ウェルテル・マスネのオペラ・オシアンの歌は最高のアリア

ドイツの詩人ゲーテの「若きウェルテルの悩み」はドイツの詩人ゲーテが25歳の時の作品です。

この「若きウェルテルの悩み」を元に、フランス人の作曲家マスネが作ったのが

オペラ「ウェルテル」。

ロマンティックで、情熱的なマスネの旋律には、若い恋人達の熱くみなぎる思いが溢れていると思います。

有名な「オシアンの歌」は単独でもすごくよく歌われるアリアで私も大好きな曲です。

 

若きウェルテルの悩み

 

若きウェルテルの悩みは、

婚約者がいるシャルロッテを好きになったウェルテルが、悲痛のあまり自殺してしまうというお話で、

ゲーテ自身の経験(自殺はしていませんが)を元に書かれている作品です。

シャルロッテは、実在のシャルロッテ・ブッフがモデルと言われています。

実在のシャルロッテは、一般の女性なのですが、

ゲーテの作品が有名なあまり、一般女性なのに、後世までこれほど有名になった女性は,他にいないのではないかと思ってしまいます。

 

ウェルテルの成立と初演

初演

  • 作曲:ジュール・マスネ
  • 初演:1892年
  • 場所:ウィーン宮廷歌劇場

 

マスネは1842年フランスの生まれなので、

初演は彼が50歳の時の作品ということになります。

マスネと現代のサラリーマンを比較してはいけないことはわかっていますが、

50歳といえば、仕事にもちょっと疲れてくるサラリーマンが多いような年頃。

その年齢でこんなにも若さが溢れる情熱的な悲恋をオペラで表現できるのかと、

ついマスネって若いと感じてしまいました。

もっともウェルテルが完成したのは実はそれより数年前なので、厳密には50歳の時ではないのですが。

 

ウェルテルの成立

 

当初予定していた、パリでの初演ができなくなったため

ウィーンの宮廷歌劇場での初演になり、そのため出来上がってから少し初演が遅れているんですね。

また、パリ→ウィーンになったためフランス語をドイツ語に直しての初演で、

フランスにおける、フランス語での初演はその後になるのです。

 

日本においても、かつては海外のオペラを日本語に訳しての上演オペラがよく見受けられましたが、

それはわかりやすくするためであって、すでに作曲家は亡くなっている場合がほとんどでした。

ヨーロッパでは、作曲家が生きている間にもドイツ語やフランス語イタリア語などそれぞれの国の言葉に直して上演されていたんですよね。

 

上演時間とあらすじ

 

上演時間

  • 第一幕:約40分
  • 第二幕:約40分
  • 第三幕、第四幕:60分

三幕はシャルロットの家、四幕はウェルテルの部屋で、

場所は異なるのですが続けて上演することが多いと思います。

三幕と四幕の間には間奏曲もあるので、その間にセットを動かすこともできるということでしょう。

正味2時間20分程度なので、休憩を入れると、3時間半弱というところではないでしょうか。

 

簡単あらすじ

 

シャルロットの家で、ウェルテルはシャルロットに出会い、熱烈な恋に落ちますが、

シャルロットにはすでに許嫁がいることがわかり、ウェルテルは消沈します。

シャルロットは予定通り結婚するのですが、あきらめられないウェルテルは絶望して皆の元を去っていきます。

クリスマスイブに戻ってきたウェルテルですが、やはり熱い恋心は変わらず溢れる胸の内を

情熱的な歌で伝えると、こらえきれずシャルロットは抱き合ってしまいます。

実は一目会った時からシャルロットも好きだったのです。

でも理性を取り戻したシャルロット。

再び絶望したウェルテルはピストル自殺をしてしまうという悲恋のあらすじです。

 

幼い妹たちの面倒を見る、優しいシャルロットの様子や、

シャルロットの夫がウェルテルの気持ちを知っても、怒るより思いやるところなどは、

実際にゲーテが愛したシャルロットとその夫をそのままを表しているようです。

実在のシャルロットは、本当に素敵な女性だったのでしょう。

 

マスネという作曲家は、オペラ「ル・シッド」のような王や騎士が登場する壮大なオペラも書いているのですが、

ウェルテルは若い恋人達の悲恋のあらすじなので、舞台は二人の家が中心で、こじんまりした設定。

マスネは多彩というか、いろんな形式のオペラを作曲してるんですよね。

 

作風と見どころ

 

作風

 

これはあくまで個人的な感想ですが、

一言で言うとウェルテルのオペラの作風は、楽器も一緒に歌っているという感じがします。

マスネを聞いていると、管弦楽が情景を浮かび上がらせているしとても叙情的なところは

ワーグナーにも似たものを感じるのですが、

ワーグナーが、登場人物や情景を強く感じるのに対し、

マスネは、歌に呼応している作風を感じるのです。(なんかよくわからないですね、自分でも何言ってるんだろうと‥つまりうまく言えない)

 

歌の気持ちを楽器が補い増長し、一緒に悲しみ一緒に感動する、そんなイメージです(わかるかなあ)。

時には歌に答えて会話するように様々な楽器が旋律を奏でているような気がするのです

それが、マスネのオペラがロマンティックで優雅で情熱的な所以なのかもしれません。

 

メゾソプラノの魅力

 

ウェルテルが想いを寄せるシャルロットはメゾソプラノが歌います。

(ソプラノが歌う時もありますが)

若い女性の主役の役で、メゾソプラノが担当する演目はそれほど多くないので、

それもこのオペラの見どころだと思います。

シャルロットは、長女で幼い兄弟たちの面倒をみる落ち着いた女性ということもあると思いますが、

メゾソプラノは確かにそういう役には合っているかもしれません。

 

メゾは、ふくよかな声の人が多く、聞いていて安心するので好きですね。

ただメゾソプラノというと、お付きの役とか母親役も多いのですが、

シャルロットは、ウェルテルが死ぬほど恋い焦がれる女性なので、

できればあまりお母さんぽくない人に歌ってもらいたいところです。

 

 

第三幕のアリア

 

ウェルテルの中でもっとも有名な部分は、第三幕の、

ウェルテルからの手紙を見るシャルロットの「手紙のアリア」と、

 

ウェルテルが、辛い恋の胸の内を切々と歌う

「春風よ、なぜ私を目覚ますのか」(通称オシアンの歌)

のアリアです。

オシアンというのは、劇中でウェルテルが手にする詩の本で、

詩に託してウェルテルは胸の内を歌うのです。これがいい曲なんですよねえ。

 

このオシアンの歌は、単体でもよく歌われる名曲中の名曲で、

美しく情熱的で、とても迫ってくる感動的なアリアです。

ここが最大の見どころですね。

テノールがどんな風に歌ってくれるかは、とても楽しみなところです。

 

そして第四幕で、瀕死のウェルテルと駆けつけたシャルロットの場面も見どころ。

でもやはりこのオペラは、ウェルテルの歌唱と演技力が、見どころだと思います。

 

 

過去の録音と映像

 

マスネのウェルテルは、比較的多くのDVDやCDがある方だと思います。

 

 

アルフレード・クラウス

 

古いところでは、アルフレード・クラウスのウェルテルが、素晴らしいのではないでしょうか。

あまり体を動かして歌う人ではないのですが、丁寧で確かな歌唱力に加えて、

内なる情熱が伝わってくるウェルテルです。

そして何より独特の品の良さ

ただ、品が良いゆえに、自殺までするほど熱くなるようには、ちょっと見えないかもしれませんが、クラウスは、年齢を重ねても若々しい役が似合う人だなと思います。

 

ホセ・カレーラス

個人的にはオシアンの歌といえば、ホセ・カレーラスが浮かんでしまいます。

切なく一途なウェルテルは、見た目も雰囲気もぴったりで、

シャルロット役のフレデリカ・フォン・シュターデは、見た目も可憐で、歌もうまく最高の組み合わせだと思います。

ホセ・カレーラスのCD

 

ブリギッテ・ファスベンダー

シャルロット役でいうと、ブリギッテ・ファスベンダーが好きな歌手なので、彼女の録音もおすすめですが、

演技がうまいのに、CDだけだと思うのでそれがちょっと残念。

プラシド・ドミンゴと一緒に歌っています。

 

 

アラーニャとゲオルギュー

ロベルト・アラーニャとアンジェラ・ゲオルギュー

元夫婦コンビも歌っています。

ゲオルギューはソプラノですが、彼女ならメゾのこの役もこなせる、という声質。

マスネと同じ、フランス生まれで、熱く歌うアラーニャと、

ルーマニア出身で、美貌のゲオルギューの組み合わせは、

見た目も雰囲気も、もっともしっくりくるかもしれません。

フランスオペラの歴史

 

トーマス・ハンプソン(バリトン)

トーマス・ハンプソンは、バリトン歌手なのですが、ウェルテルのCDを出しています。

実はマスネは、当時の著名なバリトン歌手のために、バリトン用にウェルテル役を手直しした楽譜も作っています。

トーマス・ハンプソンがウェルテルをやっているのは、そのためでしょう。

ちなみに彼は、シャルロットの夫アルベール役(バリトン)も、別の録音でやっていますが、

やはりどちらかというと、アルベールの方が合ってるかな、という気がします。

熱い思いがたぎる、ウェルテルは、やはりテノールで聞きたいですね。

 

ヨナス・カウフマン

最近の歌手では、やはり、ヨナス・カウフマンのウェルテルでしょう。

ただ、どちらかというとカウフマンは、暗めの声質なので、

20代よりちょっと上の年齢に感じるかなというのはありますが、

魅力的というところでは、素晴らしいと思います。

カウフマンのDVDはこちら

 

そのほかファン・ディエゴ・フローレスも、歌っていますが、

こちらは、明るくスコーンと突き抜けるリリックな声質。

いろんなウェルテルがあるので、聴き比べも面白いのではないでしょうか。

テノールの種類

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