新国立劇場でドニゼッティのドン・パスクワーレを見てきました。
1842年にパリのイタリア座で初演された作品ですね。
このオペラを生で見るのははじめてでしたが、一言で感想を言うならブッファだけど思ったより重厚だったということかな。
ロッシーニのセビリアの理髪師をちょっと思い出させるストーリーで、内容的にはドン・パスクワーレの方がより砕けたストーリーなのだけど、音楽は重く感じました。
ドン・パスクワーレ演出
新国立劇場の今期の最初のオペラはエウゲニー・オネーギンでしたが、シーズンの次のオペラが今回のドン・パスクワーレです。
生で見るのははじめてだったので楽しみにしていた演目です。
ブッファだけど思ったより重厚だと感じたのは、レチタティーヴォがチェンバロじゃなかったからなのかなと。
その違いってやっぱり大きいのかもしれないって思いました。
今回は1、2幕を一気に上演して休憩は一回だったので、終わりは比較的早かったです。
舞台は裕福な老人ドン・パスクワーレの家で始まります。
本がたくさんあって落ち着いた書斎風。
幕ごとに6角形の部屋が開いたり閉じたりして、ちょっとおとぎ話風な家にも見えましたね。
舞台の左から出てきた帽子の行列と、長い長いキッチンはインパクトがありました。
あんなに長い物がしまえるくらい横にも舞台裏はスペースがあるんですね。
上からもたくさんのお肉が降りてきてなかなか圧巻。
衣装もとてもしっくりくる感じで、無難といえば無難。
全体に見やすい演出と舞台でした。
歌手と音楽
今回のドン・パスクワーレの特徴はやはり音楽と歌ではないかと思います。
上にも書きましたけど、ドン・パスクワーレはロッシーニのセビリアの理髪師と雰囲気的には似てるけど、レチタティーヴォがオケになるとやっぱり重厚に聞こえるんだなと、言うのを実感しました。
そしてドニゼッティってやっぱりアリアが難しそうですねえ。
特にドン・パスクワーレではノリーナが出番も多いし歌も多いので大変。
今回ノリーナを演じたのはハスミック・トロシャンというソプラノ歌手で
アルメニアの出身みたいですが、まだとても若そうです。
すごくのびのびと響きのある声で歌う人で緊張とかあまりしなそう‥にみえる。
いろんな国の人が活躍しているんだなとも思いました。
経歴を見るとラ・ボエームのムゼッタを結構歌っているようで、確かにすごく合いそう。
はっきりした顔立ちなので、きつめの役が合うんですね。
ドン・パスクワーレを歌ったのはロベルト・スカンディウッツィというバス。
歌もうまいし風貌も品格がある人だとおもったら、ドン・カルロのフェリペ2世を演じるような人で、
なるほどねと。
そっちの方が合うんじゃないかなとちょっと思ったものの、かっこよかったのでよかった。
「歳をとってから結婚しようなんて思うと痛い目にあうわよ‥」
と散々オペラの中で言われちゃっていましたけど、この人なら痛い目になんかあわなそう‥と。(笑)
っていうかオペラを見る人って年齢層が高いので、70歳を超えていそうな人が大勢見ていると思うんですよね。
ドン・パスクワーレの設定が70歳。
で、なんどもこのセリフを言われるのって見ていてどうなんだろう?ってちょっと思っちゃいました。
幾つになっても恋はしていいと思いますけどね(笑)
ドン・パスクワーレはみんなに騙されたのに、最後はすぐに許しちゃうのですが、その寛大さは理解ありすぎでしょ!と思いますがハッピーな結末でまあ何より。
そしてエルネスト役を演じたのはマキシム・ミノロフというテノール。
この人がとてもよかったです。
見た目もいいのですが、イタリアオペラにぴったりという感じの声。(ロシアの人みたいですけど)
華やかだけど少しうれいのある声なんですよね。
ドン・パスクワーレのバス声とエルネストのテノール声が対照的すぎて
とても同じ人間男性の声とは思えないほど別物なのが興味深かったです。
そしてマキシム・ミノロフの声質とノリーナ役ハスミック・トロシャンの声質がよく合っていて
第三幕の二人の二重唱がとてもきれいでした。
ノリーナはオペラの中で、
「男性が女性のいうことを聞くのは当たり前のことでしょ」と言い放ちますが、夫は妻の言いなりというよくある構図は国境を越え時代を超えて同じ?ナンテ。
ノリーナとエルネストはドン・パスクワーレをうまくだましてめでたく結婚に至るわけですが、
気の強いノリーナと結婚したらエルネストは絶対お尻に敷かれるでしょ(笑)とつい思ってしまった。
そしてもう一人ノリーナの兄マラテスタ役がビアジオ・ピッツーティというバリトン。
この人の経歴などは知らないのですがとても安定した声で、まじめな役もあいそう。
というわけで全体的にはまじめ派歌手のブッファという感じがありましたが、
ドニゼッティの人気作品が見られてよかったです。
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