原作はアンデルセン
今回は夜鳴きうぐいすというオペラについてちょっと書いてみようと思います。
作曲はストラヴィンスキー。そして原作は童話で有名なアンデルセンです。
夜鳴きうぐいすは別名ナイチンゲールともいわれます。
アンデルセンというと人魚姫とかみにくいアヒルの子それに雪の女王などがうかびますが
そんな中でこの夜鳴きうぐいすは舞台が中国なんですよね。
そしてなぜか日本も出てきます。あまりいい役ではないけど‥。
そもそもどうしてそういう設定なのかなと思うのですが
当時ヨーロッパではシノワズリっていう中国様式を取り入れる風潮がまだあったんですね。
シノワズリはフランス語で中国趣味っていうような言葉です。
実は17世紀頃からすでにそういう異国のものを取り入れる風潮はあったようなんですけど、特に18世紀あたりから中国趣味のものは増えていったようです。
アンデルセンって1805年の生まれなので19世紀の人なんですけどそういう風潮とか作品とかは当然いろいろ目にしたと思います。
美術品とか、陶器なども中国っぽいものがヨーロッパにありますよね。
夜鳴きうぐいすの様に童話っぽいロシアオペラとしてはリムスキー・コルサコフの金鶏が浮かぶのですが、
ストラヴィンスキーってリムスキー・コルサコフの弟子でもあったので
師匠の金鶏の影響もあってこの童話オペラを書き始めたっていうことみたいです。
確かにリムスキー・コルサコフは金鶏1907年頃に作曲していて、ストラヴィンスキーが夜鳴きうぐいすを作曲し始めたのもちょうど同じ頃なんですよね。
もっとも金鶏はプーシキンの原作なのでちょっと趣は違いますけど。
初演はパリオペラ座・バレエかオペラか
さて夜鳴きうぐいすの初演は1914年で場所はパリのオペラ座でした。
ストラヴィンスキーってロシアの生まれだけど、ロシアじゃないんだなとなんとなく思ったのですが、ストラヴィンスキーの「マヴラ」っていうオペラもやっぱり初演はパリなんですよね。
そもそもストラヴィンスキーといえば有名なバレエ「火の鳥」がありますけど
そちらもパリ・オペラ座が初演で、そこで大成功しているのです。
1910年のことです。よほどパリに縁があったのかなと。
もともとは夜鳴きうぐいすはモスクワの劇場で上演されるはずだったようです。
ところがそちらの劇場が倒産してしまい、それでリュスっていうバレエ団がこのオペラを上演することになったのです。
このリュスっていうのは火の鳥を上演したバレエ団でもあるんですよね。
そんなわけで夜鳴きうぐいすっていうのは初演はバレエ団による上演だったわけです。
もともとはバレエじゃなかったからオペラのジャンルにはいってますけど、オペラでもありバレエでもありっていう、この夜鳴きうぐいすの様なオペラはちょっと珍しいんじゃないかと思います。
ちなみに夜鳴きうぐいすはロシア語版とフランス語版とありますが、初演はロシア語だったみたいです。
まあもうグランドオペラの時代は終わっているし、パリのオペラ座も言語にはこだわらなかったのかな。そこらへんはよくわかりませんが‥。
それにしても初演の際は歌手はどこで歌ったんだろう。ちょっと気になる‥。
というのもこの夜鳴きうぐいすは公演によっては歌手がオーケストラピットに入る場合もあるのです。
おもしろいですよね。
確かにうぐいすはフルートだったりソプラノだったりして、どこから歌になるかなあなんてつい思いながら見ちゃうオペラで、いかにもバレエになりそうっていう音楽なんですよね。
バレエが得意そうなストラヴィンスキーですし。
なので夜鳴きうぐいすを見る時は一番注目はバレエがしっかりとあるのか、普通にオペラ形式なのか。
それともところどころバレエがあるかどうか、その場合歌手はどこで歌うのかとその辺はまず注目したいところかなと思います。
やっぱりちょっと変わった曲かも
ストラヴィンスキーっていうと現代曲っていうイメージがあるんですよね。
火の鳥とか聞いても。
ちなみにストラヴィンスキーって鳥が好きなのかなと。
「火の鳥」ってすごく火の鳥の雰囲気が出ているし、夜鳴きうぐいすも鳥が飛びかってる感じとか雰囲気が出ていると思うのです。
とはいえやっぱり変わった曲だなと私は思っちゃいます。
最初のうちはいいんですけど、2幕以降が特に‥。
夜鳴きうぐいすって全部で1時間程度しかないんですけど、全1幕ではなくて
ちゃんと3幕まであるんですよね。
1幕は漁夫の歌などきれいだし、全体に聞きやすいんですけど、2幕になると
うわー現代音楽だ!っていう感じです。不協和音っていうのかな。
私流に言うとガチャガチャ感が強い(笑)
実はストラビンスキーが作ったとき、1幕と2幕の間にはかなり時が経っているのです。5年ほど。
1幕は1908年に作曲したけどその後しばらく放っておかれちゃったわけです。
その間に作風が変わったんですよね。
なので1幕と2幕以降はガラリと違う感じらしいのです。
簡単あらすじと見どころ
では簡単にあらすじを。
船の上で漁夫が「ナイチンゲールよ、きておくれ」と歌っています。
するとナイチンゲールは飛んできて美しい声で歌います。
そこに宮廷からガヤガヤと人々が来て、ナイチンゲールを探しだし、
「皇帝が病気なので来て歌ってほしい」というので、ナイチンゲールは喜んで引き受けます。
2幕は宮廷。ナイチンゲールの歌声を聞いて皇帝の病気は良くなるのですが、日本からゼンマイ仕掛けの鳥が届けられると、ナイチンゲールは飛んで行ってしまいます。
3幕では、再び皇帝は病気になっています。
ゼンマイ仕掛けの小鳥は壊れてしまって歌いません。
そこにナイチンゲールが飛んできて歌いだすと、皇帝の枕元にいた死神まで聞き惚れて、ついに皇帝は再び元気になります。
皇帝は病で死んだものとばかり思っていた重臣たちは王様がすっかり元気なっているので驚きます。
最後にまた漁夫の歌が聞こえてきて終わります。
夜鳴きうぐいす見どころ
最初にこのオペラを見たときになぜか「オイディプス王」を思い出したんですよね。
同じくストラヴィンスキーの作品なんですけど、最初の頃に見たので、「ああ、これは無理!」と途中で見るのをやめてしまったのがオイディプス王でした。(ビデオです)
でも夜鳴きうぐいすの時はいろいろ見た後だったからか、さすがに拒否反応はなかったですけど、やっぱり不思議感は同じかなと。
新しい時代のオペラっていう感じです。
もっと見ると印象は変わってくるのかもですが‥。
上にも書きましたが、1幕と2幕以降は音楽の雰囲気が変わります。
まずそれを楽しむのが見どころかなと。
そして、バレエあるのかないのか、どれくらいバレエが重きを占めているのかは見どころで、歌手がどこで歌うのかも気になるところです。
音楽は(特に2幕以降は)私にはちょっと微妙な音楽で
中国風なのかな、日本風?でもちょっと違うし、という異国情緒な旋律もありです。
2幕の宮廷の様子はやたらごちゃごちゃした感じから始まります。
でもオーケストラの音に注意して聞いているのもおもしろいかも。オーケストラの饗宴とでもいうのかな。
美しいソプラノが歌い出すと一瞬美しい旋律に思えるけど‥でもそのうち物の怪感もしてくる(笑)そんな感じです。
とはいえ、やはりうぐいす役のソプラノがなんといっても注目で見どころだと思います。
美しい濁りのないソプラノが歌うんじゃないかなと、期待しちゃいますね。美しい声を聞きたい!と。
死神役が女性でアルトなのはちょっと意外。どんな風に演じるのか死神役にもちょっと注目したい見どころです。
元は童話ですけど、後半の音楽はとても童話とは思えない大人のオペラ。
とはいえ、このお話って悪者がいないんですよね。
うぐいすはちゃんと皇帝の元に戻ってくれるし、皇帝も治るし、死神もいなくなってくれるし。だからストーリー的には安心してみていられます。
最初と最後、それに途中もでてくる漁夫の歌が癒し系でこちらも見どころ。
それにしても夜鳴きうぐいすで、「日本」はあまり良い役ではないけど、オペラにも意外にちょくちょく日本って関係してるんですよね。
蝶々夫人とか、ミカドとかカーリューリバーも。おもしろいですね。
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