アリオダンテ鑑賞レビュー2018.7.21

ヘンデル作曲のバロックオペラ「アリオダンテ」を見てきました。

その鑑賞レビューを書いてみます。

  • 2018年7月21日
  • 場所:東京文化会館の小ホール(上野)

同じ日、お隣の大ホールでは、ウェーバー作曲「魔弾の射手」をやっていました。

↓こちらもみたので鑑賞レビューをよければどうぞ。

魔弾の射手鑑賞レビュー2018.7.18

ヘンデルとウェーバーは、どちらもドイツの生まれですが、

1735年初演のアリオダンテから

1821年初演の魔弾の射手までの、86年間の時の流れは、

こんなにもオペラを変えたのだと改めて感じた公演でした。

 

会場

 

上野の文化会館の小ホールでの上演でした。

大ホールの方では、すでに魔弾の射手が始まっておりそちらは数日前の公演を観たばかり。

今回のアリオダンテの会場は、小ホールでの公演でした。

 

700人収容できる会場ですが、かなりの入りだったのはちょっと驚きでした。

どちらかというと、マイナーなオペラだと思うのですが意外に多かったですね。

比較的女性が多く、中学生ぐらいの学生さん達も何人かいました。

自由席なので、良い席を取るためか開場前から長蛇の列で係りの人もピリピリ。

本当はギリギリに行きたいので、会場が小ホールの場合も座席指定にしてもらいたいところですが、そうもいかないのでしょう。

ともあれ、管弦楽が10人程度のこのオペラには、東京文化会館の開場はちょうど良い大きさかもしれません。(若干狭いかも)

 

ヘンデルのオペラ

 

数日前に魔弾の射手を見たせいか、わかってはいても同じオペラなのにこれほどまで違うとは、

と思ったのが正直な今回の感想。

音楽と芝居と歌が融合している、ウェーバーのオペラと比べると、

ヘンデルのオペラは、同じオペラでも全くの別物

とは言っても、イタリアのバロックオペラが隆盛だった頃は、こちらが当たり前の形式だったわけで

時代の流れで、オペラもそれだけ変わっているということなんですよね。

 

ヘンデルのアリオダンテは、レチタティーヴォとアリアの繰り返しで進んでいきます。

アリアは独唱ですが二重唱も少しあり、また最後は合唱というのもおきまりのパターン。

二重唱は、掛け合いあり重唱ありでとてもきれいでした。

 

ヘンデルのレチタティーヴォの伴奏は、基本的にチェンバロとチェロ。

チェンバロとチェロはほぼずっと音を出し続けているのでとても大変なパートですね。

 

また、この時代のオペラはほとんどが喜怒哀楽のアリアで進行していくのでアリアが多いし

すべての役にやたら高音域が多いのも特徴。

 

ヘンデルの時代は、アリア毎に拍手をしていたんだろうかとおもうくらいアリアが頻繁です。

演出兼指揮の原雅巳さんという方が、そこらへんは適宜、

あまり拍手を待つでもなく、いい感じで進めている感じでしたね。

 

一方魔弾の射手は、地声のセリフがあるオペラで

アリアはあるけど、ヘンデルのようにはっきりとはわかれていません。

歌手もソプラノとテノールもいるけど、バスとバリトンが主要な役になり、

管弦楽も、楽器・人数共に多くなり、音が全く異なる世界です。

 

86年の間にこんなにもオペラは変化していったわけですね。

 

演出

 

今回のアリオダンテの、演出の一つともいえるのが四角い大きな字幕

大きな字幕に、始まる前にざっくりとした、あらすじを出してくれたのは、わかりやすかったです。

 

もっとも、ヘンデルのオペラは悲しいのか、嬉しいのか、愛しているなのか、

そこらへんをつかんでおけば、アリアはほとんど字幕を見なくても大丈夫なので、その点は楽かもしれません。

管弦楽は人数が少ないので、一緒に舞台に乗っての上演

演出としては、椅子とついたてがあるくらいの簡単なセット。

ついたてを移動しつつうまく使っての演出でした。

 

舞台が狭いので、大きく動き回ることはできないと思います。

 

そのためか、歌手の人たちは、

出てきてはアリアを歌い下がるという、

コンサート形式とあまり変わりない感じもしましたが、

それでも衣装が豪華でカツラもかぶるなど、雰囲気がとても出て、目でも楽しめました。

 

バロックオペラは、レチタティーヴォ→アリア→レチタティーヴォ→アリア、と形式が決まっているので、

見やすい反面、スター歌手お目当てになっていった当時の風潮がわかる気もしましたね。

ヘンデルの音楽が、とにかく美しいので、飽きることはありませんが、どうしても単調には、なるので、

カストラートがいたら、熱狂していたんだろうなあ、というのはなんとなく想像できます。

 

また、アリオダンテは踊りが入りますが、今回はバロックダンスという踊り。

初めて見ましたが、優雅で貴族っぽく、足の動きが独特

楽しかったですね。

レチタティーヴォとその歴史

 

音楽

 

管弦楽は古楽器での演奏。

笛の人はずっと出ているわけではなく、いない場面もあり。

その時は、ほとんどチェンバロと弦楽器だけになっていました。

また、ホルンも登場していましたが、あれはナチュラルホルンだったのか、

多分倍音だけで出すタイプの難しい楽器なのじゃないかなと。

 

楽器が少ない分、声がよく聞こえて、そこはバロックの安心して聞けるところ。

ワーグナーとは大違いです。

 

 

2幕以降、アリアも難しくなるのは、ヘンデルが歌手の調子を考えて

1幕を易しめにしているのかなと思いました。

 

ヘンデルのアルチーナを見た時も、後半に難しアリアを入れている感じはありました。

歌手を引き立たせるためのオペラ、というのがやはりあったでしょう。

技術的に難しいパッセージが多かったですが、歌手の皆さんすごくきっちりとこなしている感がありました。

 

歌手

 

タイトルロールのアリオダンテ役は、もともとはカストラートなのかなと思います。

今回はメゾソプラノ歌手の中村裕美さんという人。

メゾにしては、アリオダンテ役は、高音も比較的要求されるので、やはり当初は、カストラートがやっていたんでしょうね。

3幕の情熱的なアリアは、まさに見せ場でした。よかったです。

 

恋人役のジネーヴラ役は佐竹由美さんというソプラノ歌手。

高音がとても響く人です。高音の弱音もきれいでした。

 

また、悪者役のポリネッソは、今回はカウンターテナー歌手の、上杉清人さん。

アリオダンテの初演は、イギリスのロンドンですが、

カウンターテナーについては、歴史があるイギリスなので

ポリネッソという役は、もともとカウンターテナーのための役だったのか、それともアルトかメゾソプラノ歌手の役だったのか、

またはカストラートが複数出ているパターンでカストラートだったのか

どうなんだろうと考えてしまいました。

カウンターテナーとカストラート

と言うのも、もし当時

  • ポリネッソがカウンターテナー
  • アリオダンテがカストラート

だったとしたら、

二人の男性歌手が、種類の違う女性声を出していたことになります。

だとしたら、いったいどんな感じだったのか、と

すごく不思議な気がするんですよね。

 

現在カストラートはいないので、その声を聞くことはできませんが、

一つのオペラで、

カストラートとカウンターテナーのどちらも聞くことができたとしたら、

夢のような共演だったのではないかと私などは思っちゃうのです。

 

ヘンデルの音楽はとても美しいのですが、

当時、ベガーズオペラ(乞食オペラ)の方に人気が行ってしまったのも、ちょっとだけわかるような気がしたのも正直なところでした。

イギリスのオペラの歴史

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