リゴレット藤原歌劇団2020.2月レビュー

最近オペラを見ていなかったので、急に思い立ってリゴレットを見に行ってきました。

藤原歌劇団のリゴレット

見に行ったのは藤原歌劇団の公演で、今回2/1日2/2日2回の公演(東京文化会館)だったんですけど

まずどっちに行こうか?とかなり迷ったんですよね。

1日の佐藤美枝子さんのジルダも聞きたいし、同じ日の須藤慎吾さんのリゴレット役は前々から聞いてみたい役だったのです。

レオンカヴァッロの道化師で須藤慎吾さんを見てからこの人のリゴレットを見たい!と思いつつ、なかなか機会が無く今に至っていたということもあり‥。

でも今回は迷った結果1日ではなく、2日目の方に行ってみました。

というのはもう一度光岡暁恵さんを聞いてみたかったんですよね。

昨年の新国立劇場のランスへの旅で光岡暁恵さんの美しいコリンナの歌声は私の中では忘れられない一つ。

あの人の声にジルダは合うだろうなあと‥。

それにしてもこれだけ迷うということは、藤原歌劇団の2日間の役の割り振りはそれだけ絶妙ということ?

できれば両方見たかったけどそうはいかず‥。

さて、当日はそこそこの人の入りで、かなり男性も多かった印象。

リゴレットって男性にも人気があるんですね。

かくいう私もヴェルディの中ではリゴレットとトロヴァトーレが今のところトップ2で好きです。

リゴレット演出

今回の演出は一言で言うなら比較的オーソドックスな演出を簡素にした舞台、という感じでしょうか。

特に豪華ではないけど質素でもなく、レトロ感がある赤いカーテンと、次の幕では暗い色のカーテンという使い分けで、

シャンデリアも一応あるし、スパラフチーレの宿屋も怪しい雰囲気がありました。

ただ、3幕を通して床には何も敷いてないのですが、あえて言うなら1幕2場の親子のシーンではそれが若干無機質すぎて温かみが感じられないなあと思ってしまいました。

このシーンはとりわけ音楽が美しくて個人的に好きなので、そう思ってしまうのかも。

ところで藤原歌劇団ってイタリアオペラが得意なのだとか、

このオペラも演出も何度かやっている定番の舞台なのかなとちょっと思いました。

 

公演では1幕ごとにカーテンから出演者が出てきてくれて、それはいいんですけど

2幕の終わりには幕が上がってほぼ全員が大勢が並んでいて、拍手‥。

まるでオペラが終わったみたいでした。

あれはちょっと不思議に思えたのですがどうしてだったのかな。

第三幕は出演者が少ないから、関係者だけ残って他の人は帰っちゃうとか?(などと余計な詮索をしてしまった‥笑)

もしそうなら、早く帰ったほうがいいと思うので、ありだと思います。

付き合い残業はよくないし、オペラの世界も働き方改革?‥ナンテ。

リゴレット歌手と音楽

リゴレットってやっぱり音楽がいいんですよねえ。

冒頭で結末を感じさせる暗い音楽が鳴り出した途端

「久しぶりの生音はやっぱり最高!」と思っちゃいました。

今回は音楽がメリハリがすごくあったのか、その辺はよくわかりませんが歌が聞きやすい感じがしました。

音をおさえるところはすごくおさえているのか、声が聞き取りやすいなと。

一方で男性の合唱は全体におとなしすぎる感じで、なんとなく元気ないなあと。人数のせいですかねえ。

 

リゴレットを演じたのは上江隼人さんというバリトン。

名前に覚えがあると思ったらアイーダのアモナスロで聞いたことがあります。

かなり前なのでその時の印象は忘れてしまったけど、今回はボサボサ頭に、派手なピエロ服での演技と歌は哀愁たっぷり。

今回のリゴレットをみて、タイトルロールだから当たり前といえばそうだけど

歌も多いし演技力が必要だし、リゴレットっていう役は改めて難しい役なんだろうなと感じました。

ほぼ出ずっぱりですしね。

 

娘のジルダを演じたのは光岡暁恵さんというソプラノ。

やはりこの人の高音は美しかったです。力まない高音がなんともビロードのよう。

天使のようなこの役にぴったりの声だと思います。

フルートと奏でる「慕わしい人の名は」はまさに聞きたかった曲が聞けたという感じ。

また、オペラって何度か同じ演目を見ると、

以前はそれほど耳に残らなかったのに、今回は新たな部分の良さに気付くということがあるんですけど

今回は第二幕、リゴレットがさらわれた娘に会えた時、

わしの胸でお泣き」と歌う二人の二重唱。ここってこんなに良かったっけ?と再発見でした。

ジワっときてしまいましたね。

第三幕の4重唱でもジルダの美しい声は響いていて

耳に心地よい声っていうのは「ずっと聞いていたい、もっと聞きたい」と私は思ってしまうのですが、この人の声は私にとってはそんな声でした。

 

マントヴァ公爵を歌ったのは村上敏明さんというテノール。

見た目はテノールに見えないけどテノールなんですね。

どう見ても遊び人には見えなかったけど艶っぽい声でした。

一緒に行った友人によると(友人はリゴレットは初めて)貧乏学生と公爵が同一人物だとわからなくて

あの学生はなんだったのかな?と思ったのだそうです。

オペラって字幕がありますから、あらすじを勉強していかなくても大抵はいけると思うんですけど

(かくいう私も細かいあらすじを前もってきっちり読んでいくのは面倒なので実は苦手)

確かにあの学生が公爵だっていうことは、オペラを見てるだけだと、わかりにくいかもって思いました。

顔と名前はそんなにすぐに覚えられないですしね。

やっぱりオペラって初めて見る時はあらすじを読んでいったほうがいいのかなとちょっと思いました。

それにしても何度見てもマントヴァ公爵って苦労知らずで、

家来が勝手にジルダをさらってきてくれるし、

殺されそうになると殺し屋の妹とジルダが助けてくれるし、

助けられたことも知らないしとどこまでも幸運な人ですよねえ。

そもそもさらうなんて今なら完全に犯罪だけど、昔は普通にあった風なのがちょっと怖い気もしちゃいます。

 

殺し屋スパラフチーレを演じたのは豊嶋祐壹さんというバス。

ほとんど顔が見えないけど存在感がある役。あとでパンフレットをみて、こういうお顔だったのねと思いました。

 

今回のリゴレットは「呪い」という本来の内容がすごく全面に出ていた気がします。

そう思った理由の一つがおそらくモンテローネ伯爵の存在。

モンテローネを演じたのは村田孝高さんという人で、

それほど出番は多くないのですが、演技が光っていて呪いが主題なんだなあとなぜか思いました。

この人はシャルパンティエのルイーズで父親役をやったとき見ましたけど、やっぱり存在感があったので覚えています。

一度だけでも舞台で見たことがあると、なんか見たことあるなあって残っているもので、

あ!あの時の父親役だった人ねとわかるとそれがまた楽しかったりします。

それもオペラの楽しみの一つかも。

 

それにしても大金を払って愛する娘を殺してしまうことになるなんて

ヴェルディには悲劇物が多いけど、悲劇中の悲劇ですよね。

第三幕の嵐の中の不気味な音楽といい緊迫感といい、やっぱりリゴレットはおもしろいと思ったのでした。

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