ラ・ファヴォリータ・ドニゼッティが作ったグランドオペラがこれ

今回はラ・ファヴォリータというオペラについて。

作曲はイタリアドニゼッティ

ドニゼッティの代表作といえば、愛の妙薬ランメルモールのルチアが有名ですが

ドニゼッティはとてもたくさんのオペラを作った人で、ブッファもあればシリアスな悲劇もあり、

またファルサとよばれる一幕もののオペラなど種類も様々です。

そしてラ・ファヴォリータのようなグランドオペラも作ったんですよね。

というわけでラ・ファボリータというオペラは、私なりに一言でいうならば、

ドニゼッティの中ではちょっとめずらしいグランドオペラ

って言うところかなと思っています。

ドニゼッティのグランドオペラ

グランドオペラっていうのは単に壮大なオペラっていう意味ではなくて(大儀にはそういう意味に使われることもありますが)

本来は19世紀のパリで流行していたオペラの形式と言った方が妥当だと思います。

パリオペラ座が上演するオペラで、4幕〜5幕あり内容的には壮大で華やか且つスペクタクルなものだったんですよね。

グランドオペラの歴史って?華やかなだけじゃない

この時期、イタリアやドイツの有名作曲家たちがパリに呼ばれて、グランドオペラを作るというそんな時期があったんです。

ロッシーニもオペラ生活の晩年パリに行って、ウィリアム・テルを発表しているのですが、これがグランドオペラです。

そしてドニゼッティもイタリアからパリに行き、グランドオペラを作ったんですよね。

その一つが今回のラ・ファヴォリータだったわけです。

初演は1840年。ドニゼッティが42歳の時です。

ちなみにドニゼッティが作ったグランドオペラは、そのほかに殉教者ドン・セバスチャンというのがあります。

ラ・ファオリータの初演版はもちろんフランス語ですが、イタリア語版もありますね。

上演したのは今のパリ国立オペラ座の前身といえるのですが、当時の名前はアカデミー・ロワイヤル・ド・ムジークというところで

主たる劇場は当時サル・ル・ペルティエと呼ばれる劇場でした。

日本でいうなら新国立劇場みたいなところですね。

 

サル・ル・ペルティエってどんな劇場

 

オペラの初演を見ていると、よくパリオペラ座初演っていう言葉が出てくるんですよね。

これって今のパリオペラ座(ガルニエ宮)の劇場をさすのかとずっと思っていたんですが、

そもそも当時今のガルニエ宮はまだできてないんですよね。

パリオペラ座っていうのは劇場そのものをさすと同時に、劇場を運営している団体をさすこともあるようなんです。

パリオペラ座(当時はアカデミー・ロワイヤル・ド・ムジーク)っていう運営団体が依頼して初演したオペラということで、パリオペラ座初演という言われ方をしているんじゃないだろうかと。

今でいう国立オペラっていう感じだと思います。

劇場については、イギリスにいるときのヘンデルを見てもホーム劇場を取られて、他の劇場で上演せざると得なくなったりしているんですよね。

ちなみに日本には藤原歌劇団もありますが、特にホーム劇場を持っていないんじゃないのかなと。

主催者と劇場の関係って外からはよくわからないですよね、まあオペラを見るにはあまり関係ないんですけど。

で、ラ・ファヴォリータの初演の場所は当時サル・ル・ペルティエと呼ばれていた劇場だったんですよね。

当時のアカデミー・ロワイヤル・ド・ムジークホーム劇場がサル・ル・ペルティエ劇場で、今パリにあるオペラ座(ガルニエ宮)とは別の場所でした。

グランドオペラと呼ばれる有名なものはほぼこのサル・ル・ペルティエ劇場で上演されていたようで、

などもそうです。

さらに余談になりますけど、エドガー・ドガっていう画家の踊り子の絵がありますよね、あれもこの劇場だって言われているんですよね。

当時バレリーナ達にはスポンサー紳士達がいて、よく見ると両者が書かれている絵もあります。

このサル・ル・ペルティエっていいう劇場があったのは1821年ー1873年まで。

劇場にはありがちですが、ここも火事で無くなってしまったんですよね。

 

別のオペラを転用して作曲

 

さて、ドニゼッティがパリで最初に作ったオペラは連帯の娘という台詞ありのオペラコミックでした。

この連帯の娘というオペラも私がすごく好きな演目なんですよね。

それはいいとしてドニゼッティはパリのための次のオペラとして当初は別のオペラを作っていました。

ところが当時の劇場監督からこの作品では‥と難色を示されて

その前に作ったけど未公開だった「ニシダの天使」というオペラを書き直して作ったのがラ・ファヴォリータでした。

ニシダの天使はイタリアの検閲で引っかかったらしいんですよね。

内容はナポリの王の愛人の話だったようで。

ラ・ファヴォリータも王様の愛人の話なのです。

で、これをパリ風グランドオペラスタイルに直して、初演となったわけです。

もっというとドニゼッティはポリウートというオペラもイタリアの検閲で引っかかって上演できず、

これも題名を殉教者と変えて、グランドオペラスタイルにし、パリで上演したという経緯があるのです。

イタリアの検閲に嫌気がさしてパリに行った?とも見えるドニゼッティなんですよね。

二つも作ったのにお蔵入りと言われるとそりゃあ頭にくるだろうなと、これは勝手な想像です。

 

メゾソプラノが主役

ラ・ファヴォリータって英語のfavorite(お気に入り)っていう意味で、王様のお気に入り、つまり愛人レオノーラが主人公なんですよね。

私がこのオペラの映像を見たときは確かフィレンツァ・コソットっていうメゾソプラノが出ていたと思います。

すごくうまい人です。

ただ、ドニゼッティのオペラを見ると主役がメゾソプラノになっているオペラってそんなにないんですよね、私が知る限り。

だから珍しいのです。

それは、初演当時の劇場監督の愛人メゾのロジン・シュトルツという歌手だったらしく、諸々の変更も彼女のためとか‥。

そしてラ・ファヴォリータの初演でレオノーラ役を歌ったのがこのロジン・シュトルツと言う人だったんですよね。

ついでに言うと、ドニゼッティは3年後の1843年にドン・セバスチャンと言うグランドオペラも作曲しているんですけど、

このときザイーダという唯一の女性役を演じたのも同じくロジン・シュトルツでした。こちらもメゾソプラノの役です。

ドニゼッティのオペラの中では主役がメゾソプラノなのはこの二つなんですよね。

オペラもいろんな事情が絡み合っているもんです。

とにもかくにもラ・ファヴォリータはおもしろいので、数あるドニゼッティのオペラの中でもずっと残っている作品なんですよね。

ラ・ファヴォリータ簡単あらすじ

 

では最後にラ・ファヴォリータの簡単あらすじを書いておきます。

まずすごく簡単にあらすじを言えば、フェルナンドはレオノーラが好きだけど、実はレオノーレは王の愛人だったというものです。

王の正妻の父親がフェルナンドの父でもあり、設定もおもしろいんですよね。

 

<第一幕1場> 父(バルダッサーレ)が気もそぞろの息子(フェルナンド)にその理由を聞くと、実は好きな女性(レオノーラのこと)がいるとのこと。

<第一幕2場> レオノーラとフェルナンド逢瀬素性を聞いてもレオノーラは明かさないので、フェルナンドは誰なのか知らないままです。

 

<第二幕> 王は愛人レオノーラをとても愛している模様。

そこにバルダッサーレがやってきて、愛人にうつつを抜かすとはと怒り浸透。バルダッサーレは正妻の父でもあるのです。

そこにレオノーラが浮気をしていると王にばれて、レオノーラはそれを認めますが相手が誰であるかは口を割りません。

 

<第三幕> 功績をあげたフェルナンドは褒美にレオノーラが欲しいというので、レオノーラの恋人がフェルナンドであったことがわかってしまいます。

王はショックをうけるものの二人を認めます。婚礼のあと、実はレオノーラが王の愛人だったことがわかりフェルナンドは激怒し出て行ってしまいます。

 

<第四幕> 弱り果てたレオノーラが許しを請いにやってきます。最初は怒っていたフェルナンドも次第に怒りを沈め、二人で逃げようというものの、レオノーラは死んでしまいます。

と言う悲劇のお話です。

なかなか上演されないと思いますが、生でみたい作品ですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です