エルナーニ・ヴェルディ初期ロマン代表作ならこれ!

回はヴェルディのオペラ「エルナーニ」について。

エルナーニは一言で言うとヴェルディ初期の作品でかつヴェルディのフェニーチェ歌劇場(ヴェネチア)でのデビュー作

さらに私流にいえば後のリゴレット椿姫などヴェルディの中でもとりわけロマン派オペラのさきがけ的な作品ではないかと思います。

エルナーニはヴェルディの初期の作品だけど

ヴェルディの初期の作品の代表作というと、よくナブッコがあげられます。

エルナーニは5番目に作られたオペラで、ナブッコ3番目に作られたオペラです。

そのためかエルナーニはナブッコの陰に隠れてしまってそれほど注目されることが無いのですが、

個人的に思うに、エルナーニというオペラはヴェルディの中のアイーダドン・カルロのような壮大なオペラとはちょっと路線が違って、恋愛が中心つまりロマン的要素が強いというか、そんな感じがするオペラです。

ヴェルディの中でいうと、リゴレットとか椿姫、シモンボッカネグラ、運命の力などがその路線。

つまり同じヴェルディでも若干系統ってあると思うんですよね。

ロッシーニだって作曲の時期によって変わってますし。

おもしろいことにリゴレットも椿姫もシモンボッカネグラもそしてエルナーニもすべて初演がフェニーチェ歌劇場なんですよね。

そう思うとフェニーチェってやっぱりすごいって思いませんか。

日本ではフェニーチェ歌劇場よりスカラ座の方が今や有名になってしまいましたが、おそらく歴史的に言っても

当時はフェニーチェ歌劇場はスカラ座同等かもしくはフェニーチェの方が格が高かったんじゃないかと思うんですよね。

まあ格とかどうでもいいことなのですが。

ヴェルディはデビュー作から始まって最初の4作品

  1. オベルト
  2. 一日だけの王様
  3. ナブッコ
  4. イ・ロンバルディ

これらをすべてミラノのスカラ座で初演しているんですよね。

まだ若いヴェルディが今やオペラの殿堂ともいえるスカラ座で次々と初演をするというのは、もろもろ事情があったとはいえすごいことですよね。

そして5番目のオペラがエルナーニでこれは初めてスカラ座以外の場所、フェニーチェ歌劇場での初演となったのです。

おそらくですが、当時はついにヴェルディがフェニーチェにも登場!っていうぐらいフェニーチェ歌劇場でやるっていうのも意味があったんじゃないかなと、これは想像ですけどね。

当時若いヴェルディに注目したのはフェニーチェ歌劇場の支配人だったモチェニーゴという人です。

モチェニーゴは貴族出身で当時の支配人は貴族がやっていたのかと、そんなこともちょっと注目、まあオペラは当時だって贅沢品でしょうしね。

当時のフェニーチェのっていうかオペラ界の状況って、ロッシーニもドニゼッティもパリに行ってしまうし、ベッリーニも死んじゃうし、

という中でフェニーチェ歌劇場としても新しい作曲家はいないかと探していたんじゃないかと。

で、ヴェルディがフェニーチェ歌劇場の依頼を受けて最初に作ったのがこのエルナーニというオペラだったわけです。

高額な報酬をもらったとも言われています。

そしてフェニーチェでの初演については歌手の調子が悪かったにも関わらず大成功だったとか。

それもそうだろうなと、だって音楽がまさにヴェルディ、初期とはいえすでに熟練期のヴェルディの雰囲気そのままの感じですから。

ヴィクトル・ユーゴー

さて、エルナーニというオペラは結構複雑なお話なのですが、原作はヴィクトル・ユーゴーの戯曲「エルナニ」なんですよね。

ユーゴーといえばレ・ミゼラブルの作家でもあります。

レ・ミゼラブルは私も昔読みましたが、おもしろいけどかなりつらい物語と言うイメージ、

ミュージカルも繰り返し上演されていますよね。

レ・ミゼラブルは1862年の執筆で、「エルナニ」はそれより約30年も前の1830年初演の作品です。

ユーゴーが28歳の時の作品です。

レ・ミゼラブルを知っている方なら想像がつくと思うのですが、エルナニも結構複雑な物語。

これをオペラにしているからかオペラもなかなかに複雑。

逮捕だ処刑だと言っていたのに急に全員許すとか、

たかだか口約束をしただけなのになぜエルナーニが自ら死ななきゃいけないのとか、

オペラだけ見ると不思議を拭えないことも多いけど

そこはヴェルディの音楽でカバー。

それよりこのユーゴーっていう人はヒット作をたくさん出しているだけあるし、自信もそれなりにあったんだと思いますが

何度か著作権というか内容を巡って争いをしている人なんですね。

そもそも今でこそ著作権ってすごく厳しくて、最近は音楽教室で練習するのもダメとかダンス教室で音楽をかけるのもダメと言う感じで

著作権って本当にこう言っちゃなんですけど面倒なものですよね。

でも作曲家や作家からすれば当然の権利だから仕方ありません。

ロッシーニの時代は著作権なんかあまり重要視されなかったようですが、ヨーロッパではフランスは比較的著作権の法律が早くできていったらしいんですよね。

だからというわけではなく、これはユーゴーの作品へのこだわりもあったんでしょうね。

エルナーニについてはヴェネチアの初演から2年後にパリのイタリア劇場で上演するときは

ユーゴーの抗議により、題名も「追放者」に変えて場所設定も変更、名前も変更しての上演。

確かに原作からはかなり割愛されてるし、これは違う!自分の作品じゃない!と思ってしまったんですかね。

ああいう作品を書く人だからユーゴー自身も熱い人だったんだろうなあと勝手に想像しています。

とはいえエルナーニは当時舞台としてすごく人気があったらしく、のちのデュマ・フィスという人が書いた椿姫と並ぶ2大戯曲とまで言われるほど。

どちらもヴェルディがオペラ化しているのも興味深いことですよね。

エルナーニから台本ピアーヴェとのコンビが始まる

さて、エルナーニでもう一つ注目したいのが台本です。

ヴェルディの中でも特に人気のある作品

マクベスリゴレット椿姫、シモンボッカネグラ、運命の力

といった作品の台本はすべてフランチェスコ・マリア・ピアーヴェという人が台本を手掛けているんですよね。

この人はヴェネチアのムラーノ島という島の出身。

ムラーノ島っていう場所は今もガラス職人が多くいる場所で有名です。

その作品は本当にきれいです。

私も大好きですが、まあムラーノ島のことは今は置いとくとして

ピアーヴェは1810年生まれなので1813年生まれのヴェルディとはほぼ同じ世代

30代前半の二人のコンビはその後1869年の運命の力まで20年以上続き

しかもピアーヴェはヴェルディのオペラの台本を9個最も多く書いている人なんですよね。

まさにヴェルディの成功には欠かせなかった人物といえますよね。

ピアーヴェはヴェルディに従順だったとか、なるほどねとも思うけどいずれにしても台本おもしろいですよね、リゴレットなんか自分が好きだからか特にそう思いますね。

エルナーニってどんなストーリー

初期だけど熟練の作品

ではエルナーニってどんな作品かというと

普通初期の作品とか初期の成功作とかいうと、まだ若い感じだけど光っているものがあるとか

粗削りだけど後の大家を思わせる部分があるとか

そんな作品なのかなって思いませんか。

現にモーツァルトなどはすごく若いときのオペラも上演されますが

明らかに若い!

っていう感じがあったりするんですよね。

でもってそんな感じかなあと思ってエルナーニを見ると

「え?もうこんなに出来上がってる、まさにヴェルディそのもの!」

と思うんですよね。

リゴレットとか椿姫の頃のヴェルディとそんなに変わらないというか。

それが個人的にはすごいなあと。

しいて言うなら王様がいきなり

「皆を許すぞ、わしもエルヴィラが好きだけどお前が彼女と結婚していいぞ」

と徳を見せるところがちょっとバロックオペラの名残り?とか、

あとアリアがそれぞれ独立してる感が強い、個々の見せ場がアリアとしてはっきりわかる気がします。

そのあたりが後の作品だとより融合していくのでちょっと違うかなと思うけど、

とはいえ、効果的な合唱も音楽もすでに熟練のヴェルディそのものなのがちょっと驚きでした。

そのためどうしてもっと上演されないのかなと思いますが、

それだけヴェルディは他の有名な作品も多いですからね。

簡単あらすじ

主な登場人物は4人です。

  • エルナーニは元貴族だけど今は山賊
  • ドンナ・エルヴィラはエルナーニと相思相愛
  • ローマ皇帝ドン・カルロ(エルヴィラが好き
  • シルヴァエルヴィラの叔父、エルヴィラと結婚する予定

エルヴィラは叔父のシルヴァと結婚させられることになっているがエルナーニが好きで相思相愛の仲。

エルナーニはエルヴィラと逃げようと夜中に忍んでやってきますが、

ちょうど同じ夜、やはりエルヴィラに思いを寄せるドン・カルロも忍んでエルヴィラの部屋へ。

鉢合わせした二人がバチバチと火花を散らしているとそこにシルヴァまでやってき

シルヴァは婚約者の部屋に男が二人もいるのでびっくり。

二人をとらえようとしますが実は王のドン・カルロであることを知り恐縮。

カルロは無礼を許します(許すって自分も勝手に女性の部屋に忍んできているけど…)

シルヴァとエルヴィラの結婚の日、エルナーニは変装してやってきますがばれて怒るシルヴァ

ところがちょうどカルロの隊が盗賊エルナーニを捕らえにやってくるわけです。

シルヴァは武士の情けとエルヴィラを匿いエルヴィラはシルヴァに恩を感じていつでも自分の命はあなたのものと角笛を渡すわけです。

さて場面はかわって皇帝選出の日謀反の企てがあり、それにはエルナーニもシルヴァも入っています。

ところが二人は捕まえられてあわや死刑かという時に

皇帝に選ばれたことがわかったドン・カルロはエルヴィラの赦免の願いを徳を見せて聞き入れて全員釈放するのです。

そしてエルヴィラとエルナーニも結婚していいよと。

ところがシルヴァはおもしろくないですよね、

二人の結婚の日角笛を吹くわけです。

それをきいたエルナーニは約束通り自らの命を絶つ、という最後は悲しい結末。

角笛の音を聞いて自害するあたりはなんとなく武士の切腹を思い出しますが、なんでそこまで?という不思議はぬぐえないところ。

それにしてもエルヴィラは実に3人の男性から思いを寄せられるんですよね、

どんだけ美女なのかって思っちゃいます。

エルナーニは有名なアリアは無いけどストーリーがおもしろいからそのうち生で見てみたい演目です。

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