パルジファル/ワーグナー/東京文化会館/大きなテーマを感じた

ワーグナーのパルジファルを見に行ってきました。

生で見るのははじめてですし、以前に見たのはもう数十年前なのでほとんどはじめてと同じ。

第二幕のクンドリーのシーンをおぼろげに覚えているくらいです。

  • 2022年7月17日
  • 場所:東京文化会館(上野)
  • 主催:二期会
  • 演出:宮本亞門

パルジファルって長らくバイロイトでしか上演してはいけないってなっていた秘蔵の演目ですよね。

ワーグナーのオペラって言うだけでも結構マニアな感じがするのに、パルジファルっていう演目を上演すること、

しかも今回4日間にわたっての上演なんですよね。

正直言ってそんなに人が来るのもなんだろうかと思っていました。

でも蓋を開けて見たら最終日ということもあったのかもしれませんが、8割がたの席がうまっていてちょっとびっくり。

しかも若い人もかなり多かったのは驚きでした。オペラの裾野は徐々に広がってきているのかなと思いました。

不思議な演出だったけど何か伝わってくるものを感じて‥

今回の公演を一言で言うならワーグナーなので音楽はやっぱりよかった。

そして今回の演出は不思議なところがたくさんあったけど、それでも何かを伝えようとしているんだなというのがわかりました。

パンフレットとか事前に演出の趣旨とかそう言うのは見ずに行ったのですが、

見終わって人間とか地球とか生きとし生きるものすべての大きなテーマのようなものを感じました。

最初みはじてたときは現代解釈なんだなと単純に思っていたのですが、

というのも少し前にドビュッシーのペレアスとメリザンドをみていてそちらも不思議な演出(夢の中のお話で、2人のメリザンドが登場したり)だったので、

今回もそんな感じかな、もしかしてゲームの中?などと思いながら見ていました。

でも見ていくうちに不思議感だらけで、おそらく演出の意図を私はわかっていないんだろうなと思うところは多々ありましたが

それでもなんとなく何かを伝えたいんだなと言うのが真摯に伝わってきた、そんな演出だった気がします。(うまく言葉で言えない‥)

現代の親子がでてきたり、人間の進化が出てきたり、かと思うと実験室かのような標本の類や、

極め付けは先王ティトゥレルの人体模型のような出立ちからの最後はミイラのような姿まで。

かと思えば女性たちの服装はなんとなくハワイを思わせるような明るい色彩。

そしてずっと舞台にいるパルジファルの分身のような子供の姿。

母はクンドリーなのか‥

どうしてゴリラが時々ウロウロしているんだろう。

聖なる槍はパルジファルを刺せないはずなのに、代わりに子供が刺されてしまった‥なぜ

そして中世を思わせる絵の数々が2幕ではズタズタになっていてまた戻っていたのは救済を表しているのかなどなど‥

不思議がたくさんの演出でした。

でもじゃあパルジファルってどんな演出ならしっくり来るのか?って自分に問いかけてみるとそれがまた難しいって言うことに気づいたんですよね。

「あ・わからない‥」って。

そんなこんなが頭に浮かんできた今回の公演でした。

二期会の公演は比較的映像をたくさん使うイメージがあります。

今回は映像はそれほど多くなかったのですが、多くない中でも思ったのは映像と音楽がすごく合っていたと言うこと。

というか映像が出る時の音楽がものすごくよかった。なんだかジーンとくるのは決まって映像ありの時でした。

地球とか地平線とか渦(この渦の時がとりわけ個人的にはよかったです)人々、荒廃‥これらの映像と音楽がよかったなあ。

一点だけ気になったのは「よじ登ってきた階段」って言うところで映像は降りてたよねって(こまかっ!笑)。

あと第二幕で煙がたくさん出てきたのも効果的でしたねえ。煙の効果ってすごい!って今までで一番感じたかも。

そして細かい演出をいえば、クンドリーがきれいに昇天していったのがよかった。

昇天ってちゃっちく見えちゃうと興醒めになるので難しいと思っていたんですけど今回の昇天はゆっくりの昇っていっておごそかでよかった。

このやり方でオランダ人のゼンタもいけるんじゃないかななんて思って見てました。

ただ最後にもう一度天使になってでてきた時は動きが速いからかちょっと違うなあ‥って悪いけど思っちゃいました(笑)。

歌手について

歌手についていうと全体に感じたのは男性の低い声がすごく充実していたなあということ。

バリトンとかバスの層が日本ってこんなに厚かったのねと思いました。

今回は私が知らない人がほとんどだったのですが、こんなに上手い人がここにもいたーっ!て言う感じでびっくりでした。

アムフォルタス王を歌ったのは清水勇磨さん

意外に若いんじゃないかと思いますがすごく安定した王様らしい声でよかったです。これからも楽しみ!。苦悩の演技も渋くてよかった。

先王ティトゥレルを歌ったのは清水宏樹さん。最近だとエドガールでグアルティエーロ役、4年前の魔弾の射手でガスパールを演じていたのも印象深かった人。

今回もすごく個性的な役。最後の拍手まで人体模型のような姿でした。光に当たるとさらに迫力が‥笑

そしてグルネマンツを歌ったのは山下浩司さん。1幕の語りがとてもよかった。なんていうのかな、この人の声は慈しみを感じる声だなあと思って聞いていました。声の個性ってありますよねえ。

それにしてグルネマンツの歌うところはとてつもなく多いですよね。歌い続け。さすがに第3幕はちょっとつかれちゃったかなあって、これ全体に感じたんですけど。

2幕が緊迫感大で3幕はそれに比べると静かな幕ではあると思うんですけどそれとは違ってなんとなくですけど歌手の皆さんに疲れを感じたのは私だけなのか‥。ワーグナーだからしかたないか。疲れないわけがない。

タイトルのパルジファルを歌ったのは伊藤達人さん。この人は昨年のマイスタージンガーでダーヴィット夜鳴きうぐいすで漁師役で見ていますが、そこからいきなりパルジファルだったのでちょっとびっくりでした。

たしかに前の作品を見たときにもっと声出そうな人だなあと思っていましたけど‥。

以前見た時よりすごく声が安定していて美しいテノール。それでもまだ余裕ありそうだからもっと出そうって今回も思っちゃいました。丁寧な歌い方の人だなとも。

パルジファルってジークフリートと似たような人物だと思うんですけど今回のパルジファルは野性味というよりどちらかと言うと純粋な青年という感じ。(まあジークフリートほど野生児ではないか‥)

第3幕で「聖なる槍を守って持ち帰った!」と歌うシーンはジーンときてしまいました、よかった。

そしてクリングゾルを歌ったのは友清崇さん。この人も今回はじめてだったんですけど、個人的にはすっごくこの人もよかったです。

とっても深くて素晴らしい声。今までなぜ聞いてなかったんだろうって(自分が公演に行ってなかっただけですが‥笑)って思ってしまいました。

今回悪役でしたけどどう見ても悪役に見えなかったですけど。

そういうのってありますよね、たぶん。悪役やっても見えない人と見える人。これってなんなのかなあ。個人的には声質じゃないかと思っているんですけど‥

そして大事なクンドリー役を歌ったのは橋爪ゆかさん。この人もはじめてでした。

別日に田崎尚美さんがクンドリをやっていて合いそうって思っていたんですけど、橋爪さんってはじめてなのでどんな人かなって思っていました。

そしたら体は小柄なのに逞しい声が出る人。

クンドリって不思議な女性ですよね。

妖艶で苦悩を抱えて‥すごく難しい役じゃないかなと思います。

その雰囲気がとても感じられました。妖艶だけどかわいそうな女性っていう感じが強かったかな。

クンドリって第二幕、三幕とも絶叫から始まるんですよね。こういうのも珍しいなと思って見てました。

特に第二幕の緊迫感あふれる熱唱がよかったし、二幕から少し変わったかなっていう感じがしました。

今回のパルジファルの音楽ってティンパニとチューバの音がすごく聞こえてきました。

ティンパニが刻むあの音が情景で変わるんだなというのも珍しく気づいたというか。

あとチューバの音がかっこよかった。

全体に低音がすごいなあって。

大音量のワーグナーはやっぱり痺れます。

ワーグナーのオペラを見るといつもそうなんですけど

最後の方になると「あーもうすぐこの音楽を聴けるのも終わってしまう‥」というなんともいえない寂しさが‥。

4時間もかかるこんなに長い上演なのにそんなことを思うのはやっぱりワーグナーなんですよね。

とはいえこうやって生の舞台で見られることは本当に嬉しいです。

上演してくれてありがとうって言いたいです。

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