り下げるとキリがないのですが、

オペラの世界ではドイツとオーストリアはセットで考える事が多いです。

両者は民族的にも同じだし、言語も同じドイツ語だからです。

 

ではドイツオペラとはドイツ語圏の人が作ったオペラかというとそうでもなくて

例えばテレマンとか、ヘンデルなど古い時代のオペラはドイツオペラというよりバロックと呼ばれる部類。

しかもヘンデルは、初期の頃こそドイツオペラらしきものをハンブルクで作っていましたが、その後はほとんどイタリアオペラを作っているので、ドイツオペラとはちょっと違うんですね。

ではドイツ語で書かれたオペラがドイツ物と呼ばれるオペラだとすると、

18世紀初頭にハンブルクで栄えたオペラも入ってしまうし、近代から現在に至るドイツ語のオペラをすべてそう呼ぶかというと

範囲が広すぎるわけです。

ドイツオペラというと浮かぶのはやはりウェーバー、ワーグナー、リヒャルト・シュトラウス、フンパーディンクなど

19世紀から20世紀にかけて活躍した作曲家が浮かびます。いわゆるロマン派と呼ばれる人達です。

ドイツ語は最低条件であるけど時代的なことで、ドイツ語で作ったドイツらしいオペラということではないかと思います。

ドイツらしいって何と聞かれると言いにくいのですが、私なりに思うのは

イタリアオペラは音楽が流麗でメロディアスで美しい、華麗で高度な技術を要するアリアも多い、

また神話や王侯貴族を扱った素材、恋愛ものを多く見かける。

対するドイツ物のオペラは流麗さというより重厚で聞きごたえがある音楽、

コロラトゥーラなどの技巧はあまりなく、歌手には純粋な歌唱力と声量が求められることが多く、全体として音楽の融合が素晴らしいオペラ。

そして童話、伝説を扱った素材が多い。

そんなことではないでしょうか。

 

そして初演の場所についてですが、オペラの場合、劇場からの依頼で作曲することが多いので、

初演の場所は作曲者が生まれた国や、活躍している国であるとは限らないんですね。

ワーグナーは、リエンツィ以降のオペラはドイツで初演していますがパレルモの修道女というオペラはイタリアでの初演ですし、

ウェーバーもオベロンはロンドンの初演です。

ドイツ物、ドイツオペラというと個人的にはやはりワーグナーを筆頭にして、上にあげたようなロマン派の作曲家がまず浮かびますね。

聴いてみてもイタリアオペラとは異なるのがわかります。

 

最初はヘンゼルとグレーテルから

 

私がドイツ物のオペラに触れた最初の作品はフンパーディンクのヘンゼルとグレーテルというオペラだったと思います。

ビデオ映像で見たのですが、ストーリーは童話で、魔女とお菓子の家が出てくるお話。

ヘンゼルをメゾソプラノのブリギッテ・ファスベンダー

グレーテルをソプラノのエディタ・グルベローヴァ

が歌っていて、ストーリーは子供向けだけどとびきり超一流どころが出ていたオペラです。

生き生きとしたメリハリのある音楽、情景が浮かび上がる音楽は感動的でした。

後から思えば、フンパーディンクという人はワーグナーの影響をとても受けていた人で、

音楽と芝居が融合しているところはまさにワーグナーのようだったんですね。

加えて一流の歌手陣。

今もDVDが出ていますが素晴らしい映像だと思います。

何度も好きな部分を繰り返し聴いていました。

これができるのが映像で見るいいところです。生の舞台だとそうはいかないので。

 

とはいえ、当時の私はドイツとかイタリアとか全く知らずにそんなの関係なく見ていたわけです。

ちなみにこのヘンゼルとグレーテルというオペラはヨーロッパの特にドイツ圏では

12月のクリスマス前後に必ず取り上げるオペラと言っていいと思います。

また、小学生ぐらいの子供向けとして、最初に観るオペラともなっているようですが、

内容的にも音楽的にもこれを最初に観ることができるのは素晴らしいのではないかと思います。

私の場合は観たのが大人になってからでしたが、ドイツ物のオペラに自然と入って行けたのはこのオペラの存在が大きかったような気がします。

 

高校生くらいになると、ドイツ圏ではベートーベンのフィデリオというオペラを学習の一環として

学校で観に行ったりするようですが、

最初に観るオペラとしてフィデリオというのはどうなんだろうと、いつもちょっと疑問に思います。

内容が重すぎて、オペラを嫌いになる人もいるのではないかと‥思っちゃいますね。

 

ワーグナーを見てウェーバーの良さがわかる

 

オペラが好きな人はたくさんいると思いますが、どのオペラをどんな順番で見るかというのは

その人それぞれだと思います。当然ですよね。

オペラってそもそもそれほど上演回数が多いわけではないし。

どんなオペラを最初にみて、どんな順番で好きになっていったのかっていうのは、おそらく人それぞれだと思います。

私の場合、ドイツオペラに関して言えば

  1. フンパーディンクの「ヘンゼルとグレーテル」
  2. R・シュトラウスの「ばらの騎士」
  3. ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

の順番でした。

そしてワーグナーは作品も多いのでいろいろ観ました。

イタリアオペラも好きだけどドイツオペラとは違うなあとか思いながらいろいろ見ていたわけです。

そんなこともありウェーバーの作品にはあまり触れなかったんですね。

実はずいぶん前に魔弾の射手を映像で観たことがあったのですが、当時の私にはまったくピンとこなかったのです。

ところがさんざんワーグナーを観てからウェーバーの魔弾の射手を観たとき

目からウロコが落ちるような、衝撃を受けたんですよね。

それはここにドイツオペラの原点があったんだという感動です。

ウェーバーの魔弾の射手はドイツオペラの金字塔などとも言われているのは知っていましたが

いろんなオペラを観てみて、改めて魔弾の射手を見ると、

「おー!ドイツオペラここにありだわ」

と、ワーグナーがこれをみて影響を受けたというのが、まさに実感としてわかったんですよね。

ワーグナーに比べると、荒削りな部分とか、従来のオペラの感じが残っていたりとか

そういうのがウェーバーにはあるのですが、

要するにワーグナーの原型のようなオペラなのです。

セリフがあるところは違うけど、

情景、雰囲気を呼び起こすオーケストラの音楽はぞくぞくするものがありますし、すでにアリアもほとんどなく芝居と音楽が融合しています。

遠い過去にドイツではハンブルクに自国のオペラがあったのに

イタリアオペラの波に押されてしまい、ドイツのオペラは民衆の歌芝居としてしか残れなかった。

それがモーツァルトのジングシュピールというセリフ入りのオペラを経て

ウェーバーでドイツらしいシリアスなオペラを打ち立てることができた、

そしてワーグナーがでてきたんだなと、

そんな大きな流れを感じて感動してしまったわけです。

その意味ではウェーバーの存在は大きくて、いわゆるドイツ物と呼ばれるオペラはウェーバーからと言っていいんじゃないかと思うんですね。

こんな風にオペラって長い間聴いていると自分なりの発見とか、感動があってこれがまた楽しいところです。

ワーグナーをたくさん見てから改めてウェーバーを観るのはとてもおすすめですね。

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