新国立劇場のオペラパレスでカルメンを見てきました。
- 2018年11月25日(日)
- 新国立劇場オペラパレスにて
- ビゼー作曲「カルメン」
実は10月にもブルガリア国立歌劇場のカルメンを見たので、今シーズンカルメンを観るのは2回目。
前回のブルガリア国立歌劇場のカルメンは、かなり個性的な演出だったのですが、
今回新国立劇場のカルメンは、
最近ありがちな映像を駆使するでもなく、現代解釈するでもなく、奇抜なセットがあるわけでもなく、
カルメンらしい公演でした。
会場はほぼ満席で、やや男性の方が多い感じ。
カルメンって男性に人気なのかも。
新国立劇場のカルメン・演出
カルメンは4幕まであり、正味2時間半ありますが、
第4幕が短いので3幕−4幕と続けて上演されることが多く、今回もそのパターン。
なので休憩は2回のみでした。
カルメンってあれよあれよとストーリーが展開していく上に、音楽がどこを取っても躍動的なので、
何度見ても飽きることが無いんですよね。
テンポよく場面が変化していく台本はほんと素晴らしいと思うし、もちろん音楽も。
だからこそ世界中で人気なわけですよね。
今回は子供の合唱もあり、大人の合唱人数も多く、舞台に所狭しと大勢の人がいるなあ、と感じる場面が多々ありました。
登場人物の衣装もカルメンにぴったり。
オーソドックスというと言葉が悪く聞こえますが、
良い意味で安心して見られる舞台でした。
やっぱりカルメンってこういう感じだよねと。
第二幕冒頭には若干こじんまりとしていましたが、バレエもありましたし。
第四幕冒頭にはバレエは無かったですけど。
さすがにそこまで要求してはだめですよね。
最後のカーテンコールの時もバレエの人はいなかったから帰っちゃった?
あと、エスカミーリョのドピンクの派手な衣装には驚きましたが
どうせならあれくらい派手で良いかも(笑)
カルメン音楽について
カルメンは何度見ても発見があるのですが、今回感じたのは合唱のことです。
特に第一幕、子供の合唱あり、男性のみの雄々しい合唱があり、その後女性のみの合唱へ、
という具合に合唱だけとっても、とても楽しい。
実によくできていると改めて感心しました。
カルメンは全曲通して名曲ばかりなので、どこが好きというのを決めがたいオペラです。
そういう意味では、まったく系統が異なるけど、ベッリーニのノルマと通じるものがあります。
ノルマの音楽はすべて美しくて
カルメンの音楽は全編すべて血が騒ぐ、とでもいうのかな。
とりわけ緊迫感があったのは第三幕だったんじゃないかと思います。
ミカエラが良かったですしね。
ただ、4幕のカルメンが殺されるシーンの最後の最後は、意外にあっけなかった、という印象。
それまでは、すごく盛り上がってたので、もう少し引っ張ってほしかった気がします。
あれ終わり?と思ってしまったのは私だけかな。
ビゼーの音楽を聞いていると、ミカエラの時はミカエラの音楽
エスカミーリョの時は彼の曲
という風にワーグナーほどではないけどライトモチーフがあるのねというのも今回感じました。
それにしてもミカエラの曲はしっとりとしてこのオペラの唯一の癒し音楽。
コミック座に言われて付け加えたのはやはりよかったよねと、思います。
コミック座と言えば、今回のホセを見ていて、もともとのストーリーはホセはカルメンの恋人も殺しているというのを思い出しました。
今回のホセは見た目は優しそうなのですが、そんな怖さも感じるホセでしたね。
また、第4幕のカルメンとホセが揉めてるシーンは、管弦楽が何度か闘牛の旋律を細く演奏するので
舞台には二人だけ、しかもナイフを持ったホセとの間は危険な雰囲気になっているのに
一方では楽しく闘牛が行われているんだなという情景が浮かぶ音楽づくりなんですよね、それがまた絶妙。
ビゼーはたった36歳で亡くなってしまったけど、やっぱり天才。
歌手について
カルメンというオペラを見るときに一番気になるのは
今回のカルメンはどんな声だろう、ということ。
カルメンは有名なオペラだし、何度も見ているから
今回のカルメンはいったいどんなかな、とわくわくしてしまうんですね。
今回のカルメン役はジンジャー・コスタ・ジャクソン。
とてもスリムなカルメンでめずらしいです。
カルメン役は、どちらかというとむっちりした肉体派の人が演じることが多いのに、今回はバレエも踊れるんじゃないかな?と思うほどほっそり。
ところがその体から出てくる声は、見た目からは想像できないメゾそのものの声でした。
この細身でこの声が出るんだ、というのがちょっと驚きの声。
すごく安定した声と怪しい演技で良かったですね。
ミカエラ役は砂川涼子さん。
今年は何度か彼女の声を聞いたのですが、聴くたびに声量が増しているような気がしました。
まだまだ変わりそうだし。
今回のミカエラは清楚な雰囲気で見た目がぴったり、声もかなり強く出ていて、特に3幕が良かったです。
高音と低温でかなり声質が異なる人なのかなと思いましたが、低めの声も安定していてどちらかというと中低音の声が私は好きですね。
エスカミーリョを歌ったのはティモシー・レナーという人。
背が高く見た目が良くてピンクの衣装もこの人なら似あうよねという人。
声も見た目もやさしさが出ていて、何となく良い人感がでているエスカミーリョでした。
ダンカイロだったかを演じた独眼竜の人、たぶん成田眞さんという人だと思うのですが、
この人も素晴らしい声で、声的にはこちらのほうがエスカミーリョに合ってるんじゃない?なんて思いながら聴いてました。
最近の公演を見ていると主要なキャストに外国の人を入れている公演が多い気がします。
確かに海外の人が入るとなんとなく華やかな感じがするし、ちゃんとしたオペラに見える、という効果があるような気がしますが、
今回のカルメンについては、日本の歌手もすごく上手、と感じた公演でした。
とにもかくにもカルメンはやっぱり楽しくて仕方がないです。
またすぐに見たいオペラですね。
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